私と私

 ……確かに私は、私を撃った。

 でも、生きていた。

 私が私に向けたはずの、確かな殺意。

 寸前で、どこかへ逸れて、

 まだ、生きている。

 手が温かい。

 誰かに握られている。

 荒い呼吸の音。

 顔を上げる。

 薄緑色のワンピースを着た女の子が、肩で息をしながら、銃を持ってる私の手を握掴んでいた。

 縦に線がハッキリと残っているくらいに涙を流した痕跡のあるその顔は、やっぱり私と同じ幼い顔だ。

 銃を持ったままの手と、それを包む白い手のひらを眺める。

「手、握れるんだ」

 呟く。

「……え?」

 その目を、見つめる。

 私と同じ色の瞳。

 だけど……。

「あなたは誰?」

 私はいた。

 一瞬の静寂。

 白い大地と、薄ら青い灰色の世界。

「……え?」彼女は困ったような顔で、首をかしげる。「でも、だって、私はあなたで、私たちは……」

「…………」

「やっぱり……違うのかな?」

「……うん」

「ねえ、名前は?」彼女は私に聞く。「名前……なんていうの?」

「私は……チサト」答えた。「小塚千怜」

「そっか」

 ハアーっと息を吐き、今にも泣き出しそうな顔で、その子は微笑んだ。

「それじゃあホントに……ホントに、若い頃のお母さんなんだ」

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