第2話 癒しの波動

真っ白な世界にて


・女神さん

「大丈夫ですか?」


・「あ、女神さんだ。こんにちは!」


・女神さん

「はい、こんにちわ。」


・「何かありましたか?」


・女神さん

「信じられないかも知れませんが。

貴方は今、情報の波に呑まれて倒れました。

ごめんなさい。

しっかりと説明が出来ないから貴方の脳に無理をさせてしまったみたいなの、処理し切れてなのね。

当然だわ、、、突然だったものね。

でも私が今言える事は、何も無い。

何も伝えられないの。

貴方に新しい人生を生きて欲しい。

それだけしか言えない。」


むむ?どう言う事だ?

まだ掴み切れてないぞ。

とは言えとりあえず、

女神様、悲しそうな顔をするのはお辞めください。


・女神さん

「もう私にはこれしか方法が無い。

、、、許して。」


あれ?女神様が透けて来た。

大丈夫、俺は大丈夫ですからそんな悲しそうな顔をしないで下さい。

  


オルドラ王国にて


・「はっ!」


目が覚めた俺はベッドに寝かされていた。

近くには女性が何やら作業をしていた。


・「こ、こんにちは。」


・女性

「あら?ようやく目が覚めましたね。

私はネネ。神官をやってる者です。

貴方は突然倒れて鼻や耳から出血してた所を運び込まれたのです。」


・「運び込まれた?」


・ネネ

「此処は街の教会ですよ。

貴方は本当に危ない所でしたがリーシュの回復魔法で一命を取り留めたのです。」 


話が見えないぞ?

整理してみるか。

さっきまでギルドに居たよな。

そうだ、ギルド長のセリスさんと話していた時に頭が痛み出して…後、女神様と話してたような。

むむ〜、解らん。

とりあえず、お礼を言わねば


・「助けて頂きありがとうございました。」


・ネネ

「どういたしまして。

どうですか?まだ痛むところはありますか?」


頭やら腕を動かしてみるが、痛みは無かった。


・「大丈夫みたいです。」


・ネネ

「そう、良かった。

でも起きたばかりだから無理しない様にね。

ゆっくりしてらっしゃい。」


・「はい、ありがとうございます。

ところで、、、

回復魔法を使って下さったリーシュさん?って?」


・「ああ、あの子なら隣のベッドで寝てるわよ。

回復魔法で疲れたんでしょうね。

凄い疲れるのよ回復魔法って。」


マジか、何だか申し訳ない。

これはお礼しとかなきゃな。


・「リーシュさんにお礼を言いたいのですが。」


・ネネ

「あら律儀な方ね、、、

と言う事なんだけどリーシュ。

起きてるんでしょ?」


と言いながら仕切りを開けるネネさん。


・リーシュ

「はぅぁ!」


ビックリした様に布団に隠れるリーシュさん。

何だか可愛いな。

小動物がビックリして隠れるみたいだ。


・ネネ

「ふ〜、部隊長になったんでしょ?

いい加減その人見知りを辞めなさいよ。」


ぶ、部隊長?

お偉いさんなのか?


・リーシュ

「だって、いきなり開けるんだもん。」


だもん、って可愛いな。

部隊長と言う響きとのギャップがすげぇ。

いかんいかん。

とりあえずお礼をせねば。


・「この度は危ない所を助けて頂き、誠にありがとうございました。」


リーシュはこの時思った。

この人いい人っぽいと。


・リーシュ

「いえいえ、どういたしまして。

ご無事で何よりです。」


布団で顔を半分隠しながら話すリーシュさん。

やべぇ、可愛い。


・???

「失礼します。」


兵士っぽい服装の人が入ってきた。


・兵士らしき人物

「リーシュ隊長、ギルドから報告です。

オーク軍がトリナ村に侵攻中との事です。

至急部隊を派遣して欲しいと連絡が入りました。」


・リーシュ

「わかりました。

先ずは1班にギルド員と共に村に先行しなさい。

2班は魔力回復薬を持ち、

白堊門(はくあもん)で待機。

進行中と言うのであれば時間との勝負です。

急ぎなさい。」


さっきのリーシュさんと違ってとても頼りになる。と言うか凛々しい。

何だか眩しいよ。


・兵士らしき人物

「了解しました。」


ビシッと敬礼?の後、素早く走り去る兵士さん。

カッコいいな。


・ネネ

「リーシュ、まだ回復魔法を使ったばかりで魔力が回復して無いんだから無理しちゃダメよ?」


・リーシュ

「ありがとうネネさん。

でも私も部隊を預かる身だから頑張らないと。

宿舎まで行けば魔力回復薬があるから。」


・ネネ

「あの薬はあくまでも魔力を底上げする物で回復させる物じゃ無いのよ。

だから余り飲み過ぎちゃダメよ?

