第8話 潜入、奴隷の町
そして次の日になる、、、
・ライル
「起きたか、、、
おはよう裕輝。
30分後にミーティングだ。
それまでに出発の準備を頼む。」
・了解だ。
俺は片付けを済ませて戻ってくる。
・ライル
「随分と慣れて来たじゃないか。
さて、朝飯を食いつつミーティングするか」
ハナが食事を持ってくる。
・ハナ
「お待たせしました。
簡単な物です、お口に合うと宜しいのですが。」
・毎回ありがとう
ハナの料理は美味しいよ。
助かる。
・ハナ
「はぅぅぅ、あ、ありがとうございます。」
・ライル
「、、、、落ちたな。
やるな、裕輝」
・野営の飯も毎回こう美味いとやる気が出る。
飯ってのは大事だな。
・ライル
「、、、、トドメも刺したな。
やるな、裕輝」
・ハナ
「ぁぅぅぅ、ありがとうございます。」
赤くなりモジモジするハナ。
・ライル
「さて、では聞いてくれ。
これから向かうのはハーラルと言う町だ。
モーダル国への国境を兼ねた町となる。
今回は既に協力者と話を通してあるから、そこからの侵入となる。
ハーラルの町は奴隷市場が活発な所だ。
そこで奴隷を仕入れて諸国に売り渡す事で富を得ている。
裕輝、余り派手に暴れるなよ?」
・うっ、善処する。
・ライル
「ハナ、覚悟は良いか?
この先、想像以上に辛い光景を見る事になる。
半端な覚悟だと直ぐに心が折れるぞ。」
・ハナ
「はい。
心を強く持ち、、、
無理だと感じたら即時に退却します。」
・ライル
「入って直ぐなら出る事も容易だ。
早めに言えよ。」
・ハナ
「了解。」
・俺も、早く言うよ。
・ライル
「お前は気合でついて来てもらう。
頑張れよ。」
・マジか、、、、俺には厳しいな。
ライルさん、鬼やわぁ。
・ライル
「やかましい、俺1人だとキツいんだよ。
助けると思って、、、な?」
・わかってるよ、ただ、、、
騒ぎを起こしたらすまん。
・ライル
「まあ、その時はその時だ、、
好きに動け。
良いか、俺が奴隷販売業者で、お前達が奴隷を買いに来た客夫婦で行く。
後で用意した服に着替えてくれ。
では、食後正面から行く。」
3人は食事を終えると直ぐに準備に掛かる。
そして、町に向けて出発する。
・ハナ
「裕輝さんと、夫婦、、、、」
ハナが何かぶつぶつ言ってるぞ、
緊張してるのか?
まあ、俺も緊張してるからな、、、
・しかし、富裕層の服ってのはどの世界でも派手かシックなどちらかだな。
似たり寄ったりだ。
とは言え、富裕層の人には会った事ないけど。
俺とハナの服は派手な飾りを多く付けてある。
一方ライルは黒で揃えてあり出来る大人に見える
・なんか、ライルカッコいいな。
・ライル
「おっ、嬉しい事言ってくれるじゃない。
似合うだろ?」
・あぁ、リーシュがいれば良かったな。
・ライル
「そんな事言うなよ、、、。
国命だから仕方ないじゃん。」
・しかし、歩きで大丈夫?
富裕層が歩きで来るもんかね?
・ライル
「近場で降ろして貰ったと言えばいい。
この国ではよくある事だ、、、
まあ、聞かれないだろう。
業者も余り近づきたくない国らしいからな。」
国境に向かって歩く3人。
周りを見ると、ちらほら歩く人も居る。
成る程、これなら怪しくはないか。
門が近づくと1人の兵士が手招きをしている。
・ライル
「よし、ちゃんと居たな。
あそこで手続きを行う、ついて来い。」
とにかく俺とハナは目立たないように心掛ける。
服が派手だからなんとも言えないけどね。
・???
「オラァ、しっかり歩け。」
・なんだ?
俺は横を見る、、、
すると人型の獣の男が2人で荷台を引いている。
傷だらけだ、、、
荷台の上には数人の女性、、、獣?
