怪人ゴライドウ④

「我々はダークスフィア! そして俺は四騎将の一人、怪人ゴライドウ! ここにいる全ての人間よ、絶望しろ!」


 僕が今まさにこよみさんに告白しようとしたその時、この前丸の内で出現したダークスフィアの幹部、怪人ゴライドウが全てを台無しにした。


 そして、逃げ惑う客、スタッフ達に戦闘員が次々と襲い掛かる。


「っ! くそ! こよみさん!」


 僕はこよみさんの手をつかみ、とりあえずこの場所を離れようとしたんだけど……こよみさん? その、何だか身体が震えてらっしゃる?


「…………………………この」


 こよみさんが身体を震わせながら、ゴライドウをキッ、と睨む。


「このアホンダラアアアアアアア! よくも……よくも耕太くんとの大切な時間を邪魔しくさってえええええ! 変身!」


 こよみさんは強烈な啖呵を切ると、左腕をかざし、ヴレイウォッチのダイヤルを回す。


 そして、ヴレイピンクに変身すると、客やスタッフ達に危害を加える戦闘員達をひたすら攻撃していった。


 その姿は、すさまじいの一言に尽きる……って、そうだ! 僕もこうしちゃいられない!


 カバンからタブレットを取り出し、通信をオンにする。


『上代くんか! 今どこにいる!』

「僕とピンクはデスティニーワールドでこの前の怪人ゴライドウと交戦中です! すぐにヴレイファイブの招集をお願いします!」

『ああ、もちろんだ! だが……』


 なぜか高田司令が言いよどむ。


 すると、先輩から通信が入った。


『ゴメン耕太くん! 首都高が渋滞で、そこに着くの、遅くなりそう!』

『こちらイエロー、湾岸に向かう道路が渋滞のため先に進めない』

『……ブラックだ。同じく渋滞』

「な!? なんで今日に限ってそんな渋滞が!?」

『……どうやらダークスフィアが、湾岸道路を破壊したようだ……』

「そんな……」


 じゃあ……僕達は、完全に孤立している、ってこと!?


「くっ! じゃあ司令! 地元の警察に連絡して至急デスティニーワールドで客とスタッフの保護を要請してください!」

『もちろん既に要請してある! そちらは間もなく到着するはずだ!』


 とにかく、まずは客とスタッフの避難を優先させないと!

 だけど、どうやって!?


 ——ブオン!


 その時、けたたましいエンジン音とタイヤがアスファルトを擦る音が僕の耳に響いた。


『相棒! ダイジョウブカ!』

「モモ!」


 現れたのはモモだった。

 だから、相棒はこよみさんだよね!? ……って、今はツッコミを入れてる場合じゃない!


「モモ! 一般の人達を避難させるから、手伝って!」

『了解! ダガ、ドウヤッテ避難サセルンダ?』

「とにかく……一般の人達と襲っている戦闘員との間に割り込んで分断させよう! その隙に逃がすんだ!」

『トリアエズソレシカナイカ……』

「ああ! さあ行こう!」


 僕はモモに跨るとアクセルを思いきり回し、戦闘員達めがけて全速力で突っ込む。


「こ、耕太くん!?」


 戦闘員を蹴散らしていたこよみさんから、驚きと心配をする声が聞こえた。


 だけど、僕にもやらせてください。

 だって。


「せっかくのこよみさんとのデートだけじゃなく、一世一代の告白を邪魔して……! 僕だって……僕だって頭にきてるんだよおおおおおっ!」

『何ッ!?』


 そう叫ぶ僕に、モモが驚きの声を上げた。


 そんなことはお構いなしに、僕とモモは一般の人と戦闘員との間に割り込みながら突き進むことに成功し、綺麗に分断された。


「早く! 逃げてください!」


 僕の叫び声を聞いた人達が、一目散にゲートへ向かって逃げていく。

 戦闘員もそれを追いかけようとするけど。


「「「「「ギー!?」」」」」

「やあああああああああっ!」


 こよみさんがそうはさせまいと、次々と戦闘員を屠っていく。


「ハアッ! ハアッ!」


 そして、見事に一般の人達を逃がすことに成功すると、高田司令から通信が入る。


『ピンク、上代くん、よくやった! 警察も既に園内に入り、順次客達を保護している!』

「そ、そうですか、よかっ……」

「こ、耕太くんっ!?」


 すると、後ろからこよみさんが僕を呼ぶ声が聞こえたので振り返ると。


「え……?」


 戦闘員の一人が、棍棒を振り上げ、僕の目と鼻の先に来ていた。


 その時。


 ——ギインッ!


 戦闘員の棍棒は、ブーメランによって弾かれ、宙へと舞った。


 この武器は……!


「ブルーさん!」

「へへ……よう耕太! どうやら間に合ったみてーだな!」


 そこにいたのは、怪我で入院しているはずの、ヴレイブルー……青乃さんだった。


「って、身体は大丈夫なんですか!?」


 僕は青乃さんへ慌てて駆け寄る


「おう! だけど、俺の相棒も二輪タイプでよかったぜ。おかげで渋滞を避けてここまでこれた。さあて……ピンク! 耕太は俺がシッカリ守ってやるから、お前はあの野郎をぶちのめせ!」


 青乃さんの言葉に、こよみさんは胸を押さえ安堵する仕草を見せる。


「耕太くんはホンマに無茶ばっかりして……せやけど、ホンマに……ホンマに無事でよかった……!」

「こよみさん……ヴレイピンク! 僕達の幸せな時間の邪魔をした、怪人ゴライドウをやっつけて!」

「うん! まかしとき!」


 そして、いよいよこよみさんは、怪人ゴライドウに対峙した。

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