第28話 マルチの戦い

昨日の決闘がギルドの圧勝で終わり俺がギルドでサリーヌさんにねっとりと色々聞かれた次の日。俺は朝からニュートと一緒に特訓していた、ニュート自身の希望とドンクさんからお願いされたからだ。


今日の夕方からは何故か城に呼ばれている。

行くのが怖いが強制らしいので仕方がない。


ニュートとの特訓は楽しかった。

新しい発見もあったしね。

初めて逢ってからそんなに時間は経ってない筈なのに、凄い成長していて驚いた。レベルが抜かれていた事に多少のショックはあったけどね、、、多少ね。

そして夕方付近にギルドに戻って行った。


・セリス

「お帰りライオット。

丁度良かった今から城に向かうぞ。」


・「ただいま、城に行くのは俺達だけ?」


・セリス

「いや、マルチとサリスもだ。

マルチはそこで王に打ち明けるつもりだぜ。

国がどう動くか見定めなきゃな。」


・「自分を偽る事でしか居られない様な国なら出ていくよ。俺も転移者だから人のこと言えないしね。」


・セリス

「そうだったな、精霊界女王に転移者か、考えるだけですげぇなって思う。」


・マルチ

「私、女王じゃないし、別に凄くもない。

ライオットと居られれば何でも良い。」


いつの間にかマルチが後ろに立っていた。

サリスさんも一緒だ。


・サリス

「昨日の決闘後は大変だったのよ?

ライオットさんは知らないと思いますけど。」


サリスさん、言葉にトゲがあります。

何かすみません。

でもね、こちらも地獄でしたよ、、、


・マルチ

「サリス、ライオットの方も凄かったらしい。

サリーヌに色々と聞かれたみたいだし。

ドンク曰く、ねっとり感が凄かったと。」 


・サリス

「ね、、、ねっとりね。

災難だったわねライオットさん。」


・セリス

「よし、4人揃ったしそろそろ行こうぜ、遅れるとバルドロストがうるせえだろうし。」


・サリス

「そうね。じゃあお城に向かいましょう。」


道は知らないけど俺は付いて行くだけでいいから楽チン楽チン。マルチが俺の服を掴んで歩いてるのが謎だ。

まだフード取ったばかりだから不安なのかな?


・セリス

「しっかし圧勝だったな、マルチの強さは本物だったぜ。まさに特訓の成果だな。」


・マルチ

「うん、ライオットとセリスに感謝。

こんなに強くなれるとは思ってなかった。」


・サリス

「そう言えばマルチはレベル1だったものね。それが3日で20を超えるわ、3属性になるわ、称号も増えるわで、一気に強くなったわね。レベル30までは上がりやすいとは言え上がりすぎな気がするわ。」


