サイクロン・アイズ ~ One memory ~
喜岡せん
episode SAO
0
叫声と咆哮。
苦痛に歪む仲間の身体を盾にし、射程距離を測る。
異形の触手が仲間の身体を玩具の様に弄び、終いに体内への侵食を始めた。
「ッッ! 早く撃てサオ! アイツの
そう叫ぶ隣人には腕が無く、千切れた先から鮮血が滴り落ちていた。そういえば、と、隣人が異形に食われていたことを思い出す。
いざとなれば首だけ持って帰ることも考えていたがどうやら全て食われずに済んだらしい。
その隣人がまた叫んだ。
「サオ!」
「………解ってる」
自分の位置と銃の射程距離を脳が高速処理をし、最適な機会を叩き出す。算出した計算に多少の誤差と
「早くしろサオ!」
「……まだだ」
精神汚染が中枢まで達すれば非常用のセキュリティゲートが展開される。『
つまり、どんなに優勢だろうとセキュリティに掛かったその瞬間……一瞬だけ動きが止まる。
狙っていたのはそのコンマ一秒。
全ての邪魔な視界を遮り焦点を一点のみに合わせ、同時にトリガーを引いた。
計算から多少の軌道が逸れたが、これは想定の範囲内である。
弾丸は弧を描き、狙い通りに仲間の心臓諸共異形を貫いた。
汚染型の異形は初めに機体の侵食をし、各神経系を通じて全てを司る脳に行き着く。
逆に言えば肝心要のメモリへ到達する迄に本体の
「……間に合ったか?」
隣人が恐る恐る尋ねる。
「さぁね。開けてみれば良いんじゃない」
僕は用済みになった腕を下ろし仲間の死体へと向かった。
血反吐と共に口から飛び出ている触手を引っ張り出す。ズルズルと引き出された異形の本体は次第に端の方から砂となって崩れ落ちた。
一度施設の研究員が生け捕りにした後解剖を試みた際も、直ぐにシャットダウンを始めたと聞いている。調査不十分につき詳細は未だ謎に包まれたままだ。
死体の胸ポケットに付いているプレートを引き剥がし、
鞘を抜き、死体の背骨の辺りを切り開く。
自分の首を切り落とす為に普段から持ち歩いているものだがデータ上一度も使ったことは無い。
皮を破り白い骨が露わになる。規則的に並ぶその背骨の中でひとつだけ異様な形をしたモノを見つけ、迷うことなく切り落とした。
「……それ、
「うん。
「真面目だったらなぁ〜」
隣人はそう言って笑うと、ふらりと身体を倒した。
無くなった腕から血溜まりが広がっていく。
「勘弁してよ
僕は結局、気を失った隣人を担いでとぼとぼと帰る羽目になったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます