7「遺跡の守護者と鉄の巨人」

 遺跡の守護者、ゴールドラグは、乗り込んでの操縦は可能であるが、

自立起動も可能な魔機神である。

見た目は全高60m程で全身金色のボディをしている人型機動兵器の様、

元は銀だったが、魔機神となった際に変化したと記録が残っている。

名前は、変化後に付けられたらしい。なお巨体であるが、

都市のある空間は広大なので、周りと比べるとそんなに大きくは見えない。


 頭部はドラゴンのような形状、背中には戦闘機の様な羽、

肩にはキャノン砲のようなものがある。

手は人の手に近い形をしているが、すべての指の先に穴があって

それが砲門になって、弾を発射しそうにあった。

胸は見るからに、丈夫そうな装甲だが、開いて武器が出てきそうでもある。


 胸元には宝玉の様な物があり、更に腹の当りには、砲門の様な物がある。

そして下半身ガッチリとしていて、膝の部分にも砲門の様な物。

太く丈夫そうな尻尾も付いている。


 そして特に胸元の宝玉は特徴的で、色は青。

元は赤い、レッドクリスタルで、これも魔機神と化した時に、青く変化したという。


 この地の守護を命じられ、かつてのアトラナと同じく。

主人亡きあとも、長い年月、この地を守り続けている。

魔機神関連の書物や、ゴールドラドにまつわる言い伝えでは、

高い戦闘力を持つと言われている。


 さてゴールドラグを見た達也の第一印象は、


(なんだか、趣味悪いな……)


全身金色で、胸元の宝玉が宝石に見えて、

成金趣味のように思えたからだ。

もちろん金色なの魔機神化によるものであった。

意図的なものではないのは知っているのであるが。


 さてゴールドラグがやって来たのは、

達也たちを侵入者とみなして、攻撃するためである。

そして、達也は敵意を感じたので、思わず身構えるし、

こんなものがやって来るわけだから、レナも身構えずにはいられない。


 そしてアルテーアは、既に手にしていた鍵を空に掲げる。

やって来たゴールドラグは動きを止めた。

こうする事で、攻撃を停止させる事ができるという。

なお古文書だけでなく、伝承としても伝わっているので知っている人は多い。


「これで良し」


この後、達也もアルテーアもリモコンで自分たちの車を呼び寄せる。

なお古文書にも書いてあったが、伝承で伝えられた話によると、

魔機神やそれに類するもの、恐らくはカーマキシも含まれると思われるが、

接触時に、それらに乗った状態だと、例え鍵を出したとしても、

攻撃を止めないという。


 一度止めてしまえば、後は乗っていても関係ないので、

ここからは車の移動となる。目的地まで距離があるからだ。

なお目的地は、街の奥にある迷宮。そこは地下都市よりもずっと後、

宝を隠匿した王子が、作った物。


 とにかく目的地を目指すわけだが、まだ安心はできない。

そもそも、鍵で止められるならカオスセイバーを用意しておく必要はない。

実は、鍵を持っていたとしても戦う可能性が残っているのである。


 とにかく何かが起きる前に迷宮に辿り着かなければいけない。

二台の車は迷宮に向かって地下都市を進んで行く。

ただもしもの事態を考え、ここからレナはアルテーアの車に乗りの助手席に座った。

そしてしばらくは、順調に進んでいた。

ここを乗り切れば、一段落。ただアルテーアによると、この先も大変な状況だし、

帰りも、ゴールドラグとの戦闘の可能性が合った。


 しかし順調さは長くは続かなかった。


「!」


突然背後に気配を感じた達也は、車を停めた。

振り返ると、そこには巨大ロボがあった。

同じように状況に気づいたアルテーアも車を停めていて、

窓から顔を出していた。同じように顔を出していたレナは、


「あれは、カジノを襲ったマキシ!」


それは、カジノを襲っていた鉄の巨人だった。

以前に比べて、剝き出しになっている部分はなく。完成品と言う感じだ。


 なお達也は、腕しか見ていなかったので直ぐには気づかなかったが、気配から、


「あれにはレイカールトが乗っている!」


と声を上げた。するとロボから、彼女のスピーカー越しの声が聞こえてきた。


「カジノ以来ね。お嬢さん」


と達也の事を女だと思っているようである。


「そして、ご苦労だったわね。アルテーア」


と言ったのでアルテーアは、


「どういう事よ!」


と怒号を上げる。


「貴女は私たちをこの地に案内していたのよ」


と言い出した。


「はぁ?」


訳が分からないと言った様子のアルテーア。


 それ以前にロボがここに現れたことも疑問だった。

唐突に表れたのだから、転移によるものには違いないが、

転移は、使用者が一度、実際に行った場所にしか行けない。

この地下都市は、鍵だけでなく場所さえも長年にわたって、隠匿されていたから、

誰も入っていない筈で、レイカールト自身だって、入れてはいないはずである。


 するとスピーカーから別の女性の声が、


「それにしてもボス、発信機に気づかないなんて、間抜けっすよね」

「バカっ!余計な事を言うな」


と言っている。その言葉に達也が反応する。


(まさか、あの気配)


具体的な場所は分からないが、もしかしたらと言う場所がある。


 達也は、疾風の型を使い素早く、車体の下に潜り込んだ。


(これだ!)


