第7話 冒険者として
トリナ村からの帰り
馬車の中にて。
・セリス
「あぁ〜しんどい。
全く、バルドロストの奴、話が長すぎる」
セリスが盛大にため息を吐く
・サリス
「仕方ないわよ、オーク軍の侵攻なんてここ最近滅多になかった事なんだから。
しかも今回の様な大規模なのは初めてよ。
今回勝てたのも奇跡みたいなものだったし。
今後の事を考えるのも司令官の務めでしょう。」
・セリス
「そらぁ、わかるけどよ。
毎回あー長くちゃ話も覚えてられないぜ?」
・サリス
「まあ、確かに長かった事は認めるわ。
さあ、オルドラが見えてきたわ。
帰ったらギルドの書類の整理しなきゃね」
・セリス
「マジかよ。
サリス、ちょっと位休もうぜ!
疲れちまった。」
・サリス
「あら、貴方は休んでて良いわよ?
あれ程の大規模な魔法を唱えたんだし、
ゆっくりしてなさい。
書類の整理は私がやっておきます。」
・セリス
「おぉ、流石サリス
頼りになるぅ〜」
・サリス
「ハイハイ、お任せください。
ところで、本当に体は大丈夫なの?
マナポーションなんていつの間に入手したか知らないけど、薬の反動を侮っちゃだめよ?
本当に、薬ならね。」
・セリス
「ハハハハ」
・サリス
「その内、本当の事を聞かせてね。」
・セリス
「あぁ、わかってる。
アタシだけの問題じゃないから。
近いうちに必ず話すよ。
ごめんなさい、姉さん」
リーシュとセリスの2人はライオットの魔法の事を伏せる事にした。
あまりに規格外の為、知られてしまったら軍部に連れて行かれる事は明白だ。
協力を拒めば最悪、研究の為に何をされるか分かったもんじゃない。
それ程、人族は追い込まれている状態にある。
獣人の勢力拡大は日々深刻な問題になっている。
魔力増強、新兵器開発、戦力拡大、防壁設置。
どの国も今、戦う力を欲しているのだ。
今回、軍部で問題となった2つの事項がある
セリスの大規模な魔法
リーシュの欠損部位回復
本来なら1人の魔力で為せる技ではない。
1人の人間が使える技ではないのだ。
しかし、2人は実際に使用した。
その事に軍部が注目したのだ。
苦し紛れに2人が絞り出したマナポーション使用。
ダンジョン等で稀に入手できる神秘の薬。
それの使用と報告した。
本来なら通らない主張だが、バルドロストの配慮により問題解決となった。
・バルドロスト
「特殊回復部隊隊長リーシュ。
どんな奥の手があるのかはわからぬが、、
兵士の為に禁忌を犯したのなら、私はお前を責める事など出来ぬ。
ギルド長セリス
同じくどんな手を使ったのかはわからぬが、
お前のお陰で犠牲者が最小限にされたのも事実。
仲間を守る為、禁忌を犯したのなら責める事など私には出来ない。
ならば私はお前達を守る為に禁忌を犯そう。
これでお互い様という訳だ。
今回の戦果、見事であった。
感謝する。」
部下を守りたい。
国を守りたい。
家族を守りたい。
仲間を守りたい。
その思いは人一倍強いバルドロスト
司令官は2人の英雄に頭を下げた。
作戦中、口や態度は悪く部下に嫌われがちだが、実のところ仲間の為に全力を注ぐ、そんな熱い情熱を持っている人物であった。
〜ライオットサイド〜
・「あー、ワクワクする。
ドキドキしてきた!」
ステータス
レベル2
筋力 14
知力 24
敏捷性 20
スキル
自動マーカー、マップ、精神自動回復、順応力
魔法
癒しの波動
技能
剣術レベル1
杖術レベル1
盾術レベル1
体術レベル5 補正レベル1 筋力 2 俊敏性 3
・「おー、結構上がってる。
リトルボアと戦って数値が上がったのか、レベルで上がったのかは謎だが、徐々に強くなるのは嬉しなぁ。
では確認して行くか。
まず筋力とかの数値、基本数値とでも呼ぶかな。」
レベル1 レベル2
筋力8 →14
知力20☆ →24
敏捷性14 →20
・「フムフム、結構上がってる。
知力の星マークが消えてるな。
あれか?現状レベルでの数値上限って所かな?
様々な行動で数値が上がるがレベルが低いと成長が止まる。
レベルだけ上げても数値を上げないと中身はスカスカの高レベルになる。
理想は数値もしっかり上げつつレベルを上げる。
ふむ、奥深い。
レベルを上げるだけじゃダメってのが俺好みだ。
後は技能の体術だな。
新しく補正レベルが増えている。
リトルボア戦はこれのお陰で助かったし、
しっかりと理解しておかないと。
えっと、詳細詳細。」
補正レベル
技能レベルが一定値になると上昇する。
対象の武器等を装備中に補正数値がプラスされる
・「成る程ね、素手で戦ってたから体術としてカウントされてた訳ね。
と言う事は剣を装備ても体術の補正値は加算されないのか。
武器毎に数値があって装備品で特性が変わる。
そんな感じで良いかな?」
まあ、これも一つ一つ検証して行こう。
とりあえずレベルアップおめでとう、俺!
ニマニマしながらステータスと睨めっこ。
・「そろそろ戻るか、少し休めたし。
マップオープン。
ちょっと気が引けるけどリトルボアの素材回収もしなきゃな。
やり方わからないけど。
死体を見たくないが、今後この世界で生きるなら剥ぎ取りとか必要になりそうだからなぁ。
順応力スキルにお力を借りますか。」
ぶつぶつ言いながら崖を降りる道をマップを見ながら降りていく。
・「多分この辺に、あるはず。
倒すとマーカーから消えるのが少し厄介だけど、仕方ないか。
、、、ん?」
リトルボアの死体の所に誰かがいた。
・「あの〜すみません。
そのリトルボア倒したの私なのですが、、、」
・???
