第13話 今日、私は告白します。
部活が終わった後。
ゆっくりと歩いていた筈なのに、何故かあっという間に生徒会室へと着いてしまった。
柄にもなく、手が震える。
柄にもなく、緊張している。
柄にもなく、怖い。
でも、生徒会室の扉を開ける。
生徒会室は、窓際一面が全てガラス張りという少し変わった造りの部屋である。
そのせいで容赦なく差し込んできた真っ赤な夕日が、少し目に痛い。
いつもそれを煩わしいと思ってきたけれど。
今日ばかりはその窓に、その眩しさに、その赤さに、酷く感謝した。
(きっと今の私は、顔が赤い)
今日は夕日が真っ赤で良かったと思う。
じゃなきゃ、きっとバレていた。
(……いや、別に今から告白するんだし、バレても良いんだけどさ)
なんて言い訳をしつつ、アイツの居る方を見遣る。
折り畳み式の長テーブルの上に、アイツは腰を掛けていた。
いつもはそこで、椅子に座って宿題なり生徒会のアレコレなりを片付けているのに、珍しい。
外を眺める横顔は、真っ赤な夕日に照らされていた。
その顔が、こちらの入室に気付いて振り返る。
アイツと、目が合った。
さっきからずっと心臓が耳元でドクドクと言っていたのに、目が合った瞬間また心臓が跳ねた。
(私、どうにかなっちゃうんじゃないんだろうか)
心臓に持病が無くて良かった。
でなければ、きっと心臓がAEDとか、必要になってた。
(……あぁ、確か丁度生徒会室から出た廊下にAEDが備え付けてあったっけ)
なら大丈夫だ。
なんて、何かもう自分でもよく分からない思考に追われながら口を開く。
「あ、の……」
声が、震えた。
恥ずかしさに、また熱が数度上がった気がした。
息が浅い。
それを元に戻す為に、深く息を吸い、吐く。
(しっかりしろ、私)
心の中で自分を叱咤して、震える指を隠す様に拳を固く握った。
そして、言う。
「あの、私――」
「好きなんだけど」
私の声を途中で遮って、アイツが言った。
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
しかし時間が2秒、3秒と経つにつれて、その言葉の意味をジワジワと実感していく。
夕日が丁度、雲に隠れた。
今まで空間に差していた色がフッと消えて、しかし赤は、その色彩を失わない。
顔が、熱い。
きっと今の私は、とっても真っ赤だと思う。
アイツの顔と同じくらい、真っ赤だと思う。
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