第8話 めんどくせえ初戦闘

仲間が一人増えたよ、やったねたえちゃん、和気あいあいだよ。

……あんまり話す話題ってないんだよなこれが。


「ミーナさんはなんでこのゲームを? 」

まずはスタンダードにこれだ、コミュ力は旅行してるからしーらないっと。


「前々からクラスの皆がやってるのを聞いて私もやりたいな~って思いまして、へへ、バイト代貯めて買ったんです」

「高いのに頑張ったね~」

「お年玉もあわせてギリギリ、もっとバイトしないと」

「いいね~」

悪戯の成功した子供のように笑うミーナに吊られて自分の顔も綻ぶ。


「もしかして、レオにゃんさんも似た感じですか?」

「いやー、私は単に暇な時間が出来たから流行に乗ろうかなって」

「へぇー、ちょっと似てますね!い頑張って楽しみましょう!」

「……そうだね~」

グッと握りこぶしを作り意気込む彼女。




無事と言うかなんと言うかパーティーを組んだ私とミーナはだだっ広い平原をゆっくりと歩いていた。


ふ、10メートル歩いてキャっキャする時代は終わったのだはっはっは!!



......あとでどっと疲れ来るだろうなこれ、憂鬱だ。



「ところで私は職業アーチャーですけど、レオにゃんさんはテイマーなんですね」

「ん? そうそう魔法使いとか戦士とかいろいろあったけど私には合わないなって思って、消去法と気に入ったモンスターと冒険が出来たら楽しいなって思ってね」

「狼とか可愛いモンスター捕まえてもふもふしたいですもんね! 」

「もふもふ……アニマルセラピーか……いいねそれ、でっかいもふもふに埋もれて昼寝したいね」

「素敵すぎますよそれ!もし捕まえたらお裾分けしてくださいね!」

戦士なら剣や斧のスキルの伸びが良く魔法使いなら魔法が上手くなりやすい......らしい。



私の職業【テイマー】


全職業で唯一、フィールドやイベント等のモンスターを捕獲し使役できるユニークなもの。


元からつく能力はモンスターを捕まえる【テイム】と使役するモンスターを強化する【アシスト】

プレイヤー個人のレベルが高くなれば高くなるほどレベルの高いモンスターを捕獲できる……らしい?


「良いよー、……といってもはじめたてだからまだ一匹もいないんだけどね 、のんびり探そう」

のんびりと気ままにゆっくりと。

人間たまには休むのがよろしい。



「私もテイマーになれば……んんーでもな~」

「自分に合うものにするのが一番だよ~? そういやミーナさんはなんでアーチャ」

「実はですね~」

『モンスター【ゴブリン】出現しました』

「……お? 」

「きゃっ?」


悩むミーナさんに苦笑していれば、目の前に飛び出した緑のなにかとアナウンスの音に変な声が出る。


同じタイミングで顔を見合わせ同時に後ろを見る。


「ゲギ!」

そこには腰にぼろ布がついた濃い緑の体にぎょろりとした目玉……ゴブリンですわ。


「グギャ!」

手に持つ棒切れをぶんぶんと振り回すそれに笑顔だったミーナと私は瞬時に真顔に変わる。



「え、……きも」

「なにこれ……きも」


★★★


【ゴブリン】レベル2

HP21

状態 興奮

★★★


「………殺りましょう」

「そうだね……殺ろうか」

無表情で弓を構える彼女に私も強く同意する。


お互いレベルは1、だけど二人がかりなら出来ないこともない、殺ろう殺ろう、あれはこの世にいていい奴じゃない。


「それで、どうしますレオにゃんさん……」

「えー……ミーナさんは弓だっけ?」

「そうです」

「それじゃあ私が前衛引き受けるからミーナさん少し離れた所からバシバシやっちゃって」

「わかりました……! 」

頷く彼女はチラチラとゴブリンを見ながら後ろに下がり、私は前にでる。


「さて、鞭でどう動こうかなっと」

腰につけた鞄から鞭を取り出し、たらりとおろす。


めぼしいスキルも魔法も無い……シンプルにぺしんとする?



競馬場のものよりちょっと長いくらいの、しなる布を何重に編み込んだ鞭、叩いたら普通に痛いだろうな……南無三、と。





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