第18話 遭遇

魔族との激闘の翌日。

村長たちとの朝食。

、、、のはずが村人と共に食事会になっていた。

外に案内されるからおかしいと思ったんだよな。


・カイブ

「皆、聞いてくれ。

今回の騒動の黒幕は魔族だった。

だが、その魔族はここに居る『勇者 裕樹』殿のお陰で退ける事が出来た。

村の損傷は激しい、、、、だが、今日だけは生きている事を祝おうではないか!

復興に向け、今日は存分に楽しんでくれ。」


村長であるカイブが集まっていた村人に宣言する。

なるほど、今日一日は魔族襲撃の事を忘れさせて楽しもうって事ね。

カイブに案内されて座ったところは村の中心に作られたちょっと高めの台の上だった。

完全に見世物じゃないか、、、

そんな場所に、俺とハナ、ビルドとラッタが座っている。

しかし、食糧とかそんなに備蓄があったのか?

ハナの反対側に座っていたビルドに聞いてみた。


・「なぁ、こんなに食糧とか出して大丈夫なのか?

倉庫とか燃えたんだろ?」


・ビルド

「不思議な事にな、昨日裕樹殿が倒れてから程なくして国から物資が届いたんだ。

本来なら数週間後なのだが、本国からの贈り物のついでに持ってきたらしい。

しかも、2回分の物資と共にだ。

なんでも、ハンダへの詫びの印とか言ってたぞ?

ライオット?とか言う人物から送られたらしい。

『鬼殺し』と言う武器が物資の中にあって、ハンダが号泣しながら叫んでたな。」


『鬼殺し』?

たしか、決闘で見事に粉々になってたアレの事か?

あれは凄かったよな、、、

そう言えば、冷静になって考えてみたら何かとおかしな点が多い。

ライオット、だったかな。

あいつが何か仕掛けてたんじゃないか、とも思う。

まぁ、今となってはどうでもいい事だけどな。


・「何はともあれ、良かったな。」


獣人国の道のりはまた後で聞けばいいだろう、、、


そんな裕樹の考えには誤算があった。

朝始まった宴は、日が完全に沈んでも終わる気配が無かった。

想像以上に長い宴となっていた。

裕樹自身も途中から考えるのをやめた。

今は楽しむ事にしたのだ。

結局、夜遅くまで宴は終わる事が無かった。


・「仕方がない、明日にでも聞くか、、、」


諦めた裕樹は村長宅に戻り眠りにつくのだった。


~次の日~


朝起きてから朝食を頂いた。

その後、ハナと共に村長を探しに外に出た。

昨日までのバカ騒ぎが嘘のように、今日は復興の動きを見せていた。

ハナの話によると、本国からも支援が入るらしい。

魔族の話が出た今、国も無視出来なくなったんだろうな。


、、、俺には関係ない話だ。

今の俺にはな、、、


歩きながら自分のステータスを確認する。


裕樹 レベル25

筋力 617 +100

知力 551 - 50

敏捷性 587 +100


特性

「全能力大幅アップ」

魔法

光魔法

技術

剣術レベル 38 奥義 剣義一閃


かなり強くなった、、、

だが、魔族には到底勝てる気がしない。

もっと強くならなきゃ。

そんな事を考えて歩いていた。


・「ハナ、今後の事だが、獣人国を目指すのは変わらない。だが、レベル上げの方に重点を置きつつ進みたいと思っている。

ハナはどうしたい?」


俺だけの意見で進むのも気が引けるしな。

ハナの意見もしっかり聞いておこう。


・ハナ

「私の意見も聞いてくれるなんて嬉しいな。

でも、私は裕樹に付いて行くと決めたの。

だから裕樹の好きにしていいよ。」


何とも言えない返しが飛んできた。

ある意味、責任重大だな。

慎重に進んでいこう。


・「ありがとう、ハナ

じゃあレベル上げ中心で行こうと思う。

まずは、魔族と闘えるだけ強くなりたい。」


俺達の方針が決まった。

そして村長を見つける。

獣人国への道のりは簡単に聞く事が出来た。

聞けたんだが、向こうに渡る手段が困難らしい。

国交が断裂した現在では事実上、不可能とまで言われた。さて、、、、どうしたものか。


・ハナ

「裕樹、どうしましょうか、、、」


・「そうだな、、、

とりあえず国境まで行くだけ行ってみるか。」


獣人国への渡り方。

大陸を繋ぐ『ランバート大橋』と呼ばれた橋を渡ればよかった。

しかし、数十年前にその橋は破壊された。

獣人国の住人を人間たちが奴隷として連れ去っていた事が原因だ。

困ったものだ、、、

でも、俺は数日前に獣人国の奴隷を開放している。

だったら、何かしらの方法で向こうに渡る事が出来るんじゃないか?

