自粛警察

鷹山トシキ

第1話 透明人間

 東武警察署の薬師寺やくしじは上司を殴って辞めた。湯沢ゆざわは出来の悪い薬師寺をよくゲンコツしたり、無能警察呼ばわりしていた。

『万引き犯に逃げられたんだって?無能だな?ゴミだな?』

 吉本興業の創業者は、芸人に昆虫だか獣だか知らないがヒドいあだ名をつけていた。

 薬師寺の場合は無農薬って呼ばれていた。

『スミマセン、肉離れしちまいました』

『ゴミなんかいらねーよ!』

『ざけんなよ!』ドカッ!👊 

 再就職の道のりは遠かった。丁度、クルーズ船でコロナが発生した頃だった。 


 地元の日光に帰ったら、JR日光駅で横溝よこみぞとバッタリ会った。小中時代のダチだ。

「成人式依頼だな?」と、横溝。

「10年ぶりか?」

「髪が薄くなったな?」

「うるせーよ」

 横溝は超絶ブラックな派遣社員に入りアチコチ転々としていた。

「怒るなよ」

 ファミリーマートの前に茨城ナンバーのポルシェがあった。薬師寺はぶん殴りたい気分に駆られた。

 横溝とラーメン屋に入った。大してうまくはなかった。不思議なボトルを横溝からもらった。🍾

 実家は鳴虫山なきむしやまって小さい山の近くにあった。親父が呆れていた。

「期待なんかしたのが馬鹿だった」

 薬師寺は部屋に入り、紙袋からボトルを出した。

 ラッパ飲みすると力が漲ってきた。

 薬師寺は金属バットで親父を殴った。親父の魂が消えた瞬間、薬師寺は透明になった。だが、薬師寺はそのことに気づいていない。

 洗面所に入り、返り血を洗おうとした。鏡の前に立って驚いた。

「おっ、俺がいない!」

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る