ループ量子重力理論における時間の必要性について~Hello, gravity~
水辺無音
時間の部
時間について考えるっち!
これまでの直感に従って、時間を、概念的に、「不可逆的な変化」と定義したい。
かの本に出会う前、変化はどこから来るかと考えたことがある。
空間の広がりが変化を生むのではないか。
時間が先か、空間が先か、といった議論があるかもしれない。
空間が拡大することによって、その内部に変化が生じる。
それを、時間として捉えているのではないかと。
最近、ある物理学の本を読んだ。
とても印象的であった。電撃に打たれたような衝撃! 爆発的侵蝕によって何かが生まれ広がるような感覚!
そこには、宇宙に時間は必須なのか? という疑問が提示されていた。
それについて考察したい。
その前に、幾つかの内容だけ復習しておく。
その本に、ループ量子重力理論といった考えがある。
複数の、空間の量子が、互いに支えあって空間を作る。
空間の量子は、時空間そのものであり、自身は絶えず振動している。
三次元空間と時間を含めた四次元を想定しているように思われるが、方程式で記述すると、時間の変数tは式中に含まれない。
時間は存在しない。
また、同書では、情報についても言及している。
情報とは、取りうる選択肢である。最小の数は2。例えば「ある」か「ない」か、最低でも二つの選択肢がなければいけない。
選択肢数=1のとき、情報=0
では、宇宙に時間は存在しないのか? 考察したい。
直感に従えば、時間は存在する。
古代の哲学者パルメニデスはこう言った。
「あるものはある。ないものはない」
同書には、古代哲学者デモクリトスの考えが紹介されている。要約すると、世界を構成する粒は、広がりを持たなければいけない。点は、いくら集めても広がらない。
ループ量子重力理論では、空間を構成する有限の最小単位が存在する。それはデモクリトスの言と一致するという。
では、時間はどうか?
流れを感じる。過去から、現在、未来へと、広がるように思われる。有限の最小単位があるのではないだろうか。
「あるものはある。ないものはない」
ループ量子重力理論は、三つの式で表現されるそうだ。
ここで、方程式の成立に、時間が必要であるという証明を試みよう。
物理学の方程式を二つの型に分ける。
(1)様相A=様相B
(2)様相C=確率や数列や行列
様相とは、状態、状況をかっこよく言ってみたかっただけ。
情報を、取りうる選択肢とするなら、様相は、取られた選択肢といえる。
時間の定義を「不可逆的な変化」とし、変化の定義を「異なる様相になること」とする。
(1)に対する証明。
例として、E=mc^2を用いる。
Eはエネルギー、mは質量、cは不変の光速、^はべき乗を示し、式はエネルギーと質量が等価であると言っている。
時間がないと仮定する。
すると、様相が変化できないため、上記の式は下記に修正される。
E=E
mc^2=mc^2
ある一瞬にEとm、両方の様相を取れないならば、ある要素が、Eかつmであるためには、様相の変化、即ち時間が必要なはずである。
時間がなければ、様相A=様相B、という式は成立しない。
次いで、(2)に対する証明。
同様に、時間がないと仮定する。
確率や数列や行列は、複数の数字からなる集合体だ。
ところが、時間がないと、様相は変化しないため、一つの数字しか取ることができない。
そこで、(2)様相C=確率や数列や行列、の式は下記に修正される。
様相C=定数
複数の可能性を与えるには、変化を受け入れる広がりが必要である。それは時間。
時間がなければ、(2)式は成り立たない。
(1)や、特に(2)の例を見ると、情報が、変化の源であるようにみえる。
時間とは情報である、としたい。
静止空間には情報がない。空間の量子に二つ以上の選択肢がない。
ループ量子重力理論において、空間の量子は情報を持つ。複数の選択肢を持つ。つまりは、もしかすると時間を持つ。
物理式には、情報が含まれている。即ち、もしかすると時間が含まれている。
宇宙には、時間があるのではないだろうか。
では、何故、ループ量子重力理論を表す式に、時間変数tが含まれないのか?
