再会②

「え、ええ!? こよみさん!?」


 立ち去ってしまったヴレイピンクを探して、駅周辺をウロウロしてたら、建物の陰にいた彼女を見つけて傍に寄ろうとした時、彼女が突然光に包まれ、それが収まると……まさかこよみさんが現れるなんて……。


 い、いや、でも、こよみさんは一四〇センチを少し超えた程度の身長だけど、ヴレイピンクは一七〇センチ近いし、そ、その、胸が……。


 い、一体何がどうなって!?


 僕が混乱してると、こよみさんは一気に詰め寄ってきた。


「ここここ耕太くん! ひょ、ひょっとして今の見たんか!?」

「ああああ!? ちょ、ちょっと!?」


 こよみさんは僕の胸襟をつかみ、前後に思いきり揺さぶった。


「なななあ! 何とか言うたらどうなんやっ!」

「ちょちょっ!? おおお落ち着い……!?」


 ダ、ダメだ……頭がガクガクするし、何より息が、息ができない……!?


「なあって! ……って、耕太くん?」

「…………………………」

「ちょちょ、ちょっと耕太くん!? し、しっかりして!?」


 こよみさんの焦ったような声を聞きながら、僕は意識を失った。


 ◇


「……ん……あ、あれ……?」

「あ……気いついた?」


 目を開けると、そこには心配そうにのぞき込むこよみさんがいた。


 そういえば、こよみさんに首を絞められて……。


 で、後頭部の柔らかな感触は一体……って、ひょっとして膝枕してもらってる!?


「そ、その! すいま「ええから、このまま大人しくしとき」」


 慌てて起き上がろうとしたところで、こよみさんに無理やり抑え込まれた。


 ま、まあ、こよみさんがいいのなら、このまま……。


「それより、さっきはゴメンな……ウチ、気が動転してしもて……」

「あ、ああ、いえ……それで、その……」


 僕はこよみさんに尋ねる。

 意識を失う前に見た、あのことを。


「あ、あはは……そらマンガみたいに都合よう忘れてたりせえへんか……」


 そう言って、こよみさんは頭を掻きながら苦笑した。


「その……耕太くんが見た通り、ウチの正体は勇者戦隊ヴレイファイヴの一人、ヴレイピンクや……」


 こよみさんは、苦しそうな表情で告白した。

 だけど、その姿が先程見たヴレイピンクとあまりにも違い過ぎて、どうしても僕は信じられなかった。


「ええと……ですが、ヴレイピンクとこよみさんでは、その、背格好があまりにも……」

「あ、ああ……あれは、組織がアッチのほうが見栄えがええ言うて、な。や、ウ、ウチもこんなチンチクリンじゃ映えへんと思うし」


 こよみさんの語った理由に、僕は怒りがこみ上げてきた。


「そんな! 一体その組織とやらは何を考えてるんですか! こよみさんはこんなに素敵な女性なのに! それを……!」

「はわわ!?」


 僕は思わずガバッと起き上がると、こよみさんは驚いて上半身をのけぞらせた。


「そ、その、そんな風に言うてくれるんはその、う、嬉しいねんけど……あんまりそんなことばっかり言うてると、普通は女の子が勘違いしてまうよ?」


 こよみさんは指をモジモジさせながら、上目遣いでこちらを見た。

 心なしか、顔も赤いように見える。


 あ、あれ? 何だか僕も緊張してきた……。

 で、でも、これだけは言っておこう。


「あ、そ、その! 僕なんかに言われて嫌かもしれませんけど、その……ホントのことですから……」

「はうう……」


 その後、僕達は目を合わすことができず、お互い俯いた。


「うう……………………って、そやない! それよりも!」


俯いてずっと指をコチョコチョしていたこよみさんが、思い出したかのように勢いよく顔を上げた。


「え、ええと、こよみさん……?」

「ああ……どないしよどないしよ! ……そ、そや! 耕太くんがナイショにしてくれたら……」


 こよみさんがオロオロしながら、ブツブツと呟いていると。


 ——ピリリリリ。


 突然、こよみさんのスマホに着信音が鳴る。


「あーもう! このクソ大変な時に空気を読まんヤツは誰や! ……って、ゲ!?」


 スマホを取り出し、画面を見たこよみさんは、分かりやすいくらいしかめっ面をした。


「ちょ、ちょっと待っててな……ハイ、モシモシ……」


 こよみさんは電話にでると、少し離れた。


「え、ええ……とりあえずは……は!? 盗聴しとったんかいな!? …………って、ええ!? そ、そんなん……! ちょ、ま、あ……」


 電話が終わったのか、こよみさんはスマホをポケットにしまうと、明らかに落ちこんだ顔でトボトボとこちらに戻ってきた。


「あ……ええと、な? と、とりあえず一から順に説明させてもらうと……」


 こよみさんは申し訳なさそうに、電話の内容を含め、言葉通り順を追って説明してくれた。


 まず、ヴレイファイヴの正体については最重要国家機密であり、それを知った者は警察機関によって拘束されてしまうこと。

 そのため、こよみさんは僕がその事実を秘密にすることで、そういったことがないように考えたこと。

 だけど、彼女の腕時計(変身アイテムらしい)を通じて、本部の司令に会話が筒抜けになってしまった、とのことだった。


「非常にまずいじゃないですか!?」

「そやねん! ど、どないしよ!?」


 僕達は二人揃って頭を抱える。


「そ、それで、僕達はどうなるんですか!?」

「そ、それが、今後の対応を含めて、その司令と耕太くんとウチで、まずは明日面談を行うことになってしもたんや!」


 ………………………………………………はい?

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