異世界に学ぶ新魔術~前世の記憶から発案した魔術式とエッセイ~

安佐ゆう

第1話 はじめに

 まずはこの本を手に取って頂いたことに、深く感謝する。

 魔術師協会の中では若輩者の私ではあるが、こうして魔術書を出版するに至ったのは、多くの幸運とひとつの奇跡に触れることができたからだ。


 この本では主に、そのひとつの奇跡について語ることになるであろう。

 「私には前世の記憶がある」

 これこそが私の身に起きた奇跡だ。

 しかも前世の私がいた場所とは、この世界とは全く別の異世界だったのだ。

 住んでいたのはニホンという国で、私はそこでサラリーマンという仕事に就いていた。さらにはなんと、その世界には魔術がなかった。


 諸君にはとうてい信じられないだろう。魔術のない世界だなんて!

 けれど、もう百年も前に開発されつくしたと言われていた魔術式が、こうして新たに構築されている。これは証拠にはならないだろうか?

 矛盾していると思われるかもしれない。魔術のない世界の記憶がどうして新しい魔術を生み出すのか。それはこの本を読んでいただければわかることと思う。

 異世界の知識がもたらした新しい発想、新しい認識、新しい言葉が、ここに新しい魔術式を生んだ。


 信じるのも良し。信じなくてもまた良し。

 諸君はただ、ページを開いて新しい魔術式に触れてみるだけでいいのだ。

 そこにおのずと感じ取れるであろう。

 魔術のない不思議な異世界を。

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