第21話 新たな問題
メリアの視線に違和感を覚えつつ、俺は委員長であるハンズ先輩からの誘いでお茶をいただくことに。
委員会の活動場所である小屋はお世辞にも広いとは言えないが、それでもきちんと整理整頓されており、清潔感がある。……ただ、
「ぐっ!?」
なんだ、この臭い……。
表現しづらい。
腐敗臭とも違うが……ともかく凄い刺激臭だ。鼻の奥がツーンとする。
「うぅっ……」
「な、なんですか、この臭い……」
ティーテとメリアも思わず顔をしかめる。平気なのは委員長のハンズ先輩だけだ。
「ちょうど新しいお茶を淹れたところなんだ。飲んでみてよ」
そう言って、コップに注がれた液体を勧められたが……な、なんだ、これ。今までに見たことない色と臭いだぞ。まず間違いなく人体に悪影響が出そうなんだが。
「ああー……すいません、今ちょっと喉が渇いていなくて。なあ、ティーテ」
「あ、は、はい。そうなんです」
「そうなのか。おいしいんだけどな」
「じゃ、じゃあ、私が飲んでも?」
おずおずと手を挙げたのはメリアだった。
「お、おいおい、大丈夫か?」
「も、問題ないです。これって、ハンズ先輩が前から育てていたロークの花を使っているんですよね?」
「そうだよ」
ニコニコ笑いながら語るハンズ先輩。手にしているドリンクが凶悪臭を放っているため、なんとなくその笑みも邪悪な感じに映った。
「ロークの花には、人が持つ魔力の最大量を増やす効果があるかもしれないと言われているんだ」
「ず、随分と曖昧な情報ですね」
「実はハッキリと効果が認められたわけじゃないんだよね。だから、僕がそれを証明しようと思ってね」
「ハンズ先輩の研究テーマでもあるんですよね?」
「その通り!」
いや、それなら先輩自ら飲めばいいじゃないか。
そんな人体実験みたいな……。
「あ、ちなみに、人体に悪影響はないから安心してくれ」
取ってつけたような安全保障。
それでも、メリアは渡されたコップを離さない。魔力の最大値が上がるかもって話だけど……もしかしたら、魔力値にコンプレックスでもあるのか?
「い、いきます……」
ゴクリ、と唾を飲んでから、メリアはドリンクを一気に飲んだ。
その味は――
「あれ? おいしい?」
「「嘘っ!?」」
思ったよりもずっと薄かったメリアのリアクション。どうやら本当においしいらしい。
「効果が出るには二、三日かかるようだから、また様子を教えてくれ」
「は、はい」
「メ、メリア、本当に大丈夫?」
「平気よ」
なんだか平和な空気が流れているけど……緑化委員っていつもこんな感じなのか?
それから、ちゃんとした(?)お茶を用意してもらい、緑化委員の名物となっているらしいお茶会が始まった。
メンバーは全員で十一人いるらしいが、他の活動と兼務している生徒もいるようで、毎日参加しているのはティーテとメリア、そしてハンズ先輩の三人らしい。ちなみに、神授の儀で会ったコルネルも兼務勢なので今日はいないとのこと。
「はっはっはっ! まさかバレット・アルバースがここまで心変わりしているとはね!」
ハンズ先輩とは、話をしているうちにこれまでの行いを改めたことを告げた。楽しくお茶会でおしゃべりをしているうちに、俺のその言葉を信じてくれたようで、
……ただ、
「…………」
メリアの表情は冴えない。
時折、ティーテが気にして声をかけていたが、メリアはそのたびに「大丈夫だよ」と返していた――が、時々俺と視線がぶつかり、そのたびに慌てて目を背ける。
やっぱり……原因は俺にあるようだ。
ここで思い出されたのは【最弱聖剣士の成り上がり】――つまり、原作だ。
そういえば、バレットは学園内に多くの彼女がいたって書かれていたな。
彼女――というと聞こえはいいが、実際はアルバース家の権力を後ろ盾に無理やり交際を迫るということがほとんどだったという。
どんな生徒がその被害に遭っているのか、具体的な名前は明かされていないが……もしかしたら、メリアもその被害者なのでは? 俺が転生する前に、バレットが手をつけた女の子……だから、俺はメリアの顔と名前を憶えていたのでは?
……これはまずいな。
ラウルの件に加えて、俺は新たな問題に直面した。
それは――バレットの女性関係だ。
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