第16話

『ルリ~ちゃ~ん』

今日もサチさんが、笑顔で迎えてくれる。

「……はい」

『今日は、あねさんの出勤日』

「……あねさん?」

『そう、ちょっと怖いお客様ばかりになるよ。肝据えて、ルリちゃん』

とサチさん。

「はい」

と答えるルリ


1時間後、ちょっと所ではない緊張感が店内に広がる。


『親分、こちらへどうぞ』

お付きの方が、VIPルームへ

案内する。


『ルリちゃん、潤子さんがルリちゃんを指名するって言うけどどうする?』

「……行きます」

肝を据えて、と言ったサチの言葉が思い出される。


VIPルームへ入るルリ。

子分が鍵を締める。


「お邪魔致します」とルリ。


親分らしき人が3人にお付きの方が3人。

高価そうな黒地に金粉が散りばめられた着物を着た潤子さんと、淡いブルーの着物を着たアキさん、画になる。

そこに一席空いた空間、白いドレスを着たルリに座ってと促すアキさん。

座ると、隣の親分にお尻を捕まれる。

『いい尻じゃ、今夜嵌めるか』

「アフターは御断り致します」

とルリ。

『ハハハハハ……もう、振られた』

親分が笑う。


『あんたがルリ……』

潤子さんに話しかけられる。

「……はい」

『あんた、私の後輩を随分クビにしてくれたそうじゃないの』

「…………いえ」

潤子さんの隣の親分がじーっととルリを見る。

『おまえ、いい身体してるじゃないか』

「……」

『ちょっとここに立て』

潤子さんの隣の親分がルリを呼び自分の前に立たせる。

『脱げや』

静まり返る。

「できません」

答えるルリ。

『脱げや』

親分が胸ポケットから出した100万円の束を投げつけられるルリ。

『ワシが脱げと言ったら脱げや』

静かに圧を掛ける親分。

「できません」


潤子さんが言う。

『あんた親分に逆らう気?』


「ここは身体を見せる所ではありません、お客様の心の傷を癒すところです。私は、あなたの傷を癒すために今、ここにいます。」

落ち着いた口調で言うルリ。


『ハハハハハ……ワシがこの店で脱げといって脱がなかったのはおまえがはじめてじゃ』と笑いながら言う親分。

『名前は』

「ルリです」

潤子さんの太ももに手を置き、親分が潤子さんに言う。

『潤子、ルリを可愛がってやれや』


『親分がそう言うなら……分かりました』



しばらくし、お開きになり、VIPルームから出てきた親分達と潤子とアキとルリ。

とても和やかだ。



『ルリ、脱がなかったって』

ユリアがミサキに言う。

『……チッ』

ミサキが悔しそうに唇を噛む。







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