投資の国のMIU

@saladataberu

第1話 初めての優待/配当 20.6.27

また夢を見た。


幼いころの夢…選定の剣を抜いた時のことだ。

「その剣を抜けば、君は株式から逃れられないよ」

3歳の私には株式と言われてもよく分からないし、

まあおもちゃにしか見えないわけだ。


村のはずれにある選定の剣。

3歳のMIUはそれを抜き、そして――


---------------------------------

「あああ、働きたくない!!」

「うるさい黙って働け」


「もう…分かったよ…」

私は、普通の女子高生。

ちょっと森の奥に住んでいて、

しゃべるクマ2匹と住んでいて、

パパとママの顔も分からなくて、

高校なんてこの世界観に合わないからないけど、

投資でセミリタイアを考えている

普通の女子高生。


さて…今日の仕事は…

「そうだMIU。仕事の前にこれを見なさい。」

「クマのくせによく父親面してるよね。」

そうは言いつつも封筒に「株主総会への招待券」

と書かれていれば見ないはずがない。


私にとって初めての株主総会なのだから。…ん?

「ええ!まじ!牛タン!四万十ポーク!佐賀牛!」

嘘だ…すごい…ここから選んでいいの…?


「おいおい、総会はどうした。

 優待カタログにしか目が行ってないじゃないか。

 てか肉しか興味ないわけ?」

なんか蠅がしゃべったか。


「ああいけない、仕事の時間だわ。

 優待選ぶのはまた後で!株主総会の確認も後で!」

「こんな調子で世界を救えるのかね…」

「それじゃ、行ってきます!」

空を駆け、今日の仕事場…中の国のコーヒー店へ行く。


私の仕事は簡単に言うとセラピーだ。

JKにぴったりの仕事ね。


株で負けて魂が暴走した人間や動物たちを救う仕事。

最近は【神の見えざる手(インビジブルハンド)】による攻撃が

一段と激化している。

今年3月にはとんでもない大戦になった。

まぁそれはおいおい。


「さ、今日も頼むわよ、相棒!」


私の相棒はインデックス、と名付けられた刀…

そう、【インデックス刀Ⅳ】

昔「選定の剣」と呼ばれていた伝説の剣だ。


剣を構える。

「おはぎゃああああああああ!」

朝からうるさいやつだこと。


「…通信、通信。聞こえるかい、MIU」

「ええ。何かしら。」

「そいつは中の国のコーヒー株でやられた小鳥の魂だ」

「NASDAQ上場廃止だもんね。」

「そうだ。かなりの負の力が溜まっている。気を付けてくれ」


返事は不要。一刻も早く魂を解放する。

怪鳥だ。これが街で暴れては大きな被害を出す。

ここで食い止める。


刀を抜く。

何をすべきか、刀が教えてくれる。

「インデックスの呼吸…壱の型、毎月積立!」

日経平均やダウ平均など、平均的な指数を対象に

毎月積み立てることで積み立てた分の金額が光の刃となり、

相手に降り注ぐ。

複利効果を利用したその技は、術者の負担が少ないが

時間がたてばたつほど威力を増す、恐ろしい技だ。


だが、これだけでは押しきれない。

ならば

「弐の型…長期積立!」

本来インデックス投資には時間を要する。積み立てる期間が長くなければ、

金額も大きくならないからだ。

この「技」によって時間を無理やり早めることができた。


「もらったッ!参の型、デバイド・リザーブ!」

直訳すると分散投資である。

インデックスの特徴でもあるが、多くの企業に投資することができる。

威力の強い衝撃波、弱い衝撃破を無数の方向から放つことで

相手の魂を削り切る!

MIUはインデックス刀Ⅳを用いて積立、長期、分散技を放つことで

相手の魂を刻み、浄化させることができた。


「ピーピー!ピッピ!」

すでに怪異の姿はそこになく。

時間を食べるという青い小鳥が空へ飛び立って行った。


-----------------------------


「え!やばくない?配当金6000円!」

KDDIからの優待、そして配当!

これは個別株を始めるのも悪くないかも!!


「MIU、まさか日本株に手を出すのかい?」

「まさかってことはないでしょ。給料は円だし。」

「せっかく完成したインデックス刀Ⅳにフルインベストしてればいいのに。」

「いいのよ!面白そうじゃない!」


そうと決まれば旅に出よう。

まずは日本株の欠片を集めなければ。

装備できる日本株は…今の手持ちだと50万円程度。

「じゃ、そういうわけで私ちょっと旅に出て来るから。

 仕事は全部キャンセルしといてね。」

「え!ちょっと…」


まずは中央図書館で四季報を読んでみようかしら。


こうしてMIUの冒険が始まる??

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る