第5話 草原2

僕たちは草原に戻ると、食料を得る方法を考えた


「よし、小動物を狩ろう」


「え……、狩れるの?」


「長い木の棒に、尖った石を付けた槍と、落とし穴で何とかするよ」


草原の向こうに森が見える。森の近くの平地に、石を使って穴を掘る。ある程度掘れたら、木の皮を容器代わりに使って土を取り除いた


穴の上に軽く木の枝を乗せ、周りの草を乗せる


「運が良ければ、ねずみやへび、ウサギなんかが罠にかかるかもね」


「えぇ、どれも食べたくない……」


「まあ、かかったらの話だよ、今日は魚を獲ろう」


川へ行くと、先ほど作った槍を構える


敵がいないのか、魚は無警戒に泳いでいた


「それ!」


槍を銛の様に使うと、一匹獲れた


「すごい!私は、刺すための枝を探してくるね!」


エミリはそう言って枝を探しに行った。さすがに一匹じゃ腹も膨れないので、がんばってあと三匹獲った


洞窟の小部屋にあった錆びた包丁を少し研いで切れるようにし、魚のわたを取り除く


口から枝を刺すと、焚火の周りに立てる。ついでに、鍋に海水を入れて焚火で水分を飛ばして塩を作った


しばらくして、魚が焼ける匂いがしてきたので、二匹をエミリに渡す


「塩しかかけていないのに美味しい!」


「水が綺麗だし、変なものを食べていないからだろうね」


そのうち、釣り竿も作れたらいいな


今日一日暑かったので、エミリは川で水浴びをしていた


「きゃぁ!」


叫び声が聞こえたので、僕は駆け付けた


「そこに何かいる!」


エミリはタオルで体の前を隠しながら、草むらを指さす


すると、そこからサルが出てきた


「なんだ、サルじゃないか」


「……、そうね、ごめんなさい」


人騒がせな、と思いつつ洞窟に帰ろうとしたところで、エミリに引き留められた


「ごめんついでに、もう少し見張っててくれない?何か出そうで怖くて」


「……わかったよ、じゃあ、空でも見ているから」


上を見上げると、都会では見えない綺麗な星空が見えた


日本と星座が違うのか、見慣れない星を見ながら、水の音を聞いていた


「なんか、男の子の近くで水浴びなんて、恥ずかしいな」


「プールだと思えばいいよ」


「そうね……、じゃあ、一緒に入る?」


「ぶっ、そこまでは言ってないよ!」


「冗談よっ」


タオルも一枚しかないしね、と締めくくった


「じゃあ、そろそろ上がるから、こっち見ないでよ!」


さっきは一緒に入る?とか言ったくせに、やっぱり恥ずかしいのだろう


覗きたくなる誘惑に耐えて、着替えが終わったらしいエミリと交代する


「……、しばらくここに居ていい?」


「まだ怖いのか?」


「ううん、なんか、寂しくなっちゃって」


そういわれると、断れないじゃないか


「わかったよ。星が綺麗だから、見ているといいよ」


「わあ、南十字星だ。本当に、綺麗ね」


そう言ったエミリからは、嗚咽が漏れていた

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