tが増大も、減少も、しないからではないか。
以降は、しばらく想像となる。
宇宙には、過去も、未来もなく、「今」しか存在しない。
その「今」とは、時間の有限なる最小単位であり、候補としてプランク時間を推測する。一秒よりも遥かに短い。
しかし、翻すと、宇宙に存在する時間はそれだけである。
最小単位一つ分の、一秒より遥かに短い、プランク時間だけ。
過去はない。「今」において、過去は既に、宇宙から消えている。比喩を使えば、過去は、死んだ人間の魂が向かう場所と同じ所へ、旅立ってしまっている。おそらくは無へ。
「あるものはある。ないものはない」
時間は、過去から現在そして未来へ流れているのではない。宇宙には、過去も未来もなく、ただ変わり続ける「今」という時空間だけが、ある。
ちょうど、金魚鉢に満たした水の中へ墨汁を流し、色が移ろうさまを見るように、「今」という枠の中で、中身だけが変容しているのではないか。
「今」は一瞬ではない。それ以上割り切ることはできないけれども、有限な広がりを持っている。空間を作る粒が点ではないという発想と同じ。あるのであれば、広がりを持っているはずである。
ループ量子重力理論の知識を借用しよう。一つの時間は、①過程の始まり、②確率の雲、③過程の終わり、で構成されるとしたい。過程の始まりと過程の終わりでは、ある様相が存在として現れる。過程の終わりは、次の、過程の始まりでもある。
一つの時間は、原因と、変化の可能性である確率と、結果とを、併せ持つのだ。これらは、変化の最小構成単位として、必要な要素であろう。内側で、変化が完結していなければいけない。
時間を最も細かく千切った「今」の中には、原因と可能性と結果が混在している。シュレディンガーの猫や多元解釈への糧にもなろう。
次に、時間の不可逆性について考える。
不可逆性は、なぜ、生まれるのか?
進めない方向があるからではないか。
上の解釈に従うと、情報、すなわち、取りうる選択肢が残っている限り、「今」は何回も繰り返される。
不可逆的とはどういうことか。
一方向にしか進めないとはどういうことか。
消える選択肢がある。
「今」の中、過程の終わりにおいて、選択された情報以外の全ての選択肢は消失する。消えた方向へは進めない。次の「今」においても、そのまた次の「今」においても、同様な現象が生じれば、過程の終わりに選択された情報以外には進めない、という方向性が作られる。もしくは、選択された情報にのみ進めないのかもしれない。水を平地へ降らすと水たまりができる。平地に水路を作っておけば、水は水路の中を、一方向に進む。水路とは、進めない方向を作る壁である。時間においては、消える選択肢が壁となって、進めない方向を作る。
宇宙には「今」しかない。過去は消える。過去が消えるから、時間は、無より有へ方向性を持つことができる。不可逆的となる。宇宙に過去も未来も存在していたら、時間はないはずだ。人類は、とうの昔に、そこへ行く手段を手に入れていたかもしれない。人が、過去へも未来へも行けず、「今」から抜け出すことができないのは、はじめから、宇宙に、過去も未来も存在しないからではないか。
「あるものはある。ないものはない」
ループ量子重力理論を表す三つの式を再度検討しよう。
専門知識が乏しく、内容の理解が追い付いていない。
時間変数tがないことだけ分かる。
もしかすると、式の中で、空間の量子は、空間情報だけを与えられているのかもしれない。
量子が宇宙に存在すれば、量子の持つ情報も宇宙に存在する。
空間の量子は、時空間そのものである。
量子の中で。
空間には、情報が与えられている。選択肢が二つ以上与えられている。
時間には、情報が与えられていない。選択肢が一つしか与えられていない。
時間はあるが、時間の情報はない。
これは、時間が一つの選択肢しか取ることができない、不可逆性を示しているのではないか。
また一方で、時間は情報であるという見方も残しておきたい。
時間と空間は、同一に存在する。
空間の量子が選択を行って、顕在化した時間である様相の数をTnで表す。一つの時間は、①始まりの様相、②確率の雲、③終わりの様相から成り立つとすれば、Tn≧2で、時間変数tは0より上を取れる。
時間がない場合は、Tn=0 t=0。
時間がある場合は、Tn≧2 t>0。
様相が一つだけの場合は、Tn=1 t=0。時空間はあるが、時間変数では表現できない。
変数x=空間情報×Tn
ここでTn=0の場合は、空間情報が消失する。
空間情報がそのままの形で存続する場合は、
変数x=空間情報×1
Tn=1 t=0