そんな期待を持っていた。


・村長

「そうか、、、ならば止めはしない。

だが危険だと感じたらすぐに戻ってくるのだぞ。

今や、獣人国は敵対している国と思って行動してくれ。」


そんな村長の言葉を受け止めつつ、俺とハナは旅立ちの準備をする。

ビルドやラッタ、村人達が見送りに来てくれたのが嬉しかった。

ハンダは一旦国に帰り今回の事件の報告に向かったらしい。

俺達は、その日の内に旅立った。

目指すは北。

大陸の端に架かる『ランバート大橋』跡地だ。


道中は問題なく進む事が出来た。

途中、よく知らないが学生たちと遭遇した。

ハナの話によると、この時期は国境近くの町まで遠征訓練をするそうだ。

軍人も護衛として、各通過ポイントに配置されるらしい。

毎年4班に分かれて行動していると言う。

しかし、少し離れた場所では2つの班が魔物の攻撃を受けていた。

片方は大型の魔物、片方は数で攻められている。

状況を見ながら俺は、魔物の多い方に助けに入る。

大型の方には生徒側に強力な魔力を感じたからだ。

助っ人でも入ったのだろうか?

とりあえず戦闘に参加だ。

俺とハナは全速力で走り戦闘に介入する。

生徒の4人が魔物に囲まれている。

狼型の魔物だ、なるほど、、、

囲んで弱らせ、じれて飛び出した人間を一人ずつ食い殺す戦法だな。

連携がしっかりしている。

一角を崩しながら介入すれば生徒に状況を聞く時間も取れるだろう。


・「ここから生徒までの道筋に居る敵だけ倒す。

ついて来てくれ。」


・ハナ

「はい。」


ハナと俺は縦に並び一気に駆け抜ける。

回復薬のハナには攻撃手段が殆どない。

俺が斬り伏せて道を作る。


・男子生徒①

「もうおしまいだ、、、」


・女子生徒①

「しっかりして、時間を稼ぐの!

きっと、キロス君が助けてくれるから。」


・男子生徒②

「無理だよ、、、

だって、あいつの方にはあんなにデカい魔物が。」


・女子生徒②

「うう、、、、、」


到着する寸前、そんな声が聞こえた。

ふむ、キロスと言う少年がキーマンとなるのか?

まあいい、直接聞こう。

俺達は生徒の元に到着する。


・男子生徒①

「ひぃ!だ、、誰だ!」


ビビりすぎだろ、、、いや、無理もないか。

それに見るからに女子生徒の一人が瀕死だ。


・ハナ

「私は王国特殊医療班です。

その子をそこに寝かせて。」


直ぐにハナの治療が始まる。

陣形が崩れたことにより魔物の動きが一旦止まる。


・「簡潔に状況報告。」


・男子生徒①

「た、、助けて。

俺を助けて。

俺は貴族だ、お礼ならいくらでも、、、」


ふむ、、、、君、その調子だと死ぬよ?

と言ってあげたい気がするな。


・女子生徒①

「演習中に2つの班が魔物の群れに襲われました。

大型の魔物と小型の群れです。

大型の魔物はキロス君が引き連れていき、私達の班は小型の群れに襲われ林に逃げ込みました。

この場所に誘導されたように思えます。

目視出来た魔物の数は6匹。

恐らくもっと居ると思われます。

周りを囲まれてから、じわじわと攻撃されています。

あの子は囲いを突破しようとしてやられました。

各個撃破が敵の狙いと思い、固まって防壁魔法を展開中です。」


ふむ、こちらはなかなか優秀な子だ。

この子が居なかったら全員死んでたな、、、


・「状況は理解した。

君の名は?」


・セス

「私の名はセス。

セス・リーベルトと申します。」


・「俺の名は裕樹だ。」


状況を確認した時、ハナが話しかけてきた。


・ハナ

「この子は大丈夫です。

傷は多いですが浅い、少し血を流し過ぎた様なので送血剤を使用しました。

時期に目を覚ますでしょう。」


送血剤とは、、、

傷口に塗り込むと血液を少量だけ創り出して体内に送り込む薬。 劇薬の為、一日に1度しか使えない。


何とも恐ろしい薬だ、、、

血液型とか関係ないのかな?

