第37話 根切り
宗教勢力との戦い方の成功例、それはぼくの少し前の世代にひとつある。
多数の兵で囲み、拠点である寺社を焼き、根切り、つまり皆殺しにすることである。
更にその反論ができない状況で禁教にしたのち、土下座してきたところを条件を付けて許すことで牙を抜いて完成だ。
利益や地縁が天秤に乗らない、信仰というもので集まったものたちだ。
基本領地の奪い合いである武士とは有効な戦い方が違ってくるのも当たり前のこと。
気は進まないが武士の流儀が通じない以上別の流儀で当たらざるを得ない。
とはいえ、本願寺派はすでに広く拡散しているので、簡単にはいかない。
一つずつ潰していくしかないだろう。
そして最初に選ぶべきは長島である。
織田領の急所は早急に処置しなければならない。と言い続けて未だに片付いていないのだが。
今度こそ始末をつける。
問題は敵の拠点は川の中、輪中にいくつもの拠点があるため、焼き討ちが難しいという点だ。
そこで、付城を多く築き包囲の助けとし、兵糧攻めを行うことにした。
水上も水軍によって抑え、密かに荷を運びこむものを遮断に成功。
また、落とした拠点の一揆衆は一旦解放し、本拠である長島城拠点に送り込んでいった。
もちろん食糧は没収した上で、だ。
それで長島城内の食糧の量は変わらず、口の数が増えることになる。
戦は順調に狙い通り推移していった。
だが、詰めの部分でしくじった。
捨て身の攻撃で大きな被害を受けたのである。
その中には一門衆の中でも重要な役割を務めていたぼくの兄なども含まれていた。
ああ、もう。
武士の戦の暗黙の了解の外を打ってくることはわかっていたし、こちらもそのつもりで作戦を立てていたはずなのに。
ああ、本当にもう。
その後、より丁寧に包囲をつづけ、最終的に焼き払った。
並行して畿内でも一揆衆と組んだ阿波三好が攻めてきていたが、無事撃退との報告を受けた。
畿内の織田派大名は、連中と敵対しているからこちらについているという面が大きいため、この関係を強化して配下に組み込んでいきたいところだ。
今度のことで長島一揆衆という邪魔者が消えたので、美濃尾張から京への道の安定度は増した。淡海(琵琶湖)の交通も支配できているし、陸路も整備を進めている。
これを利用して畿内でも武威を示していかなければならないだろう。
逆側では武田が先代の死から息を吹き返しつつある。
徳川はボロ負けの後で余裕はない。織田が中心となって当たらなければならないだろう。
越前も放置しておくわけにはいかない。
内側の輸送力の強化は各方面を転戦するために役に立つ。
やるべきことはまだまだあった。
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