時空間は存在するが、時間変数では表現できないということではないか。過去の様相を消して、新しい様相へ塗り替える。宇宙には変わり続けるTn=1しか存在しない。しかし、過去のTnを記憶できるものがあれば、Tnを重ね、時間変数tを認識することは可能になる。
宇宙にはわずかな時間しか存在しない。
変化は「今」の中に閉じ込められている。
全てはその「今」という時空間の中で、変わり巡ってきたことなのではないかと思うのだ。何もかもそこにあった。私たちは、恐竜や坂本龍馬と、同じ時空間を共有している。過去の空間は過去に消えたのではなく、今ある時空間がみんなで過去を経験してきたのだ。
古代の哲学には、これと似た結論へたどり着いたものもあるし、中には、全く同じ理論を説いている思想もある。
仏教である。
仏教が、今を大事にする、と語るのは、何となく知っていた。
今回改めて調べてみると驚いた。
全ての存在は一瞬に存在し、瞬間ごとに消滅する。刹那滅と呼ばれる教えがある。上で見てきた宇宙観や時間概念とぴったり合致するのだ。輪廻転生についてはっきり分からないが、次のような考察はできる。量子は時空間そのもである。万物は宇宙の中にあるのではなく、万物は宇宙の一部である。人は宇宙の中に生きているのではなく、宇宙の一部を構成している。それは他の全ての物質と対等な立場である。エネルギーのみではなく、時空間にまで還元されるのだろうか、質量は。
少し脱線して、情報を軸に、宇宙の構成要因、意識、配列についてみよう。
従来、世界を構成する存在の形は、法則、物理、意識、概念の四つであると捉えていた。
しかし、同書の内容を踏まえ、修正する。
自律体は、「情報を持ち、選択できるもの」とする。自律体がある時間に取った選択肢を様相と呼ぶ。量子と意識を、自律体として捉えると、下記の如くまとまる。
自律体 量子 意識
取りうる選択肢 量子情報 意識情報
取られた選択肢 量子様相 意識様相
情報と様相に、自律体を埋め込むと、四つに集約できる。
宇宙に存在する形は、量子情報、量子様相、意識情報、意識様相となる。これに多様性を生み出す配列情報を加える。
量子情報:量子が取りうる選択肢。対象は空間座標。
量子様相:ある時間に量子が取った選択肢。物理的状態。
時空間での容量は一回分だけ、塗り替えて更新する感じ。
意識情報:意識が取りうる選択肢。対象は概念。
意識様相:ある時間に意識が取った選択肢。概念。
肉体を持てば量子様相に影響できる。
記憶での容量は一回分以上、ある程度蓄積できる。
後述の配列を形成して保存すると思われる。
配列情報:配列の組み合わせで生まれる選択肢。対象は全ての配列。
量子が選択すれば量子様相となり、
意識が選択すれば意識様相となる。
取りうる選択肢、即ち情報を爆発的に増やす。
意識のない宇宙において、存在する情報は、量子が所有するのみであった。
量子が最も存在しやすい選択を続けるならば、その姿は生命に似ている。
意識は、自らの力で、新しい選択肢、新しい情報を生み出す。量子の持つ情報限界を超えているのではないか。
自律体を宇宙とするなら、意識は、量子から生まれた新宇宙である。
様相を重ねると、時間変数tで表現できる。認識できる。
ここで、情報と配列について考える。
一般的に、遺伝子、書物、USBなどは情報を持つという。しかし、情報を、取りうる選択肢とすれば、これらは配列と呼ぶべきである。選択肢を一つしか持っていない。ある選択肢のあとに、次の選択肢が何であるか、あらかじめ予定されている。保存されている。
情報は動的な変化であり、配列は静的な保存だといえる。
量子が選択を続ける宇宙において、配列は複数の様相で保存されうる。質量体と生命に関わりが深そうだ。
空間配列と時間配列を分類する。
記述された文字、遺伝子、原子構造などは空間配列である。ある時間に取られた選択肢、様相の中で完結する。音楽、踊り、天体運動などは時間配列である。いくつかの様相を重ねることで完結する。
コンピューターは、意識が作り上げた配列を持ち、意識または量子の選択に従う。それ自身が、新たな選択肢を作り出し、自ら選べるのであれば、そこには、意識が宿ったといえるかもしれない。起きている時に存在し、寝ている時は消失するので、それを意識と呼んでいる。西洋風に表現するなら、魂か。
意識にとって最大の脅威は自身を生み出したものである。人間に対する自然であり、A.Iに対する人間といえる。意識は存続のために脅威を克服する。相手を変容させるか、滅ぼすであろう。
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