大怪盗ビッグディックとトリコ・チンコール城の秘宝
そーそー
序章:大怪盗参上!
「俺、大怪盗になる!」
「はい?」
珍妙な姿をした男が同級生にそう言い放った。彼は身長132cm。高校の同級生の間では明らかに低身長であり、そのことでいじめを受け、租チンや低身長などと悪辣な言葉を日常的にかけられていた。
要するに彼のコンプレックスである。
そしてそのことに腹を立てた彼は......
「俺は租チンじゃない!」
と憤怒し、女子に対して様々な嫌がらせを行うことを決意する。
......そう、彼はそんなにおつむがよくない。
その結果女子に徐々に嫌われていき、結果彼の周りには誰も寄り付かなくなってしまった。それでも何とかして承認欲求を満たしたい彼はスマホを用いた女子更衣室の盗撮を敢行する。
彼なりに計画を立て、彼なりにばれない方法でスマホを設置し、女子更衣室を盗撮した。
そして見事に成功してしまったのである。しかし、彼は大きなミスを犯してしまう。
......幼馴染の同級生の女子生徒に自慢したのだ。
そして、見事に先生に言いつけられ三者面談ののち、形式上自主退学という形で高校を去った。それが約一年前の事である。その後何の職にも着けずに親のすねをかじり倒した彼は、このままではいけないと一念発起した。
絵が下手とわかっていてマンガ大賞に応募したり、活字なんて漫画以外読まないのにライトノベルの大賞に応募したり。
むろん無謀な試みはすべて失敗したわけだがそれでも彼は諦めない。
彼の唯一の取り柄はその諦めの悪さであろう。
......まあ諦めが悪くても無能は無能なのだが。
そんなある日、探偵ものの漫画を読んでいて、あるキャラが目に留まる。そのキャラというのは自らを怪盗と名乗り、様々なお宝を盗んで回り、貧しい人に分け与えるというテンプレートな義賊キャラであった。
そのキャラにすっかり感化されてしまった彼は、まず美容院に行った。髪を金髪に染めてもらうためである。さらに親からのお小遣いで色や形はバラバラながらマントや服を買い、おじいちゃんの杖を持ってこう叫んだ。
「俺は“大怪盗ビッグディック”だ!」
ここに世間を(悪い意味で)騒がせ、貧しい人に(何の得にもならない)贈り物をする。怪盗の上に“大”をつける彼の人生を象徴する事象義賊が誕生した。
そして冒頭の同級生の女の子へと話しは戻る。
ちなみにこの女の子はビッグディックの同級生にして幼馴染である。
......つまり、彼が盗撮自慢をした女の子である。
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