・「そうなんだ、30まで上がりやすいんですね?俺はまだ12だけどね。じゃなかった、ニュートとの特訓で少し上がったんだった。」


ステータス


レベル13 所持金 3309c

筋力 69 +20(特 +20(加

知力 85 +20(特 +40(加

敏捷性 79 +10(特


・スキル

自動マーカー、マップ、精神自動回復、順応力 


・魔法

癒しの鼓動

風魔法 レベル19

炎魔法 レベル15

水属性 レベル19


・技能

剣術レベル8 補正レベル1 筋力 2 敏捷生 2

杖術レベル1

盾術レベル1

体術レベル19 補正レベル3 筋力 8 俊敏性 12

射撃レベル9 補正レベル1 筋力 2 俊敏性 2


・特殊技能 補正値パッシブ(特

採取レベル12 補正レベル2 筋力 10 知力 10

採掘レベル11 補正レベル2 筋力 10 敏捷性 10

魔装術レベル8 補正値レベル1 知力 10


・加工技能 補正値パッシブ(加

裁縫レベル10 補正レベル2 知力 20

鍛治レベル10 補正レベル2 筋力 20

錬金レベル10 補正レベル2 知力 20


すっごい情報量、これからも増やそうと思ってるんだけどちょっと躊躇しそうになる。


・サリス

「ホント、ライオットさんのレベルの上がりにくさは異常よね?まあ、それでも強いんだから不思議だわ。」


・「数値的には強くないんですけどね。

色々出来るってことは戦略の幅が広がりますな。

正々堂々と戦えない辛さ。」


・マルチ

「勝てれば良い」


・セリス

「その通りだ、ところでライオット。

勝利者の特権は決めたか?」


・「それなんだけど結局何も浮かばないから辞退しようかと思ってる。何かセリスが欲しいものあるなら譲るよ。」


・セリス

「マジか、ライオットはホント無欲だよな。実は軍所有のダンジョン攻略許可をお願いしたいんだ、ライオットの特権でお願いしても良いか?」


・「構わないよ、ダンジョンかぁ、何かワクワクするな。」


・セリス

「ありがとよ、これで遠出しなくても原初の果実が取れるかもしれないぜ。」


成る程ダンジョンで出るのか、覚えておこう。


一行は話しながら城へと向かう。城の兵隊さんはどうやら俺たちの事を覚えていてくれて見かけると直ぐに門を開けてくれた。


そして、謁見の間にて、、、


・オルドラ国王

「昨夜の決闘は見事であった。久しぶりに体が熱くなってな、実はまだ興奮冷めやらんのだ。いやはや本当に素晴らしい戦いだった。」


・一同

「はっ!ありがたき幸せ。」


ギルドで練習した返事の返し方が役に立ったみたいだ。国王だけなら意外とフランクでも行けるらしいのだが、重鎮さん達の目の前でそう言うわけにも行かない。大きな問題になりそうだしね。


・オルドラ国王

「聞けば、まだ決闘の勝利報酬を決めて無かったみたいだな。本来なら当事者同士が決めるものだが今回はこちらがギルドを潰す等と無茶を言った。よってこの者らには国から報酬を与えるものとする。皆もそれで良いな?」


王様が周りの重鎮さんに聞いている。反対など出ないだろうと言うのがサリスさんの見解だ。


・オルドラ国王

「反対は無いな?宜しいではギルド側の願いを聞こう、代表者は前に。」


ギルド長のセリスではなくサリスさんが前に出て再度頭を下げる。


・サリス

「では、私達のお願いをお伝えします。

今回の件で私たちが願うのは二つ。

まず1つ、軍所有ダンジョンの捜索、および攻略の許可を。2つ、ここに居るマルチなる者の話を聞いて頂きたい。但し、話を聞いた後でも今と変わらぬ生活を保証して頂きたい。

以上になります。」


わぉ、流石サリスさん。

こう言う場面にピッタリだね。

さて向こうの出方はどうかな?


・バルドロスト

「軍所有のダンジョンで何をするのか詳細を教えて頂きたい、あそこは軍の訓練施設でもある。危険な事は出来るだけ回避したい。」


・オルドラ国王

「ふむ、一理ある。サリスよ何をするのか教えて貰えぬか?」 


・サリス

「はっ!我々は原初の果実を探しております。ダンジョン深部の魔物がドロップすると言う情報がありますのでこの様なお願いとなりました。場合によっては最深部のボスまで辿り着く可能性もあります故、攻略とさせて頂きました。」


・オルドラ国王

「成る程な。原初の果実はレベル限界を超える代物だったな。短命の我々人間族には余り必要がない品だが其方は長寿種族か?」


・サリス

「恐れながら、、、。」


国王は少し考える。


・オルドラ国王

「わかった、軍所有のダンジョン攻略を許可しよう。」


・サリス

「ありがたき幸せ。」


1つ目の報酬が確定した。

バルドロストって人は突っ掛かって来ないな。

兵士に危険がないと分かったからかな?

