13頁

戦争があったなんて 今を生きる人には

遠い昔の できごとなんだろうね

平和の中では 忘れてしまうんだろうね


青年のことを知る人も やがて いなくなるだろう

埋もれた住人となって

多くの死者が そうであるように


せめて 僕は ピアノを繋ごう

青年が生きた 唯一の証

飛び散った血痕さえも


だけど 僕は どうしても釈然としないんだ

美しい音楽に 癒されることもなく

乾いた心を 潤すこともなく


それとも 心かき乱すような

血が 沸き立つような

そんな曲を 青年は弾いていたのだろうか?


青年は 一体 最後に何を弾いたのだろう

青年が撃たれた あの日

あの時に

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る