第31話 新たな芽生

~ギルドにて~


・サリス

「あら、お帰りなさい。」


サリスさんが奥の部屋から出てくる所だった。


・サリス

「明日からダンジョンに行くじゃない?ミズチの討伐期間はダンジョンから戻ってきてから一ヶ月でお願いね。」


・「えっと、、、」


・サリス

「ミズチは湖の中の魔物よ。討伐方法は水を飲みに来たリトルボアなどの獲物を狩る時に討ち取るのが主流なの、先程は討伐方法を教えなくてごめんなさいね、下見ついでに湖畔を見て来てから教えようと思いましてね。最近はライオットさんには驚かされてばかりだし、たまには困る貴方の姿を見てみたかったし。」


それはどうかと思いますが。

とりあえず今は真実を伝えねば。


・マルチ

「サリス、終わった。」


・サリス

「マルチもごめんなさいね。でもライオットさんとの湖畔での散歩は楽しめたんじゃないかしら?」


・マルチ

「だから、討伐終わった。」


・サリス

「はい?」


・「えっと、ミズチ10体討伐終わりました」


・サリス

「嘘でしょ?依頼を受けて当日に10体のミズチを狩って来るなんて聞いた事ないわよ!本当なの?」


俺はミズキの背ヒレを取り出してみせる。

その数18枚。


・サリス

「ほ、本当に倒して来たのね。はぁ、ライオットさんにまた驚かされちゃった。

貴方はいつも想定の斜め上を行く人ね。いいわ、貴方達は今からランク5の冒険者よ。約束はランク3だったけど、これ程の成果をあげたんだから当然よね。

ランク5昇格おめでとう、2人のギルドカードは更新するから預かるわね。」


俺達はギルドカードを預けて工房に素材を売りに行った。


・サリス

「ライオットさんも、マルチも、本当に急成長したわね。飲料水の依頼が溜まりにたまってるんだけどどうしましょう?マルチやってくれるかしら?」


軍の評判から飲料水の依頼をしてくる貴族達が急増し心底困っているギルド。とりあえずは軍との衝突を理由に一時的に飲料水の販売を停止して凌いでいるがそれも時間の問題だった。


・サリス

「ふぅ〜、マルチはライオットさんにべったりだし。セリス、うかうかしてられないわよ?」


ギルドの運営に妹の恋事情、サリスは前途多難の問題を抱えてため息を漏らす


・サリス

「考えても仕方ないか、とりあえず出来る事から始めましょう。まずはダンジョンに行く前にギルドの仕事を終わらせておきますか。」


気持ちを切り替えて仕事に戻る。

まさに総務の鏡の様なサリスであった。



~工房にて~


・ミミ

「あっ、マルチにライオット!ちわわ〜っ、何か用かな?」


・「まだミミさんの時間でしたね。今日はミズチの討伐報酬と素材の買取をお願いしに来ました。」


・ミミ

「ほほぅ、ミズチとな?中々レアな魔物を狩ったね〜。この時期はミズチも余り陸地の獲物を狙わないから素材が枯渇してるんだよ!だから、高く買い取れまっす。

では、素材を拝見させて頂きますね。」


おぉぅ、ミミさん。

後半最後だけ受付嬢っぽい仕事でしたね。


・「えっと、とりあえず討伐の印。

後は素材になりそうな物を持ってきました」


俺は素材をドンドン置いていく。

途中からカウンターではなく奥に案内されてそこで素材を出すことになった。まさかこんなにも仕留めてくるとは思ってなかったミミさんに驚かれた。


・ミミ

「うほぉ!凄いね、マルチもライオットも凄いんだね。ダンジョンに行く時は頼りにしてるからね!

では、、、、、

素材の確認を致します。

背ビレ 18枚

ミズチの逆鱗 36枚

ミズチの毒袋 18袋

ミズチの跳びヒレ 36枚

ミズチの核玉 2個

他の使えない部位は如何致しましょう?

と言っても毒袋の繊維のみとなります。

とても良い解体をしましたね。

こちらで処分しても宜しいですか?」


ミミさんの変わり身が職人すぎる、、、


・「処分の方よろしくお願いします。後ミズチの食用の部分を持って来たのですが、そちらの方も買取をお願いします。」


・ミミ

「食用ですか?

、、、、、、じゅるり。」


・「はい、もうじき届くはずです。」


じゅるりって言った。

ミズチの肉って美味しいのかな?

