第27話 決着

・サリーヌ

「あれは風属性の加工?いえ加工とは少し違う感じだわ。あんな風に武器を破壊するなんてあの子、本当に凄いわ。」


・ドンク

「流石ライオットだ、良いかニュート。

一瞬も見逃すなよ?」


・ニュートと呼ばれた少年

「わかってる、ライ兄本当にすげぇ」


魔装術での武器破壊は上手くいったな。

これって人にやったら絶対に死ぬよな?

危ねぇ、、、

危うくハンダに叩き込むところだったわ。

先に武器破壊して正解だった。


・ハンダ

「き、貴様、俺の鬼殺しに何しやがった!

もう、殺す、殺してやる!」


完全に怒り狂ったハンダが腰の剣を抜いて攻撃してくる。


・「さてどうするかな、って考えてる隙ねぇよ。めっちゃ斬撃がはぇぇ、やべぇやべぇ。」


俺は相変わらず無様に逃げ回る、ハンダは頭に血が登っているせいか単調な攻撃しかして来ない。そのおかげでライオットは避けていられる。


・「コイツが冷静さを取り戻したら負ける可能性が高い。いや、負けると言うか俺が死ぬ、なんだかんだで強いなコイツ。

ん~、どうするかなぁ。」



時間は少し遡る。

鬼殺し破壊の少し前の場面。


マルチ対タスラー


・マルチ

「見ていればわかる」


・タスラー

「ふん、見なくても分かる。

すぐにハンダが血祭にあげるわ!

こっちもさっさとケリをつけるぞ。」


・マルチ

「私が見てたかった。

まあいい、タスラー教官。

いえタスラー。

掛かってきなさい。」


・タスラー

「半エルフの分際で私を呼び捨てにするとは万死に値するぞ。後悔しながら焼け死ぬが良い!」


タスラーの魔力が高まり火の球が大量に現れる


・タスラー

「ふっ、この魔法大使タスラーの火球。

存分に味わうが良い!」


大量の火の玉がマルチを襲う。

マルチは驚愕していた、、、

ライオットの特訓メニューを思い出して。


・マルチ

「、、、、ライオット。

貴方はこうなると読んでいたの?

だからセリスの氷の玉を撃ち抜く特訓をしたの?

貴方は、、、、どこまで、、、」


マルチは水の玉を一つ精製し凝縮。

そこから多数の水の弾丸を発射。

一気に全ての火の玉を貫き撃ち抜く。


・タスラー

「ば、、、馬鹿な。

我が炎が、、、水属性如きに。」


・マルチ

「タスラー、貴方は視野が狭すぎる。

水属性の可能性を見詰める事をしないで己の属性以外を無能と罵った、何が魔法大使よ!ふざけないでっ!」


マルチが叫ぶ。


・タスラー

「うるさい!たかが水属性如きに何を言われても我が心には何も響かんわ!良かろう、そんなに死にたいのなら我が全魔力にて貴様を消炭にしてやる」


ドパァァァァン


・タスラー

「むっ?な、なんだ?」


・マルチ

「ライオット?」


2人が音のなった方を見る。

すると先程ハンダが持っていたハンマーが粉々になって切り粉が中を舞っていた。


・タスラー

「な、何が起こった?」


・マルチ

「ライオット?、、、凄いわ。」


少しの間ハンダとライオットのやり取りを見ているマルチ。ハンダが剣を抜きライオットに斬りかかる。

思わずライオットの元に行こうとするが。


・タスラー

「何処に行こうと言うのかね?

マーダー君、、、君は私を怒らせた。

覚悟は良いかね?」


巨大な火の玉がタスラーの頭上に現れる

今度はハンダがその玉に気付き動きを止める。


・ハンダ

「へっへっへ、タスラー隊長が本気になったな。

ありゃ可哀想だが消し炭になるな、勿体無いけど仕方ねぇ。おぅ、折角だからお前も見ておけよ、それとも一緒に消し炭になりに行くか?」


・「へぇ、待ってくれるのか?

中々優しいんだな。

じゃあ、お言葉に甘えて一緒に見るか。」


・ハンダ

「お前、意外と人でなしだな?

それともビビっちまったか?」


なんとでも言え、マルチならあれくらい簡単に消し飛ばすだろう。その間に俺はお前を倒す戦略を考えなきゃいけないんだよ!

