言い訳と幸福の散文

@rain4

言い訳と幸福の散文

花火大会には行ったことがない。

一緒に行く友達がいなかったんじゃない。行くきっかけがなかったんだ、と思っていた。

小学生の頃は、たくさん友達がいたはずなんだ。男友達の方が多かった。女子とも喋ってはいたけど、自分は女子との絡みは向いてなかった。まあ、かといって男子の暴言吐きあうみたいなノリも好きじゃなかった。友達は多かったけど、ずっと一緒にいるいつメン?とか言うのもいなかった。考えてみればいつも一匹狼だったのかもしれない。そうだ、私はいつでもブレない性格だったんだ。

中学の時も友達はいた。中学の頃は好き勝手に言いたいこと言ってたし、違う小学校から上がってきた性格のキツい人達には陰でなにか言われてたのかもしれないけど、それは分からない。小学生の時も何か陰で言われてたのかもしれないけど、それも分からない。私はいつも自分に自信があった。部活はテニス部だった。でも練習がキツくて、私は最初は真面目にやってたけど、みんなサボりがちになった頃に私も休んだ。そしたら私だけ怒られた。いつも真面目だったからなのか、分からないけど凄く腹が立った。一人の先輩は私の日頃の行いを褒めてくれたけど、褒めてくれたのはその先輩だけだったから、嫌になって中2の7月で部活は辞めた。その先輩の名前はもう忘れたけど、県内で1番の高校に進学したのは覚えている。

私立の超名門女子高校に進学すると、友達がたくさん出来た。私はノリがいいとも言われていた。でも、途中でノリについていけなくなった。何故か分からないけど、それは段々と始まった。声を出すのが面倒くさかった。友達と表面的に話していたかった。だから私は高校1年と2年の間はずっと、わざとかもしれないくらいに黙り込んでた。人の目を見るのが嫌になった。これは前からだけど、以前にも増して先生が嫌いになった。好きな先生もいたけど、先生という立場が本当に嫌いだった。前は凄く仲がよかった友達も、ノリの悪くなった私に気づいていたと思う。最初のうちはよく話しかけてくれはしたけど、そのうち話しかけてくることもなくなって、気まづくなった。頑張ってそれまでの元気を取り戻したテンションにしようと思ったけど、自分でも無理だった。変に空回りして、余計にノリがおかしい人になってしまった。

入学してから部活は手芸部に入った。手芸をしてる時は友達のNとよく話した。同じ部活にはCかいて、CはNをいじめていた。だから私はCに対して言い返したりした。私はNを助けていたつもりだった、そういう自分に酔っていたのかもしれない。私はこの頃、哲学のまがい物を自分の頭の中で考えていた。だからNに生きる価値があるかとか、Nは何も無い人間なのではないかとか、今考えれば相当失礼なことを投げかけて話し合おうとしていた。でもNは私の考えていることを分からなかったから、悪口を言われていると思って、縁が切れた。何となく気まずくなった。気まずかったけど部活は辞めなかった。思えばNと関わりだしてから気分がおかしくなった気がする。Nは極端に自分に自信がなかった。私もNと話していて自分に自信がなくなっていった。

高2私はずっと暗い性格で、仲良くなったSにも愛想をつかれている気がした。その子は、その子で、1人ヤバイ友達がいて、その子に手を焼いていた。そのヤバイ友達はいわゆる友達に対して独占欲が強い病んでる子だった。私2年になってSと仲良くなり始めた時、物凄く話を妨害されたし、頑張ってSを私から引き剥がそうとしているのは一目瞭然だった。私は喧嘩早い性格だったから、負けじとヤバイ友達の悪行をSと話して、Sとの仲を強めようとした。Sもヤバイ友達の話をしていて、ストレス発散しているようだった。でも、私が私の暗い性格を見せると、余り話を聞いてくれなかった。でもその気持ちは分かる、暗い性格の人の話は聞く気が失せるのはとても分かる。だからSには申し訳ないことをしたと思っている。

私は中学高校と、「本当の友達」が欲しかった。私にとってSも本当の友達ではなかった。



…と、高3の6月まで、ずっとこういうことを考えていた。



高3になってから本当の友達ができた。卒業しても時々遊びたいと思う友達ができた。中学で部活が同じだったAだった。Aも私のように若干暗い性格になっていた。昔から周りのことをよく考えて気を揉む性格の子ではあったから、高3になるまでにも何かあったのだろう、私と話していて暗い側面をよく見せてくれたから、私も話しやすかった。

そして、6月にRも仲良くなった。Rは自由奔放な性格で、お金持ちで、色白で、とても変わっているけど、話しやすくて憎めなかった。私は大学受験のために予備校に入った。現代文と英語を取っていた。現代文の授業を初めて受けに行った時、高そうなお洒落なカバンを持った色白の子が教室に入ってきた。Rだと確信した。授業が終わって、声をかけたら、相手も驚いていて、それから仲良くなった。毎週一緒に予備校に行った。途中の電車で沢山話したし、授業が始まるまでも、問題集を開きながらずったくっちゃべっていた。

Rと中が良かったMとも仲良くなった。Mは凄く物静かであまり話さないけど、変わってて面白い。ギャクセンもちょっとあって面白い。

高3の間は4人で過ごすことが多かった。まだ私は暗い性格だったけど、卒業すれば何か、そういう暗いしがらみから解放される気がして、高校の悪口をずっと言いながら早く大学生になりたいと言っていた。そう言っている内に、高校を卒業した。

私は第1志望に合格して、関西に下宿することになった。Rも第1志望に合格して、地元の大学に通うことになった。AとMは同じ大学に入学したが、Aにとっては第1志望ではない大学だった。



大学に入って、周りの人達の社交性に驚いた。私には無いものだった。でも、親や友達もいないから、自分も慎重ながらも順調に大学生活を初めて、気づけばとても楽しい。Rも順調そうで、頻繁にLINEで連絡をしている。Rの順風満帆ぶりを聞いていると、こちらも幸せになる。Mはもとより連絡がつきにくい人だが、Aと連絡がつかないのは珍しかった。だが、もう今は連絡がつかない方が普通になってしまった。

大学生になって、段々と「本当の自分」を取り戻している気がした。「本当の自分」が何かと言われたら分からないが、少なくとも、自分の罪を認めることが出来て、人の話を噛み付かずに聞くことが出来る自分だ。自分の過去の悪行を認めることが出来なくて、でもそうやって自分の罪を認められない自分を嫌いになる、そういうことが無くなった。悪いものは悪い、良いものは良い、と分かるようになった。なぜ自分はこんなにも暗い時間を過ごしていたのかと思った。そして気がついた。自分に合わない環境にいたことが最大の原因だと。環境のせいにして自分の行いを正当化するわけではない。悪い環境にいても、悪行をしてしまうか、しないかは、自分次第である。しかし、自分の合わない環境下にいると、人間はダメになるというのは真実だと思う。そこで、その環境から逃げ出すことが、自分をダメにしない唯一の方法だと思った。私が今、自分のやってしまったことを認められるのは、自分が満足できる環境にいるからだ思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

言い訳と幸福の散文 @rain4

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る