っと、そんなこと考えている場合じゃないな。


・「ありがとう、ハナ。

では防壁魔法を頼む。」


・ハナ

「了解。」


即座に防壁魔法を展開する。

この手の魔法は回復魔法の使い手なら使える。

攻撃の手段が無いと言われる回復魔法使い。

防御特化の魔法を主に習うらしい。

恐らく『セス』も回復魔法を得意とするのだろう。


・セス

「裕樹様、これからどうしましょう。」


様とか付けるの辞めて欲しい、、、

よく見るとセスは震えている。

怖かったんだろうな、、、

今はこの場を切り抜けよう。


・「この手の魔物は群れの中にリーダーがいる。

そいつを倒せば一時的に動きを止めるだろう。

それに乗じて数匹倒せば統率が崩れる。

そうなれば楽に倒せる。」


・セス

「キロス君も同じことを言っていた、、、」


へぇ、キロスって奴は優秀なんだな。

確か大型の魔物を引き付けたとか言ってたな。

さっさと加勢に行くか。


・「では、皆はここで待機。

セス、しっかりと見ておけよ。」


さて、まずはリーダーを炙り出す。

まだ少し陣形が歪んでいる。

そこから揺さぶりを掛けるか。

俺は徐に前に出る。

すると両サイドから魔物が飛び掛かってくる。


・「今は躱すだけだ。」


俺は魔物の攻撃を躱す。

攻撃はまだしない、リーダーを炙り出すんだ。

時間を掛ければ必ず指示を出しに来るはず。

2匹の魔物の攻撃を躱していると、一瞬だけ奥に居る魔物が見えた。

その瞬間、3匹目の魔物が襲い掛かってくる。


・「あいつか、、、、」


3匹目の魔物を加えた攻防。

ライルの稽古に比べたら余裕で避けれる。

そして、その時が来る。

また、奥の魔物が一瞬だけ見えた。


・「ここだ!」 


一気にギアを上げる。

あいつがまた闇に消える前に、斬り伏せる!

数匹の魔物がリーダーの前に出て庇うような仕草を見せる。


・「ビンゴだ!」


やはり群れのリーダーほアイツだ。

俺は剣気を飛ばして奴の首を斬り落とす。

リーダーが絶命した瞬間、周りの魔物が停止する。

気配を断つことも忘れてたたずむ魔物。


・「ここからが勝負。」


俺は手あたり次第に魔物を斬り伏せる。

気配を断っていない魔物なら簡単に察知できる。

数は13匹、数秒で倒せるのは7匹まで。

残りの6匹はハナ達の後ろ側だ。

7匹を斬り伏せて残りの魔物に向かう。


・セス

「えい!」


・ハナ

「せやぁ!」


2人の掛け声が聞こえた。

気配が3匹消えた、、、ありがたい。

残った3匹の気配が消えそうになる。

正気を取り戻したようだ、、、だが


・「もう、遅い!」


俺は残った3匹を一気に片付けた。

よし、これで勝利だ。


・セス

「ハナさん、ご指導ありがとうございました。」


どうやらハナの指示で攻撃に移ったみたいだな。

流石ハナ、頼りになるね。


・「よし、では大型の魔物の加勢に、、、」


、、、なんだ?

とてつもない魔力を感じる。

おいおい、マジか。

魔族以上の魔力だぞ?


・ハナ

「裕樹?どうしたの?」


・「いかん、伏せろ!」


俺はセスとハナを抱きしめながら地面に伏せる。

とっさに怪我人と放心状態の男子生徒に防壁魔法をかける。

防壁魔法が掛かった瞬間に魔力が放たれたことが感じ取れた。

キロスとか言う奴か?

こっちの防壁魔法を待って攻撃しやがった。

刹那、、、、

凄まじい轟音と爆風がこちらを襲う。


・「す、、、すげぇな。」


防御態勢に入ってなかったらこっちにも被害が出るほどの威力。

キロスって奴の仕業か?

とんでもない奴が居るんだな。

暫くして、砂ぼこりが収まってくる。


・「、、、、林が無くなってやがる。」


爆風で消し飛ばしたのか?

そんなことを考えていると、、、


・???

「大丈夫ですか?」


目の前に奇妙な杖を持った少年が現れた。

ちょっとまて、今、そこには誰もいなかった。

キロスって奴の魔力は向こうにあったはずだ。

何故、目の前に居る?

まるで、瞬間移動でもしたかのように、、、


~登場人物~


・裕樹(主人公)

魔族に負けて自分の弱さを実感。

強くなりつつ獣人国を目指す。


・ハナ(ヒロイン)

裕樹の力になりたい一心で旅に同行する。

最近は攻撃できない自分に悔しさを感じている。


・セス・リーベルト

魔法学院生徒。

キロスの事が好きな恋する乙女。

貴族リーベルト家の一人娘。


・キロス

???


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