あの人は意外と良い人ってセリスが言ってたし。


・オルドラ国王

「では、2つ目の報酬を聞こう。

確かそこのマルチの話を聞くだったな。

報酬にするくらいの話とは興味がある。」


・サリス

「はっ!この者の命に関わりますので。もしこの者の話を聞いて命を狙うのであればギルドをあげて国と争う所存であります。」


・重鎮達

「なっ!何と言う。

無礼者め聞くまでもなかろう。

調子に乗りおって。

大体報酬自体おかしいのだ。」


ざわざわ、ざわざわ


おー、めっちゃ荒れてる。

こりゃ出国しなきゃ行けないかな?


・???

「静まれいっ!まだ話すら聞いて無いのにその狼狽えよう。恥ずかしくは無いのか?我々は負けたのだ、話も聞かずに否定とは調子いいのはどちらだ!」


おっと思わぬ援護射撃が来たぞ?

あれ?あの人ニュートと一緒に観戦してた人じゃないか?ニュートよ、いつの間にあんなお偉いさんと知り合ったんだ?


・オーランド総統

「その通りだ。この程度で狼狽えてどうする?

この先、魔族との戦いが待っておるのだぞ?

もっとドッシリ構えたらどうだ?」


あの人は知ってる、、、

セリスが言ってた、確かオーランドって人。

言ってた通りこちらの味方だな。

てか魔族との戦いって何?

うん、きっと何かの例えだな。

よし聞かなかった事にしよう。

そうしよう。


オーランドとニュートの知り合いのお陰で鎮まり返った謁見の間。


・サリス

「2つ目の報酬、、、無かった事に。

我々の願いは1つで十分です。」


サリスさん、まさに策士。

間髪入れずに逃げ道を作った事で国王の器をはかりに出たな。1つの願いで終わるなら重鎮を抑えられない人物という事だ。

そんな場所でマルチの正体を明かすのは危険すぎる。

マルチの安全の為なら必要な事だな。

さて、国王よ。

どう出る?


・オルドラ国王

「サリス殿、余り虐めないでくれ。

先程は誠に申し訳なかった。」


謝ったぁぁぁ!

マジか、国王が重鎮の前で謝ったよ。

この人の器デカっ!


・オルドラ国王

「この中に話も聞かずして狼狽える様な輩がいるのなら即刻この場から出て行きなさい。ギルドとは国民である。国民なれば我々の護るべき者達だ、その者達の願いを聞くことすら出来ぬ様なそんな者はこの場に要らぬ。

さあ私の事を王と認めれぬ者は即刻立ち去れ。

我は追いもせぬ、追及もせぬ。

ただ今だけは此処を離れよ。」


何ともまぁ、、、

こりゃ想像以上の人物だわ。

少し安心してきた。


暫く様子を見る国王、、、

周りは静寂に包まれる。


・オルドラ国王

「では話を聞こう。責任を持ってマルチ殿を護ると約束する。」


・サリス

「はっ!ありがたき幸せ。」


サリスさんがマルチを連れて前に出る。

前に出る、、あれ?マルチさん?

俺の服を離さないと前に出れないよ?

おーぃ、マルチさ〜ん。


・マルチ

「ライオット、、、そばに居て」


・サリス

「ライオットさんも一緒に行きましょう。」


怖いんだな。

うん、俺も怖いです。

でも腹括らなきゃな。

さあ、唸れ俺の順応力スキル


・「分かったよ。一緒に行こうマルチ。」


マルチが俺を見て笑顔になる。

さあマルチの戦いが始まるぞ。

3人は国王の前に出た。


・オルドラ国王

「おぬしは、確かライオットだったな。

ぶはむっ、、、ふっ、、、ブハァ!

ふむ、そ、、其方も、、ぷっ、、よくぞ。

くっ、、、ぶっ、、、ブハっはっは。」


国王が爆笑してるのですが?