反動で苦しむ事になるからね。」


・リーシュ

「解ってる。」


回復薬となんぞや?っと突っ込みたい所だが、まだまだ知識が無いから何とも言えない。

とは言え、魔力ってMPの事だよな?

癒しの波動で何とかなったりしないかな。

ん〜どうなんだろう?


・リーシュ

「では私は行きます。

ネネさんこちらの方を宜しくお願いします。」


・ネネ

「解ったわ。

気をつけてね。」


・「あ、ちょっと待って下さい。」


二人がこちらを見て止まる。

わぁ、何だか照れるな。

っと、そんな事思ってる場合じゃ無いや


・「えっと、魔力って精神力の事ですかね?

俺、魔法で精神力を回復させる事が出来るのですが、宜しかったらやってみましょうか?」


・ネネ

「精神力?よく解らないけど、あなた他人の魔力を回復させることが出来るの?聞いた事ないわよ?

貴方、高レベルの冒険者か何か?」


・「いえ、、、

まだギルドにも入ってないひよっこですね。」


・ネネ

「怪しい・・。」


うぅ、ネネさんに怪しいと思われてるぞ。


・リーシュ

「お願いします。」


・ネネ

「ちょっと、リーシュ!」


・リーシュ

「今は魔力が少しでも回復して欲しい。

何よりその方が嘘を言ってるとは思えません。

何も起きないならそれで良い。

もし本当に回復するのなら・・」


・ネネ

「でも、聞いたことないわ。

魔力を回復だなんて。」


・リーシュ

「お願いします。」


何だか、凄く重大な任を請け負ってしまった感じがする。

精神力が魔力と関係なかったらどうしよう。

ここまで来て出来ませんとは言えないし。

まあ、やってみるか。


・「では、、、」

『癒しの波動。』


ああ、心がホッコリする。


・ネネ

「な、何これ凄く暖かい。」


・リーシュ

「はぅぁ、」


あれ?ネネさんにも掛かってないか?

この魔法って範囲魔法なんだな。

そしてリーシュさんの反応がちょっと危ない感じだったな。


・ネネ

「凄い、本当に魔力が回復しているみたい。」


・リーシュ

「あぁ、全身がポカポカします。」


お、よかった。魔力って精神力と同じっぽい。


・ネネ

「貴方、何者なの?

魔力を回復出来るなんて凄い事よ?

それに、二人に魔法を掛けたのに貴方の魔力は減って無い感じがするわ。」


・「あ、その、俺はですね、

ちょっと記憶の怪しいひよっこです。」


実際には三人に掛かってますけどね。

精神力回復は自分にも掛かるみたいだから使い放題なのかも。

自動回復も有るしね。

この反応だと黙っておいた方が良いかな。

下手に発言するのが怖い。


・ネネ

「ますます怪しい。」


うぅ、どんどん怪しい人物になって行く。


・リーシュ

「あの、お願いがあります。

今から行く所に一緒に来て頂けませんか?」


へっ?


・ネネ

「ちょっとリーシュ。

こんな怪しい奴を連れてってどうするの?

それに勝手に軍事に引き込んじゃダメでしょ?」


怪しくないですよ。

俺は怪しくないですよ〜


・リーシュ

「軍部には私が話をつける。

この方の魔法の力が有れば、前線の兵士の生存率が跳ね上がるはずだわ。」


ちょっと、リーシュさん?


・ネネ

「ダメよ、そんな事許されない。

それに素性も解らない奴を貴方と二人になんてさせれないわ。」


・リーシュ

「大丈夫よ、部隊員と一緒だから。

お願いします。

私と一緒に来てください。」


・「お願いされると弱いと言うか、行くのは良いんですが、俺なんかが行って大丈夫なんですか?」


・リーシュ

「貴方の魔力回復の力が必要なんです。

お願いします!」


うぅ、ここまで押されると断りにくい。


・「わかりました。

どこまで出来るか解らないけどお供いたします。」


流れで戦いの場に連れて行かれる事になってしまった。まあ、何もする事決まって無かったし、流れに身を任せてみるのも良いか。

展開が目まぐるしく変わるけど余り動揺しないのは順応力のおかげかしら?


・リーシュ

「では、ついてきて下さい。」


・「はい、わかりました。

では、ネネさん色々ありがとうございました。」


・ネネ

「貴方も怪我明けなんだから無理しない様にね。

あの子のこと宜しくね。

ちょっと強引な所もあるけど良い子なの。」


・「出来る限りリーシュさんの力になって来ます」


リーシュの後ろを着いて走り出した。

そんな背中を見ながらネネが呟く。


・ネネ

「リーシュ、それに名前も知らない貴方。

どうかご無事で。」

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