「‼︎誰だっ?
これはオレが見つけたんだぞ。」
おっと、そう来たか。
この世界ではどういう基準で所持権利が発生するんだろ?
討伐者か、発見者か。
冷静に考えて普通、討伐者だろう?
ちょっと強気で行くか。
・「その獲物は私が倒した
だから、私の物だと主張したいのだが。
違うか?」
・少年
「うっ、クソ
折角見付けたのに。」
あら、ちょっと涙目になってるじゃない。
何だか可愛そうになって来た。
よく見れば、12〜13歳くらいって所かな?
・「何か取らなければいけない事情でもあるのか?」
・少年
「うるさいっ。
お前なんかにわかるか。
ウチには金が無いんだ、街中じゃ魔物も居ない。
たまには肉を食べさせたかったんだ。」
ふむ、若干説明不足な面も有るが何となく理解
そして君、一つ訂正させなさい。
・「俺も金は無い。
一文無しだ!
そして武器もない、宿もない。
友達も居ないし、強くもない。」
あれ、俺の方が泣きたくなって来た。
・???
「嘘だ、だいたいリトルボアを倒したのなら武器ぐらいあるはずだ。」
・「無い!
武器が無いから素手で戦って、負けそうだったから上の崖から落として倒したんだよ。」
・???
「マジか、スゲーな。
そんな倒し方があったんだ。
お前何者だ?」
・「俺はライオット
冒険者、、、になる予定の貧乏人だ。」
・ニュート
「あっはっは
おいらはニュートだ。
同じく冒険者になる予定。
悪かったな、獲物取ろうとして。
冒険者になる者同士、マナーは守らなきゃだな。
おっと、早く血抜きしないと肉が不味くなるぜ。」
やっぱり血抜きとかあるんですね。
ファンタジーな世界だからちょっと期待してたけど、生々しい所だけ無しって都合よく行かないか
・「ニュートさん、やり方わかる?」
・ニュート
「ニュートで良いよ。
何だよ、兄ちゃん血抜き知らないのかい?
んじゃ、やってやるよ。」
・「助かるよ。
そうだ、肉を分けてあげるからやり方教えて。」
・ニュート
「マジで?
教える教える!
ありがてぇ。」
それはお互い様だよ、とは言わなかった。
その後2人は血抜き、解体を行った。
血抜きには1時間程掛かるそうだ。
待ってる間に解体方法の手順を教えてもらった。
そして1時間後、解体開始。
30分程で綺麗に切り分けられた。
・ニュート
「そいで、ここの肉は使えないから地中に埋めたり焼いたりしておくんだ。
腐ると臭いし魔物も寄ってくるらしいぞ。」
・「ニュートは詳しいんだね。」
・ニュート
「おいらは金を貯めてギルドに入りたいんだ。
だから色々と勉強してる。
肉屋とかのおっちゃんに教わったりしてんだ。」
ほほぅ、なんて真面目な子なんでしょう。
・ニュート
「よし、後はここに魔法石があるかな?っと
おっ、あったあった。」
・「魔法石?」
・ニュート
「ああ、魔物の体内で魔力が固まって出来る石。
って言ってたかな。必ず取れるって訳じゃ無いから素材の中で1番高く売れる部位らしいぜ。
何に使うかは知らねえけど。」
ほほぅ、これはかなり勉強になった。
売る場所も使い道も知らないし、必要無いか。
ニュートにあげよ。
・「よし、ありがとうニュート。
解体の勉強報酬だけど、魔法石と肉を半分で良いかな?少ないかな?」
・ニュート
「多すぎるよ!
兄ちゃん欲が無さ過ぎだ。
討伐した兄ちゃんの方が少ないっておかしいよ。
おいらちょっと心配になって来たよ。」
そうなのか、
そう言われても魔法石を売る当てもないし、、
肉をたくさん持って帰るの重いし。
・「大丈夫だよ。
それじゃこうしよう、ニュートがギルド登録して立派になった時、俺が困ってたら助けてくれ。」
・ニュート
「本当にそれで良いの?」
・「ああ、それが良い。
ニュートはそれで良いか?」
・ニュート
「うん。」
・「よし交渉成立だな。
困った時は頼んだぜ。
頼りにしてるからな?」
・ニュート
「任せてよ!
必ず兄ちゃんの力になるから。」
・「お互い冒険者を目指す仲間だから、兄ちゃんでは無くライオットな。」
・ニュート
「分かったよライ兄!」
あまり変わって無い。
けどまあ良いか。
新しく友達が出来ました。
何だがすごく嬉しいです。
・「リトルボア、結構重いけど持って帰れるか?」
・ニュート
「これくらい大丈夫だ
本当にありがとね、ライ兄!
またな!」
・「あぁ、こちらこそありがとな。
またな、ニュート
気をつけて帰れよ。」
リトルボアを軽々担いで走って帰って行く。
俺は持ち上げれず引き摺るように持って帰る。
・「マジでか、ニュート凄いな。
俺が情けないだけなのか?
くそ、何だが目の前が歪んで見えないよ。」
この世界に来て何度も感じる劣等感。
しかし嫌な物では無く、不思議と自分を鼓舞するような感情になっていた。
きっと強くなってやる。
ライオットは静かに闘志を燃やしていた。
・「しかし、重い。
どうしよう、このまま置いて帰っちゃおうかな。」
静かに燃やしていたはずの闘志が消えていた。
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