工房に荷場所が着いて肉が運ばれてくる。


・仮面の男

「ライオット様、ミズチの肉をお持ち致しました。こちらの報酬は既に引いてありますのでこれらの肉は全てライオット様の物となります。」


隠密三人衆の仲間の人が来てくれた。

実はミズチの肉を焼き払おうとした時に隠密三人衆に止められたのだ。そして半分の肉を上げる替わりに運搬や解体をやってもらう事になったのだ。


・「ありがとう、所でミズキさんや他の2人は?ちゃんとお礼が言いたいんだけど。」


・仮面の男

「あの3人は秘技を習得しにいくと言い残し湖に残りました。秘技とは一体、、、、はっ!失礼しました。マルチ様の護衛は既に別の者がやっておりますのでご安心下さい、では私はこれにて」


そして目の前で消える隠密の人。

あの技って一体どうやってるんだ?


・「マップオープン」


ふむ、マーカーはこの地点にある。

あ、動き出した。

この場で何かしらをしてから移動してるんだな。

隠密、、、奥深い。

そして秘技に囚われ過ぎ。


・マルチ

「ねぇ、ライオット。肉全部売っちゃう?」


・「いや、俺達の屋敷に幾らか運んで貰ったから、売るのは4体分だけだよ。残りの4体は家の食卓に並ぶだろうね。」


・マルチ

「ホント?やったぁ!ライオット大好き!」


・ミミ

「ホント?うっほほーぃ!ライオット大好き!」


本当に肉好きだなこの2人。

ミミさん、業務忘れてますよ?


・ミミ

「オホン、、、、失礼しました。

では精算いたします、今回は解体がとても上手でしたのでそのままのお値段での取引となります。尚この時期のミズチ素材は貴重品となりますので、加算して買い取らせて頂きます。

背ビレ 1枚200c × 18枚 = 3600

ミズチの逆鱗 1枚250 × 18枚 = 4500

ミズチの毒袋 1袋 150 × 18袋 = 2200

ミズチの跳びヒレ 1枚 100 × 36枚 = 3600

ミズチの核玉 1個 1000 × 2個 = 2000

ミズチの肉 1体 5000 × 4体 = 20000

合計 35900c となります。

取り引きなさいますか?」


凄い金額になったんですが、、、、

時期外れの獲物は狙い目だな。


・ライオット

「お願いします。」


・ミミ

「ではお待ち下さい。」


ミミさんが奥にお金を取りに行った。

大金は受付に置いてないんだね。

まあ当然か、ミミさんちょくちょく居なくなるみたいだし、大金を置いたままにはしてられないよな。


・マルチ

「ライオット、ライオット。

私、自分の仕事して来ていい?」


・「勿論だよ、何なら俺も手伝おうか?」


・マルチ

「ホント?嬉しい、終わったら一緒に帰ろ?」


・「そうだね、一緒に帰ろう。」


・マルチ

「ん〜、幸せ。ササっと終わらさて帰ろっ!

1人じゃないって幸せだね。」


・「じゃあお金を受け取ったらそっちに行くよ、先にやってて。」


・マルチ

「わかったぁぁ!」


嬉しそうに仕事部屋に走って行くマルチ。

素直で可愛い子だな。


・ミミ

「お待たせしました、こちら36000となります。端数はめんど、、、いえ、サービスで切り上げにしましたのでお受け取りください。」


今、完全に面倒って言ったよね?


・「んじゃ、はい、ミミさんの分。」


・ミミ

「へっ?」


・「金貨?3枚と銀貨6枚だと2人で分け難いでしょう?俺も面倒なのは嫌だし、てな訳で日頃頑張ってるミミさんにチップとして金貨1枚を贈呈します。どうか受け取って下さい。」


・ミミ

「そんな駄目ですよ、金貨1枚って大金ですよ?お肉が沢山食べれちゃいますよ?受け取れません。」


お肉換算するあたりがミミさんだな。

そう言うところがちょっと可愛い。


・サリーヌ

「どうしたの?なんだかずっと騒がしいけど、あらっ!ライオットちゃんじゃない。アタシに逢いに来てくれたのかしら!」


・ミミ

「違います!ライオットさんがアタシに金貨1枚を渡そうとしてきたので断っていたところです!」 


・サリーヌ

「貰ってあげなさいよ、ライオットちゃんはホントに無欲ねぇ。どうせ買いたい物が無いとか欲しい物がある人に渡した方が有効に使ってくれるって言うんでしょ?何だっけ?経済を回すにはお金を使わないと、、だっけ?よく解らないけど、ライオットちゃんが言うのなら今後何かしら起こるんじゃないかしら?ミミ、解らない時はライオットちゃんに従うのがベストよ。」