それに釣られて周りも笑い出す。

何かめっちゃ笑われてますよ?


・オルドラ国王

「いや、、すまぬ、、、ブハァ。

ついつい昨日の戦いが、、、ブフ、

素晴らしかったので、、、ブハァ。」


完全にツボったな、、、

ハンダの倒し方間違えたかな?

まあみんな楽しそうだし良いか。

暫く謁見の間は笑いに包まれた。

そしてとても良い雰囲気になった。


・オルドラ国王

「ひぃ〜、、、笑った。

いや、笑っちゃダメだったな。

いやはや、申し訳ない。」


めっちゃフランクになったよ、、、

倒して方間違ってなかったな。


・「さぁマルチ。俺が側に居るから言いたい事を話してごらん。」


・マルチ

「ライオット、、、ありがとう。」


マルチが俺に微笑み、前に出る。

何故か俺も、、、服を摘まないで!


・マルチ

「オルドラの国王よ、、、聞いて。

私の名はマナタスク・マルチ・ダーチェ。

精霊界女王マナタスク・レイ・エリスの娘。」


・オルドラ国王

「なっ!ほ、本当か?

ちょっと待ってくれ、マナタスクだと?」


国王は暫く考える。

だが混乱している様だ、、、


・オルドラ国王

「この場で言う程の事、成る程。

命を掛けるだけの情報か。

名乗る事に躊躇は無かったのか?

下手すれば捕まっていたかもしれないぞ?」


・マルチ

「もう偽る事は辞めると決めた。

それに私は死なないし捕まりもしない。

何故なら私のライオットが護ってくれるから」


・セリス

「わりぃな国王、オーランド。

アタシはマルチを守る事に決めた。

例えあんたらが相手でも引かないぜ?

てかマルチ、アタシも混ぜろよ仲間だろ?」


セリスがマルチの隣に立つ。

丁度俺とセリスでマルチの両脇を固める形だ。


・マルチ

「王よ私は望む、この国で今まで通り過ごしたい。

ただのマルチとしてこの人達と一緒に居たい」


・オルドラ国王

「、、、、ひとつ聞こう。

レイ様は人間族に惨殺されたと聞く。

怨みはないのか?」


・マルチ

「ある!私は絶対に許さない。

でも全ての人が悪いわけじゃない。

ライオットが教えてくれた。

セリスが教えてくれてた。

だから私は望む。

この人達と共に生きて行きたい、この国で。」


・オルドラ国王

「、、、そうか。」


国王は暫く考え込む。

周りはざわつきが大きくなる。

長く感じた、多分そんなに時間は経ってない。

でもすごく長く感じたんだ。


・オルドラ国王

「聞け!この者を我が王国にて保護する。

反対意見は聞かぬ、マルチ様は我々が護り抜く。

マルチ様、人間族を代表して謝罪する。

誠に申し訳なかった。

我々が必ず護ります故何卒ご容赦ください。」


国王が玉座を降りて俺達と同じ高さまで来る。

そして膝を折り深々と頭を下げる。

騎士の忠誠を違う時みたいな感じだな。

俺もセリスも王を見習う。

するとざわついていた重鎮達も同じ事をする。

この場で1番頭が高いのはマルチになる。

まるで女王様みたいだな。

俺はそう感じた。


・マルチ

「オルドラの国王よ、頭を上げて。

貴方のお陰でこの国を出なくて済みそうです。

受け入れてくれてありがとう。」


オルドラ王国と精霊界が繋がった瞬間だった。

王の器は本物だった。

後は周りの奴ら次第となる。

こればかりは今後をみないと分からない、とりあえず当面の問題はクリアされたと思って良いだろう。


・セリス

「ライオット、まだ安心はできないがこの国に居られそうだな。」


・「そうだな。」


セリスも同じ事を考えて居たらしい。

その後は細かい調整が行われた。

細かい?いや結構な大事になってる気がした。

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