ハンダが冷静になりやがったのなら何か策を練らなきゃ確実に負ける。


・タスラー

「貴様を殺す為の火球が出来上がったぞ。

何か言い残す事はあるか?」


・マルチ

「さっさと来ればいい、貴方が馬鹿にした水属性の可能性を見せてあげる。」


・タスラー

「小娘が、、、ならば、死ねぇ!」


火球がマルチに迫り来る。

周りの兵士やライルさんが慌て出す。

リーシュさんやギルドの職人さん達が飛び出そうとしているがセリスが抑えている。

俺は、何となく体操座りで眺めていた。


・ハンダ

「確実に、、、死んだな。

次はお前の番ってなに座ってるんだ?」


・「え?だって立ってるの疲れたから。」


ハンダは呆れてなにも言えない。

きっと、コイツは馬鹿なんだ。

そして考えるのを辞めた。

タスラーの魔法を見ようと決めたのだ。


ライオットはその瞬間を見逃さなかった。

ハンダの靴に少量の魔力を飛ばす。

そして靴に魔力を忍ばせた。


・「さてマルチ、どう乗り切るか見せて貰うよ。」


火球は尚もマルチに迫る、マルチは火球を避ける為に距離を取りコースから外れてみる。しかし火球はマルチを追ってくる。


・タスラー

「無駄だ!この火球はどこまでもお前を追い掛ける。そう、死ぬまでなぁ!」


・マルチ

「ふ〜ん。遠隔操作が出来るのね。

伊達に魔法大使を名乗っているだけある。」


・タスラー

「今更命乞いをしようとも無駄だ!

ワシを馬鹿にした事を後悔しながら死んでいけ」


マルチは思案する。


この火球凄い遅い、こんなの実戦で使える?

確かに威力は凄そう、でもほとんど動かない敵にしか使えない気がする。それなのにタスラーは既に勝った気でいるからスキだらけだし、倒し方が沢山あって迷っちゃう、どうしようかなぁ。


少しライオットに似てきたマルチだった。


・タスラー

「さあ、逃げろ!逃げ回れ!」


楽しそうなタスラー。


・サリーヌ

「セリスちゃん、もうアタシ限界よ!

マーダーを助けに行かせて。

ライオットちゃんは何をして、、、って

ライオットちゃん!

なに地面に落書きなんてしてるのよ〜!」


・セリス

「まあ落ち着け、ライオットが慌ててないなら大丈夫だ。本当に危険だと感じたら自分を犠牲にしてでも護りに行くのがライオットだ。

アイツが動いていないのなら安心していい。」


・サリーヌ

「でも、、、、」


・セリス

「まあ見てな」


マルチは考える。

このまま避けていれば相手の魔力枯渇で勝つ、タスラー本体を攻撃して気を失わせれば魔法は飛散して消えて勝つ、魔力枯渇近くでヘロヘロのタスラーを火球に投げ込んでも勝つ、そのまま物理攻撃に行っても普通に勝つ。

どうしよう、勝つイメージがいっぱい。


・タスラー

「どうした、、、、はぁはぁ。

に、逃げるだけか!、、、はぁはぁ。」


・マルチ

「考えても仕方ない。

そろそろ決めてあげる」


マルチは立ち止まり火球が来るのを待つ。


・タスラー

「やっと、、、諦めたか!

ぜぇぜぇ、、、終わりだ、、、。」


火球がマルチに迫ってくる。

タスラーが笑う。

ハンダがにやける。

ライオットは相変わらず地面に落書きしながら頭を捻って何かをしている。


そして、、、


『スプラッシュ・カノン』


シュン、シュン、シュン、シュン


4発もの水魔法が一瞬にして火球を消し去る。

火球を貫通し尚も飛んでいく水の大砲を観客席に当たる直前に霧に変え魔力を消す事で消滅させる。


・タスラー

「な、、、何が起こった?」


・マルチ

「タスラー、全魔力と言いながら意識を残しているとはね、魔力枯渇まで魔力を使わないとはどう言う事?」


いつか、、、

ギルドでタスラーに言われた事を言い返すマルチ。

渾身のドヤ顔でタスラーを見る。


・タスラー

「く、、、おのれ、、、」


・マルチ

「降参する?まだ続ける?」


・タスラー

「ハンダ、何をやっている。

早くそいつを倒してこっちに来い。」


膝をガクガクさせながら叫ぶタスラー。

マルチはとりあえず様子を見る。


・ハンダ

「はっ、了解!何が起こったかは分からんが消し炭にならなくて良かったな。俺も後の楽しみが増えたってもんだ。」


・「よし、これで完了!

