第4話


     4



さて、トランプを片付けることにした。


鍋から飛び散ったそれは、そこかしこに刺さりまくっている。

窓ガラスが割れなかったことが奇跡だ。


壁、床、ふと見ると天井にも刺さっている。

祖父仕込みの魔法(マジック)は恐ろしい。


ため息を吐き、夏希は鞄を探った。中から魔法の杖を取り出す。

ひなたは「えっ」と声を上げ、しっぽをぴんと立てた。


「夏希、魔法を使うの?」

「うん。そっちの方が楽だし」

「ダメだよ!」


ひなたのしっぽが勢いよく立った。


「楽するために魔法を使うなんてダメだよ。ちゃんと自分で拾わなきゃ」


むっとした夏希が言い返す。


「魔法は効率を良くするためのものでもあるだろ? こんな時に使わなきゃ、なんのための魔法だよ」


すっと杖をかざした。

酸欠で青ざめそうなほど、ひなたは息を呑む。


「ダメだよ!」


ひなたが飛びかかった。

だが夏希は眉毛の先すら動かさずそれを避ける。


ぽて、とひなたが床に落ちたのを見下ろし、再び杖をかざした。


「ダメだってば!」


スカン! と子気味のいい音がして、夏希の額にトランプが刺さった。

ハートのエースだ。


あろうことか、ひなたは床に刺さっていたトランプを投げてきたのだ。


「なにすんだよっ」


再び、スカン! と子気味のいい音がして、ひなたの額にトランプが刺さった。夏希が投げたのも、もちろんハートのエースだ。


両者、カッと目を見開き、手近に刺さっていたトランプを引き抜いて投げた。

お互いのカードはぶつかって弾け飛び、また小気味のいい音を立てて何かに刺さる。


「ちょっと……」


ドア付近から声がした。

夏希たちは青ざめる。


錆びた機械のような音が出そうなほどゆっくりと振り返る。

そこには指をボキボキと鳴らしながら怒りに燃え上がる、額に二枚のトランプが刺さった寮母が立っていた。


地獄のような説教は廊下まで響いていたという。



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