第8話 伝承



千年前の勇者達の物語



「七人の勇者の伝説」



千年の昔、世界は魔王とその配下の魔族によって蹂躙されていた


各国はそれぞれの戦力で防衛に努めたが魔族の勢力は強大で各国は徐々に疲弊し押されていった



時の人族の王は各国に同盟を呼びかけ少数精鋭での魔王討伐を発案した


各国から勇者が選抜される



エルフ族からは精霊魔法に長けた第四王子が、


ドワーフ族からは力が強く、強固な武具を造ることが出来る鍛冶師が、


獣人族からは武闘大会で優勝した獅子族の英雄が、


小人族からは補助魔法に長けた長老が、


竜人族からはこの時から遡ること更に五百年前の大戦争を生き抜いた最強の戦士が、


人族からは聖女と呼ばれた王国の第三王女が、


更に異世界より召喚された黒髪黒眼の勇者が、



この七人の勇者が選抜され魔王討伐の旅に出る



異世界の勇者は他の勇者に比べ経験が乏しく


旅を始めた当初は足を引っ張ることが多かった


しかし、旅を続けるに連れその能力を開花し果てには他の六人を牽引するほどの力を発揮した



魔王城へ向かうにあたり、神獣や大精霊などの力を借りるため


秘境と呼ばれるような地へも出向いた



装備を造るため、その素材集めに


魔物の住みかになっている鉱山の制圧


竜族最強と呼ばれる黒竜の討伐


など、困難と言う言葉すら生ぬるいような試練を乗り越える



また、その旅の道中では


侵攻してきた魔族たちを撃破し占領された土地を解放していった



そして魔王城に誰一人欠けることなくたどり着いた七人


城には魔王の他に幹部と呼ばれる強力な魔族がいた


その戦いの最中で小人族、ドワーフ族の勇者は息絶えた



二人の死を無駄にしないよう悲しみくれる間もなく魔王の下へと向かう五人


魔王との戦いは熾烈を極めた



決着は全員が全てを出し切った


強大な魔力を持つ魔王の魔法を聖女が神聖魔法で防ぎ


獣人族の勇者、竜人族の勇者はダメージを受けることを省みずそれぞれのスキルを使い隙を作る


そこへ残り少ない魔力を振り絞ったエルフ族の勇者の精霊魔法でその魔法による防御を破る


異世界の勇者のユニークスキル『魔を断つ剣』により不死とも言われた魔王の命を奪う



これで終われば魔王を倒して大団円となったがこの物語には続きがある



魔王にトドメをさした異世界の勇者は魔王の血を浴びたこと


魔王の最期のあがきの闇魔法


その影響により心を闇へと落としてしまう


疲弊しきった他の勇者達は抵抗することができず次々に命を奪われる



最後に残った聖女へと剣を向けようとした瞬間


聖女はその命を燃やしつくし送還魔法を唱える



魔王は討伐されたが


ドワーフ族の勇者、小人族の勇者は魔族の幹部と戦い命を落とし


エルフ族の勇者、獣人族の勇者、竜人族の勇者は闇に落ちた異世界の勇者に命を奪われ


異世界の勇者は聖女により元の世界へと送還され


聖女はその狂ってしまった勇者を元の世界に送り返すためにその命を燃やしつくす



魔王討伐を果たした勇者は誰一人として生き残ることはなかった



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