恋を恋する天才高校生 

柊 季楽

ミステリアスな少年と彼を落としたい少女

第1話 学園のマドンナの悩み

★この物語は基本的にフィクションです。実際に存在する団体はありますが、全く別のものと思っていただいて結構です。

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 突然だが、私は神崎かんざき彩萌あやめ。自分で言うのもなんだが美少女である。

母も父も美形で、家庭も裕福。小学生に入るころには、もうその生まれ持ったモノに気づいていた。自分はほかの子とは違うと、恵まれているのだと。

  

 それに気づいてからは、自信がついた。

だから、芸能界へのお誘いも断った。私はこんな汚れたところへは行かないと。

最初は怖かった男子の視線にも慣れた。欲望に塗れた馬鹿な目に恐れることは何もないと。告白されることにも慣れた。振るのにも慣れた。

同性に妬まれることにも慣れた。つまらない嫌がらせにも、羨んでも仕方がないと諭した。


 あくまでも綺麗な心で居ようとした。才色兼備なんて言われるのは嬉しいが、裏表を作らないように、人に言われた言葉は受け入れないようにした。

 しかし、綺麗で居ようとすればするほど、周りへの期待は薄れて行った。

自分ほど綺麗な人はいないのだと。それには優越感なんて感じなかった。

ただ絶望した。


ただ、いま私は密かに期待している男がいる。


クラスメイトの佐々木ささきだ。確か名前は旅人たびとだった気がする。

ぼっちで、いつも一人でいるのだが、彼のことをいじる人間は全くいない。

不思議になるレベルでだ…。


最初に彼に話しかけた時の反応がこれである。





「あのさ、君って佐々木君だよね。」


ヘッドホンをしてるのをいいことに、後ろから肌がふれそうな距離で話しかける。

普通の男子ならここで飛び上がるか、変な声を出す。


「~~♪~~~ん♪」スラスラ


あ、あれ?絶対聞こえる大きさで言ったんだけどなあ。


「おーい。聞いてる~?」


次は勝手に右のヘッドホンを離して、耳元で囁く。


「ん~~嘘の世界に塗れた~♪…っていいとこだったのに、何するのさ。…えっと、誰かさん?」


長い前髪に隠れて、ほとんど目は見えないが、全く慌てない様子だ。


「もうちょっと言い方あるでしょ!?…私は神崎彩萌よ。クラスメイトだけど!?」


「…で、神崎さんは、何をしにきたの?僕は見ての通り、暇じゃないんだけど?」


コミュ症じゃないじゃん!


「へ、へえ。凄い難しそうな問題やってるね、佐々木君。」


「あの、僕は何しにきてんのって聞いてんだけど。バカなの?

…僕なんかと話してたら変な人だと思われるよ。」


 再びヘッドホンをつけて、その男はもとの方向を向きなおす。

恥ずかしくて、そっぽを向いたんじゃ…ないわね。そんな顔じゃなかったもの。

私あなたに何も…、いや今したわね。

でもそれくらいで!?


「え、なんで…。いや、ちょ、ねえ!」


その後は無視され続け、結局話してくれなかった。


「彩萌?あいつには関わらない方がいいよ。詳しくは言わないけど、関わらない方が身のためだよ。」


「身の為って、…わかったわ。」


 そのあと彼とは1か月ほど話していない。当然1か月の間向こうから話しかけてくることもなかった。それから、この1か月でこいつについてわかったことがいくつかある。

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1、曰く、すごく頭がいい。特に数学は、賞状などが部屋にびっしりと貼られてい 

  るという。


2、曰く、かなり天然である。だが、勘違いが激しい割に空気を読めるという。


3、曰く、父親が美容師らしいのだが、何故か今は髪を伸ばしている。

  

4、曰く、よく早退する。

  先生にもなぜかすんなり許諾する。

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これまででもかなり信じられないことが多いのだが、最も信じられないのが最後の噂だ。


  7、曰く、恋を夢見ている。



 何だこれは?つまり恋がしたいってことだろうか?

彼女が欲しいってことなのかな?


 よくは分からないが、ますます興味は増すばかり。やがて自分の考えが確信に至る。

 この男の心は本当に綺麗なのか、欲に塗れていないのか、試して見たいと思った。

 その価値はあると感じた。


 


 さて、この異例な少年をどうやって落とそうか。いや、落とせるだろうか?


 久々に、その少女は生き生きとした笑みを浮かべた。






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