第17話 戦いの後

ガイストを退けた裕樹達は村に帰還していた。

村の東側は被害は大きい、、、

魔法の砲撃により壊滅状態にある。

一方で西側はそれ程ダメージはないがやはり崩れ落ちた建物も目立つ。

無理もないか、合体マードックと戦ったんだ。

あれ程巨大な魔物と対峙したのだから。

そんな事を考えながら歩く。

俺自身、歩くのがしんどい。


・「結構破壊しちまったな、、、

その、すまんなビルド。」


・ビルド

「なに、気にすることは無い。

命あればまたやり直せる、建物などもう一度建てれば良い」


男気溢れるビルドの言葉に若干救われた気がした。


・ラッタ

「私はカイブ様の所に行ってきます。」


そう言って駆け出すラッタ。

そういえば村長の存在を忘れてたな、、、


・「村長は無事か?」


・ビルド

「あぁ、すべて裕樹殿のおかげでな。

カイブ様は損傷の少ない建物に寝かせてある。

しかし、マードックに追われてる時、ラッタの矢が当たらなかったのも裕樹殿の策とは思わなかった。

ワザと光源を潰していたんだな。

それを知らなかったから正直死んだと思ったぞ。」


豪快に笑うビルド。

ビルドがマードックに囲まれながら追われている時、ラッタに注文したのは敵側の光源を潰すこと。

裕樹達が動きやすくなると同時に、『フラッシュ』の威力を上げる為だった。

ビルドには騙されたままでいて貰わないと敵に悟られそうだったので黙っておいたのだ。


・「お前まで騙して悪かったな。

『敵を欺くなら味方から』と言う言葉もあってな。

お陰で上手く敵を嵌められた、ありがとな」


お礼の言葉を受けたビルドは嬉しそうに笑う。


・ビルド

「こうして生きてられるのも、裕樹殿のおかげ、

気にすることは無い!

礼を言うのはこちらの方だ、感謝する!」


ビルドは裕樹に敬礼をする。

俺も見様見真似で返しておいた。

盛り上がっている2人とは対照的にハナは暗い。


・ハナ

「裕樹、今度はこんな無茶しないで。」


・「すまないな、ちょっとそれは保証できない。

魔族の強さは身に染みて分かった。

今度は追い詰められない様に強くならなきゃな。

だからさ、俺を支えてほしい。

頼むよ、、、ハナ」


今の正直な気持ちを伝えた。

出来ない約束はしたくない。

実際に簡単に約束できない程力の差も感じた。

でも、そうならない様に努力は出来る。

だから、心底支えが欲しいと思えた。


・ハナ

「私も、裕樹と一緒に強くなる。

今度は一人にしないから。」


ハナも同じ様に決意を固めた。

裕樹とハナ、二人の絆は強く結ばれた。

その後、3人は暫く村の中を歩いていた。

現在の状況を把握したかったからだ。

一周してから村の中心地に戻って来た時。


・ラッタ

「あ、探しましたよビルドさん。

カイブ様が話があるそうです、至急村長の家に。」


・ビルド

「意識を取り戻したか?よし、急いでいこう。」


俺たちは村長の家向かって歩く。

嬉しそうなビルドの顔が視界に入り、少しずつ実感していく。本当に退けたんだ、、、、、と。

少しずつだが、緊張の糸が緩み始めていた。

意識がフワフワしてくる。


・ビルド

「カイブ様、ご無事で?」


・カイブ

「ビルドか、迷惑を掛けた、、、

すまなかったな。」


布団に寝たままカイブが話す。


・カイブ

「ラッタから話は聞いた、、、セイナはもう。」


その一言で言葉が途切れた。

仕方がない、愛する人を失ってしまったのだ。

とは言え泣いていても仕方がない。

泣いても意味ないしな。


・「村長さん、悪いが泣いてる暇はないぞ?

無駄な涙を流す前に、まず立ち上がるんだな。」


・ビルド

「ひ、裕樹殿それはあんまりですぞ。」


・ハナ

「裕樹?どうしたの?」


ラッタだけは気付いてるみたいだな。


・カイブ

「無駄な涙だと?どういう意味だ。

セイナが村人が魔物に殺されたのだぞ?

返答次第では許さん!」


村長が立ち上がる。

憤怒の感情で立ち上がれたみたいだな。

そうでもしないと立たない気がしてた。


・「怒りで立ち上がれたか?

丁度いい、そのまま外に出てみろ。」


俺はその言葉を言い捨てて外に出た。

村長が何か言ってた気がしたがどうでも良い。

悪いが俺も余裕がないのでな、、、

手荒に手早く行かせてもらう。


・カイブ

「まて、貴様許さんぞ!」


そう言いながら家から出てきた村長。

ビルドが支えながらだが自力で歩いてるみたいだ。

先に家を出た俺は膝まづいて待っていた。

そんな俺を見て混乱する村長、

周りの異変に気付き周りを確認した。

村長は言葉を失った。


・セイナ

「あなた、、、ご無事で。」


・カイブ

「セイナ?セイナなのか?」


そこにはセイナの姿があった。

魔物に殺されたのでは無いのか?