あれが、獣人か?
・ハナ
「裕輝さん、、、あれは、、、
まさか、あれが奴隷?」
・ハナも見るのは初めてか?
確かに、ライルの言う通りだ、、、
何も聞かされてなければ飛び込んでた。
くそっ、想像以上にキツいぞ。
・???
「馬が潰れたのはお前らが重いからだ。
しっかり歩けオラァ」
容赦なく鞭を打たれる。
獣人は文句を言わずに、ただ荷台を引く。
・ぐっ、、、、耐えろ。
ぬぐぅぅ、。
・ハナ
「裕輝さん、、、、」
・ライル
「おい、行くぞ。
裕輝、よく耐えたな、、、
直ぐにでも突っ込むと思っていた。
ここで騒ぎを起こしてアイツらを助けても根本的に直さなきゃ意味がない。」
・わかってる、、、
わかってはいるんだ。
くそっ。
・ライル
「さあ、行くぞ。」
ライルは俺の肩を叩き、落ち着かせてくれる。
・なんて胸糞悪い町だ。
ぶっ潰してぇ、、、
・ライル
「俺も同じ意見だ。
その闘志、もう少しだけとっとけ。」
・ハナ
「裕輝さん、、、私も協力します。
今は、一緒に耐えましょう。」
・ハナ、、、ライル、、
ありがとう、少し落ち着いた。
行こう。
3人は町に入っていく。
裕輝の心に強い火を灯しながら。
・ライル
「本当に、よく耐えてくれた。
礼を言う。
その角を曲がれば目的地だ。」
町の端にある屋敷に向かって歩く。
門兵はライルに敬礼している、、
オルドラの兵士なのか?
・なあ、ライル。
・ライル
「今はまだ何も聞くな。
俺がいいと言うまで何も言葉を発するな。」
短い言葉の中に、ライルの焦りが見え隠れする。
想定外の事が起きてるな。
俺は頷き、ハナを庇う様に少しだけ前に出る
・???
「これはこれは、お久しぶりですな。
確か、、、ラース君だったね?」
・ライル(ラース
「お久しぶりです、バラッド卿。
今日は何か御用でしたか?」
・バラッド卿
「うむ、本日獣人の奴隷が入ると聞いてね。
早速購入手続きを行いに来たのだ。
早くしないと、生きの良い獣が売り切れてしまうからな」
・ライル(ラース
「そうでしたか、流石はバラッド卿!
素晴らしい判断だと思います。
良い奴隷は購入出来ましたか?」
・バラッド卿
「よくぞ聞いてくれた。
なんと王家の血筋を持つと思われる獣のメスを買えたのだ!
凄いだろう?
本当かどうかは判らんが、紋章の首飾りをしていたらしいからな。
高貴な者なのは確かだろう。」
・ライル(ラース
「それはそれは素晴らしい。
おめでとうございます。」
・バラッド卿
「はっはっはっ!
ついでに周りの獣も買ってやったわ。
囮で変わっている可能性もある。
買った後でゆっくりと聞いてやるとする。
奴らの叫び声を聞きながら酒を飲むのがワシの楽しみでのぉ。
今から楽しみでしょうがない。
ラース君も招待しようか?
好きなメスを抱かせてやるぞ?」
・ライル(ラース
「ありがたき幸せに、、、しかし、私は旦那様のお客様を案内しなければなりません。
申し訳ありませんが、、、
またご機会が有りましたら。」
ライルは紳士な礼をする。
凄い絵になるな、、、
・バラッド卿
「そうか、、、それは残念だ。
宴は明日の夜に行う。
気が変わったらいつでも来たまえ。」
バラッド卿は嬉しそうに去って行った。
・ライル、、、あいつ殺していい?
・ライル
「辞めろ、我慢した意味がなくなるだろ!
全く、、、
金持ちの奴はドンドンひん曲がっていくな。
あれが欲望に忠実な人の姿なんだろうがな。
魔族の気持ちがたまに判るのが怖いよ。」
・あ〜、、、同感。
余り視野を大きくしすぎると、人と敵対しそうだわ。
・ライル
「まあな、、、この話辞めよう。
何か悲しくなって来た。」
・そだな。
ハナ?大丈夫か?