すみません、ただ面倒なだけです。

そう言えば決闘の宴の時にサリーヌさんとドンクさんに言ったな、経済を回すためにお金を使うべきだっとか。


えぇ、酔ってましたからね。

飲まされてましたからね。


・ミミ

「うぅ、じゃ、じゃあ貰っておく。

ありがとう、ライオット。

これでママにプレゼントでも買うよ。

あと、、、お肉も、、いい?」


・「ミミさんの好きな物を買って下さい。

いつも頑張ってるミミさんへのご褒美ですから。

では俺はマルチを手伝って来ますね。」


俺はマルチの元に急いだ。


・ミミ

「ねぇサリーヌ、どうしようアタシ。」


・サリーヌ

「何も言わなくていいわ、あの子ってホント自然に女の子を落とすわね。ミミの好きにしなさい。」


・ミミ

「うん、、、、ライオットなら。

ママの条件、突破出来るかな?」


・サリーヌ

「忘れてたわ、貴方のお母さんの条件。でも、ライオットちゃんなら案外いけるかも。」


・ミミ

「ライオット、、、

貴方が私の王子様?」


知らない所でライオットの試練が始まろうとしていた。ミミの母親の条件とは?ミミは降り掛かる火の粉を華麗に突破するライオットを想像して想いを馳せるのであった。



~マルチの仕事場~


・「遅くなってごめんよ〜。はい今回の報酬の半分!割り切れないお金はミミさんにあげちゃった、ごめんよ。」


俺は報酬の半分、13000cをマルチに渡す。

マルチは嬉しそうに受け取ってくれた。


・マルチ

「ありがとう、ライオット。

これだけあれば十分。

お金よりライオットと冒険出来る方が楽しいし。

あ、仕事なんだけど明日からダンジョンに行くからさ、出来るだけやって置きたいんだ。『癒しの鼓動』お願いしていい?」


・「勿論だよ!じゃあ鼓動を掛けつつやっちゃおう。樽はこれで全部?」


俺は目の前にある水樽9個を見詰める。


・マルチ

「奥にある樽にも全部飲料水を入れて行こうと思ってる、いけるかな?」


奥には20個前後の樽が置いてある。

すげぇ量、、、いけるかな?


・「やれるだけやってみようか。

癒しの鼓動フル活用で行こう。

最初から全開で行くぜ!」


それから俺とマルチは樽に水を精製しまくった。癒しの鼓動の度に色っぽい声を上げるマルチに背徳感を感じつつ、2時間ほどで全ての樽に水を精製する事が出来た。


・マルチ

「ふぅ、、、、終わった。」 


・「終わったね、、、凄い量だった。普通の水じゃなく飲料水を作るって工程だったから時間と魔力が掛かるね。」


・マルチ

「そうね、でも終わった。

いつもありがとうライオット!

それじゃ一緒に帰ろう?」


・「そうだな、帰って飯にしよう。」


・セリス

「そうだな飯だ飯、さっさと帰ろう。」


いつの間にかセリスが合流していた。

凄い自然に入って来たな。

ちょっと驚いたぞ。


・マルチ

「ぶぅ〜、セリスは仕事しなきゃだよ?」


・セリス

「残念終わりました、最近マルチばっかり卑怯だ!


アタシもライオットとレベル上げしてぇ。」


・「セリスと一緒だと俺のレベル上がらないぞ?能力差がありすぎるからね、強すぎるってのも考えものだな。」


・セリス

「くっ、、、早く強くなれ、ライオット。

アタシも一緒に楽しみたい。

書類整理はもう懲り懲りだ!」


あらあら結構溜まってらっしゃる。

明日のダンジョンで暴走しなきゃ良いけど。


・セリス

「さあ帰るぞ!飯だ飯!」


・ミミ

「おー!お肉っお肉っミズチのお肉っ!」


結局4人で帰る事となる。

ギルドカードはセリスが持って来てくれていた。

しかしミミさん、、、いつの間に?

スッと入ってくる辺り高レベルなのを伺わせる。


うん、賑やかでいいね。

ミミさんとマルチがミズチのお肉で意気投合して2人で謎の歌を歌っている。セリスは俺に明日の話をしていた。

明日からはダンジョンだ。

俺もちょっと楽しみです!

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