何でもやってみるもんだな。」


・ハンダ

「お前、、、俺の話聞いてた?」


・「何を?」


ハンダの顔がみるみる赤くなる。

どうやらライオットの態度にキレたようだ。


・ハンダ

「クソがぁ、死ねぇ!」


ライオットはバックステップを踏む、ハンダを先程ライオットが座っていた場所まで誘導する。


・「今回は2段階だ、2手で決める。」


ライオットが逃げる速度をあげる。

ハンダが全力でダッシュしようとした。

その時、


・「ここだ、炸裂!」


ハンダの靴に仕込んで置いた魔力を爆破する。

少量の魔力の為、爆発は非常に小さなものだが爆風を踵の裏ではなく後ろから噴射させる。すると、まるでバナナを踏んでコケるコントの様に盛大にすっ転ぶ。


・「もいっちょ、炸裂!」


更にハンダが転けて地面に当たる瞬間。

先程地面に細工していた魔力を爆破する。

コケる衝撃と地面から来る衝撃でダメージが何倍にも膨れ上がる、そしてハンダの意識は飛んだ。


・「よし、成功!」


観客席が爆笑の渦に巻き込まれる。はたから見ればハンダが勝手に転び派手に体を打ちつけて失神した、そう見えたからだ。


・セリス

「なんだ?あいつ盛大に自爆したぞ!」


セリスでも気付けない程の巧妙な罠。


・サリーヌ

「ライオットちゃん、、、

貴方、、、とんでもないわ。」


しかし分かる人には神技に映る。

物に魔力を留める事は出来るが地面に留め続ける事は不可能だと思われていた。

だが、ライオットはやってのけた。

高等技術の魔法陣と呼ばれる物も直接魔力を流して初めて作用する、魔法陣自体に魔力を溜めておく事など出来なかった。

故に起爆式の魔法陣など存在しなかったのだ。


・「さて、こっちは終わったよ。」


・タスラー

「あの、馬鹿が、、、何をしとる」


・マルチ

「貴方には分からないのね。

ライオットの凄さが。」


・タスラー

「ただ逃げていただけではないか!

馬鹿馬鹿しい、ハンダ後で覚えていろ。」


・マルチ

「降参はしないの?

貴方は一度、自分自身を見つめ直しなさい。

水属性のもう一つの可能性をみせてあげる。」


・タスラー

「何を、、、」


・マルチ

「思い知れ!」


『神雷』


ズドン


・タスラー

「が、、、、これ、、は、、、」


ドサ、、、


・マルチ

「思いっきり手加減してあげたわ。

感謝しなさい。」


闘技場がざわめきに包まれる。

目の前で神の鉄槌を使う魔導師が現れた。

しかも水属性も使える。

2属性持ちだ。

皆驚きを隠せない。

ライルもまたその1人だった、、、


・「あー、ライルさ〜ん。

俺達の勝ちで良いよね?」


ライオットの一言で我にかえるライル。


・ライル

「あ?あぁ、この勝負ギルドの勝ちとする!」


・セリス

「よっしゃ〜!勝ったぜェ〜」


セリスの一言の後、ギルドのみんなが喜び出す。

マルチはいつの間にか俺の隣に来ていた。


・マルチ

「ライオット、、、ありがとう。

貴方のおかげで勝てた。」


・「いやいや、マルチの力だよ。

俺なんて逃げ回ってただけだしね。」


・マルチ

「ふふ、私に嘘ついても無駄だよ?

ぜ〜んぶ分かった。ライオットは凄いね」


・「ふふふ、はっはっはっ!」


2人は笑い合う。


『癒しの鼓動』


・マルチ

「んんんんん!

ライオット、いきなりはダメ。

ビックリしちゃう。」


・「不意打ちが最近癖になってきましてね。ついつい、、、なんかすみません。」


・セリス

「何やってんだ、またイチャイチャと!

アタシの氷塊でも食らっとくか?」


セリスが近くに来ていた。

氷塊はやめて、あれすっごく痛いんだよ?


・セリス

「2人とも凄かったな!ライオットは逃げてただけにしか見えなかったがサリーヌが驚いてたぜ?お前何したんだ?」


・「内緒、説明が面倒くさい。」


・セリス

「んだよ、教えてくれても良いだろ?」


・「何となくでやったから説明のしようが無い。」


ガシッ、、


な、何だ?

不意に何者かに掴まれる


・サリーヌ

「ライオットちゃん。

今から工房に行くわよ。

みっちりと教えて貰うんだから!」


・「えっ、嘘、マジで?

サリーヌさん?

いや、、、いやぁぁぁぁぁぁ」


ライオットはサリーヌに担がれて、

連行されて行った。


・セリス

「よし、私も!」


・サリス

「ダメよ、貴方はギルドの長として決闘の結末を見届けなさい。」


・セリス

「ぇえ〜、そんなぁ〜」


・マルチ

「では、私がライオットの所に」


・サリス

「貴方もダメです、ライオットさんが居ないんだから決闘代表者としてここに残りなさい。」


・マルチ

「えぇ〜。」


・サリス

「えぇ〜じゃないの!

2人とも残りなさい!」


・マルチ、セリス

「はぁ〜い、、、」


決闘の後始末の為、結局2人は残る事となった。

工房に連れて行かれたライオットはその後、

サリーヌにねっとりと色々聞かれたと言う。

決闘はギルドの勝利で幕を閉じた。

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