それは、鉄の小箱でランプがついていて、

魔法ではなく強力な磁石で取り付けられていた。外すのに少し力が必要だったが、

取り外す事ができた。そして、疾風の型を解きつつ、


「こんなものが……」


と言って二人に見せる。


「これは一体?」


と言うアルテーアに、


「たぶん発信機ですよ。車の下とは、何てベタな……」


ドラマとかで、車の下に発信機を付けるのを見ていたので、

当たりを付けて、確認したら案の定だった。


 達也はロボに向けて、発信機を投げつけた。巨人に当たった発信機は

破壊され、達也は、


「レナさん、アルテーアさん。早く出発してください。ここは僕が抑えますから」


と促した。


「わかったわ」


アルテーアは急いで、運転席に戻った。レナは達也の方を一瞥しつつも、


「気を付けてね」


といって助手席に乗り、アルテーア達の車は発進した。


 達也は、素早く自分の車に乗り込んだ。因みに向こうは、

発信機を投げつけた時点で、スピーカー越しに、


「しまった!」


と言うレイカールトの声や、同じく彼女の声で、


「スヴィ!お前が余計な事を言うから!」

「ごめ~ん~奥様~」


と部下と思える女性の間の抜けた声がしたかと思うと


「私はまだ独身だ!」


と言うレイカールトの怒号も聞こえて来る。


「レイカールトさん!ここで暴れないで!」


と言う少年の声。


 滑稽さを感じるやり取りだが、

なおこんな事をしている間に、アルテーア達は車を発進させていた。


「あっ、待て!」


という声が聞こえて来るが、この時、タツヤは車に乗り込み、


「行かせない」


と言うと、車形態から本来の魔機神の姿になる。


 すると向こうから少年の声で


「車が、アドニヴァリスに?」

「なんだそれは、アレはカオスセイバー、最弱のマキシよ。

まさかこんなとこで出くわすなんて」

「そのカオスセイバーは、アドニヴァリスを基にしてるんですよ。

最弱とはね。まあアドニヴァリスは量産機で、強くないですけどね。

元にしているだけはあるって事か」


とどこかバカにしたように言う。


 この後は、スピーカーを切ったのか声を聞こえてこなかったが、


(移動した……)


ロボからは四人の気配がしていた。女性三人に、少年が一人。

ただ女性三人の気配が瞬時に別の場所に、移動した。

恐らくは転移したと思われる。


 そして巨人の中には、今は少年一人となった。

さっきカオスセイバーの元になったとされるロボの事を話していたので、

少年がテクノスガイアからの異界人の可能性があった。


(この子は良い人なんだけど……)


そんな事を思っていると、再びロボからスピーカー越しに声がする。


「カオスセイバーのパイロット、聞こえてるかな?」


相手は返事を確認せずに、自信満々に言う。


「僕の作ったメガザンソは、小柄だけど侮るなよ。

ゴールドラグとやり合うだけの力はあるんだから」


見た目は特に飾り気のないのっぺりとした鉄の巨人と言う感じ。

小柄とは言っているが、カオスセイバーと同じくらいの大きさはある。


 カオスセイバーとロボ、改めメガザンソは対峙する。

しかし達也の注意は、先に行ったレナとアルテーアにあった。

この先の道中が大変になるであろうことは、話で聞いていたし、

それにレイカールトの事もあった。


 なぜなら、彼女たちの転移先は、

丁度レナ達が向かっている迷宮付近だったからだ。


(まあレナさんがいるから、大丈夫とはおもうけど)


それでも気になる事であった。


 加えてもう一つ気になる事があった。

それはゴールドラグである。鍵の力か、今はまだ動いていないが


(アルテーアさんの話じゃ、この場で何かがあった場合、

それが自然現象であっても、

ゴールドラグは再び僕らを敵と認識するんだよね)


その時は、鍵でも止められないという。

だからこそ、カオスセイバーの力がいるわけだが。


 そしてメガザンソとの戦闘が「何か」となる可能性がある。


(巻き込まないだろうか……)


戦いが激しくなって、レナ達を巻き込むのではないか。

目の前にいる敵の事よりも、今の達也はそっちの方が心配なのであった。

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