ハナは下を向いて震えている。
泣いている様だ。
・ハナ
「酷すぎます。
獣人も同じ生き物なのに、、、
余りにも酷すぎる。」
・ライル
「弱肉強食、、、そう割り切るしかあるまい。
と、言いたい所だが、裕輝は行くんだろ?
明日、バラッド卿の宴に。」
・お前すげぇな、、心読めるのか?
・ハナ
「裕輝さん?」
・状況は知らん。
だが、目の前の悪を見過ごす事は出来ん。
我儘だってのはわかっているが、こればかりは理屈じゃない。
俺はアイツをぶっ潰す。
・ライル
「お前を連れてきた甲斐があったな。」
・ライル?
どう言う事だ?
・ライル
「お前は揺動だ。
お前が暴れている隙に俺は本丸を落とす。
いや、俺たち、、、か。
レジスタンスと言う連中がいてな。
今回の協力者だ。」
・成る程ね、納得した。
揺動だって言うなら派手にやっても大丈夫って事だな?
・ライル
「当たり!冴えてるぅ〜。
元々、裕輝を連れてきたのは暴れてもらう為だしな。
普通の兵士だと直ぐに捕まるだろうが、お前なら切り抜けれるだろう。
そこは期待している。
上手く時間を稼いでくれ。
俺とレジスタンスが中枢を落とし、この町自体を破壊する、そして難民を連れてオルドラ王国に帰るのが任務だ。」
・おいおい、そんな事したら戦争にならないか?
大丈夫なのか?
・ライル
「その通りだ。
間違いなくオルドラとモーダルの戦争になる。
国王がな、奴隷制度を見過ごす事に限界なのさ。
今回は奴隷となった者を解放する事を条件に獣人国と同盟を結ぶ事となっている。
そうすれば魔族への牽制にもなるからな。
戦略的にも失敗出来ないって訳だ。」
・最初の門で暴れてたら失敗してなかった?
何で言わなかったんだよ、、、
・ライル
「戦争ってのはな、、、悲しいが綺麗事だけじゃ勝てねぇんだ。
正面から行っても無駄に犠牲が増えるだけだ。
自分を抑えられるかどうか、試してみた。
もし、お前が暴れてたら俺がねじ伏せて抑える他はなかったな。
実際冷や冷やしたぜ?お前と戦うのはしんどいし」
・かぁ〜全く、時間がないってのは判るが、試されてたと思うと腹立つわ!
・ライル
「お前は俺の睨んだ通り、、、
ちゃんと冷静に対処していた。
バラッド卿の話も黙って聞いていたしな。
我慢出来そうにない時は俺に許可を求めた。
流石、俺の相棒だ。」
・はんっ、嬉しくねぇよ。
とりあえず、宴は明日って言ってたな。
悪いが場所を教えてくれないか?
下見をしたい。
・ライル
「ふふふ、頼んだぞ。
場所は教える、下見も必要だろう。
突撃は明日の昼だ。」
・夜じゃないのか?
・ライル
「本当は夜にやりたいが、夜まで待っていたら獣人の女性達に消えない傷が残ってしまうだろ?
朝に奴隷の搬入がある。
昼に突撃ならまだ酷い事はされていない筈だ。
あくまでも予想だからな、、、
細かい調整はお前に任せる。
出来そうか?」
・お前の指示で動けて幸せだと思っちまった。
俺の気持ちをよくわかってるな。
・ライル
「まあな、親友だからな。」
2人は笑い合う。
ハナは2人のやり取りを見詰めている。
・ライル
「では、屋敷に入るが、お前はどうする?
レジスタンスと顔合わせしておくか?」
・いや、直ぐにでも下見に行く。
その後帰ってくるよ。
・ライル
「わかった。
では、ハナは俺と来てくれ。
俺達はレジスタンスと共に行動するから顔合わせをしておこう。
裕輝、任せたぞ」
俺はライルに地図を貰い、
バラッド卿の屋敷に向かう。
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