怪人ゴライドウ①
■ゴライドウ視点
「クソッ! だから俺は反対だったのだ!」
俺は目の前の円卓に両の拳を思い切り叩きつけると、真っ二つにへし折れた。
「フン、脆いな! まるであっさりとやられたスオクインと同じだな!」
折れた円卓を蹴り飛ばし、俺は向かいに座るカネショウをギロリ、と睨む。
「大体、連れてきたカネショウに責任があるんじゃないのか? そもそも、俺達“ファースト”とは違うんだ! それを!」
「まあまあ、そう怒らないでよ。前も言ったでしょ? 彼女を幹部に入れるように指示をしたのは“あの御方”だって」
「ぐ、ぐぬぬ……」
クソッ! それを言われると何も言い返せん!
しかし、あの御方も何を考えておられるのだ!
そんなに我々“ファースト”を信用いただけないのか!?
悔しさのあまり歯噛みしていると、背後にやって来たイタチソードが俺の肩をポン、と叩いた。
「落ち着けゴライドウ、私もお前と同じ気持ちだ。だが……」
「ああ……分かっている! 分かっているが……!」
そう、俺達“ファースト”は、あの御方には逆らえない。
いや、違うな……俺達は、あの御方を裏切りたくないのだ。
俺達を救ってくれ、導いてくれた、あの御方を。
「ゴライドウ……ボクだって同じ気持ちだよ。だけど、あの御方のためにも、ボク達はやることをやるだけだよ」
珍しく、カネショウが神妙な顔をする。
ああ……コイツだって、俺達と同じ“ファースト”だよな……。
「……カネショウすまん……お前に当たってしまった……」
「別にいいよ。それより、あの御方から次の指示を受けてるよ」
「「次の指示?」」
カネショウの言葉に、俺とイタチソードはお互い顔を見合わせる。
今度は一体どんな指示が……。
「うん。あの御方からは、『スオクインの離脱により欠員となった四騎将について、新たに加わった“怪人アリス”を四騎将とする』だってさ」
「「はあ!?」」
俺とイタチソードは揃って声を上げた。
「おい待て! 確かソイツは……!」
「うん。スオクインが怪人に、ボクが強化してヴレイピンクに敗れた、あの“怪人アリス”さ」
「……そんなもの、認められる訳が、納得できる訳がないだろう!」
イタチソードが、カネショウを睨みつける。
いつも冷静なイタチソードが、ここまで感情をあらわにするなんて、余程腹に据えかねたのだろう。
おかげで、この部屋に一触即発の空気が流れた。
「……何度でも言うけど、これはあの御方が決定されたことだよ。イタチソード、君はあの御方に逆らうということでいいのかい?」
「っ! それは……」
「だったら君は黙って受け入れてよ。ゴライドウ、君もそれでいい?」
「フン……あの御方のことを言われたら、首を縦に振るしかないだろう……」
「うん、ありがとう。だけど二人とも、少し勘違いしているよ?」
「「勘違いだと?」」
俺達が勘違い?
カネショウは一体何を言っているんだ?
「彼女……怪人アリスは、決して実力が劣っている訳じゃない。だって、よく考えてごらんよ。彼女はスオクインとボク、二回も“怪人化”に耐えてるんだよ?」
「っ! た、確かに……」
そうだった。
通常の人間であれば、たった一度の“怪人化”をするだけでも、その九割以上が失敗し、出来損ないの代物になる。
だがあの女は、スオクインによって“怪人化”を果たしたばかりか、その後のカネショウによる再度の“怪人化”すらも実現した。
つまり、怪人として俺達“ファースト”と同じ資質を持っている、ということだ。
そのことに思い至った俺は、背中に冷たいものを感じた。
隣にいるイタチソードも俺と同じように感じたのか、その顔が引きつっていた。
「それだけじゃないよ。彼女は今、さらなる“怪人化”が行われているんだ」
「「ま、まだ“怪人化”するのか!?」」
無理だ。
ありえない。
俺達ですら二回が限界なんだ。
それを“三回”も行うなんて、今度こそ失敗する。
だが。
「……あの御方からは、彼女に三回目の“怪人化”のための細胞移植を施したところ、特に拒絶反応を示すことなく、しかも、本体に全く影響はなかったらしいよ」
続けて語られたカネショウの言葉に、俺とイタチソードは絶句する。
そうなったら、それはもはや怪人の皮を被った、“別のナニカ”だ……。
「そういうことだから、次に怪人アリスに会った時は、彼女は既に別の次元にいるだろうね。そうなると、ボク達はどうなるのかな……?」
「「っ!?」」
そうだ。
もし怪人アリスの三回目の“怪人化”が成功すれば、俺達“ファースト”の存在意義がなくなってしまう。
そして、我々はあの御方から、もう必要とされなくなってしまうのではないか……?
……いや! そんなはずはない!
我々はまだ、あの御方にとって必要なはず!
ならば!
「……カネショウ! 次は俺が出る! ヴレイファイブの連中は、この俺、“怪人ゴライドウ”が叩き潰してやる!」
この俺が、俺達の価値を、あの御方にとって必要な存在だと知っていただくまで!
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