カイブはセイナに怪我が無いかを確認する。

そして強く抱きしめた。


・カイブ

「セイナ、、、無事でよかった。」


・セイナ

「あなた、、、」


二人は周りの事など忘れて強く抱きしめ合った。

生きていることに感謝しながら、涙を流しながら。


・ビルド

「一体、どういうことだ?」


・ラッタ

「『風穴同』での人質救助が完了したんですね。

エイトさんとハンダさんが居ないところを見ると、

残りの村人を呼びに行ったと言う所でしょう。

裕樹さんが村長にあのような態度を取ったのは、

自身の足で奥様の所まで歩かせる為だったのでしょう。」


わざわざ村長にも聞こえるように大きな声で話すラッタ。なんと気の利く人なのでしょうかね。


・「寝てる状態での再会じゃカッコつかないだろ?

男はどんな時でも好きな人の前ではカッコよく居たいと思ってな。」


折角なので乗せてもらった。

感謝するぜラッタ。


・カイブ

「裕樹殿、だったか?

先ほどはすまなかった。

私の為に、ワザと怒りの矛先となってくれたのだな。なんと豪快なやり方か。」


・「いや、あれはさすがに言いすぎたかもしれん。

こちらこそ申し訳なかった。

魔族の事で余裕が無くなっていてな。」


正直に謝罪しておいた。

あとくされ無い方が今後の交渉はしやすいしな。

後は村人が帰ってこれば一旦は落ち着くか、、、


・「すまない、少し休ませてくれ。

今回の戦いは流石に堪えた、、、」


そう言いながら倒れそうになる。

緊張の糸が切れたのだろうか、、

このまま倒れても良いか。


・ハナ

「裕樹、私が運んであげる」


そう言って優しく受け止めてくれた。

色々と今後の事も話したい気もするが、、、

限界だ、、、これ以上は気を張っていられない。

俺は必死に繋いでいた意識を手放した。



~翌日~


目を覚ました。

そんな俺の目に入り込んできたのは、

ハナの可愛い寝顔だった。


・「お?おぉ?」


混乱する俺を追撃するかのように目を覚ますハナ。

何だかしてやったり感が凄く無いか?


・ハナ

「あ、おはよう裕樹」


・「ぉ、ぉぉ。

おはようハナ。」


必死に冷静を保つが声が裏返る。


・ハナ

「寒かったから一緒に寝ちゃった。

嫌だった?ごめんね」


・「いや、全然嫌じゃないよ。

むしろ嬉しいというか、ハナこそ平気なのか?

気を失っているとはいえ、その俺も男だしさ、

その、、、ごにょごにょ。」


だめだ、この状況で平気でいられるほど俺は大人じゃない。そりゃ高校時代はモテて無かった訳じゃないが、、、


・ハナ

「セイナ奥様の言った通りね。

『あの方は女性に免疫がない』って言ってたもの」


笑いながらこちらを見るハナ。

何故だろう?いつもよりも大人に見える。

これが女性の小悪魔的姿なのか?


・「そ、それじゃ俺起きるから。

は、ハナはまだ寝ててもいいぞ。」


苦しい言い訳と共にベットから降りる俺。

見事に踏む外してコケる俺。

何故か後ろで笑い声が聞こえる?

振り向くとそこには村長夫婦とビルドがいた。


・カイブ

「はっはっは、昨日の仕返しだ。

ありがたく受け取ってくれたまえ」


笑いながら話してくるカイブ。

ニヤニヤしているビルド。

あの野郎、後でぶっ飛ばす。


・セイナ

「ハナちゃんが風邪引くといけないから。

一緒に寝るのも良いでしょう?仲間なんだしね。」


カイブと手を繋ぎながら本物のセイナが話しかけてくる。絶対に楽しんでるよね?

気が付くとハナも起き上がりセイナさんの元に移動していた。何やら小声で話しているけど、いつの間にあんなに仲良くなったんだ?


・ビルド

「昨夜はお楽しみだったみたいですね。」


某TVゲームの宿屋のおやじみたいなセリフを言うビルド、ムカついたのでとりあえず殴っておいた。


・カイブ

「今までの経緯はある程度聞いた。

とりあえず食事にしよう。

今後の事も色々と話もしたい。」


カイブ村長の提案により食事となった。

ここからが本当の目的だな。

なんとか獣人国への道のりを聞かなければ、、、

朝の嬉しいハプニングのおかげで頭はバッチリ冴えた。上手く聞き出してやるから覚悟しておけよ。


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