第5話『ハイブリッドカー』

俺はタクシー運転手だ。

最近電気自動車だのハイブリッドカーだの音の出ない車が街を走っている。

会社の方針変換で、俺の車もハイブリッドカーになった。

毛嫌いしていたが、乗っていたら意外と愛着が湧き毎日の仕事が楽しくなった。

「ふぅー。あと一人ぐらい客を探すか?」

そう思いながら、俺はタクシーを走らせる。

「お!客かな?」

歩道で手を振っている男がいたので一応声をかけてみることにした。

「タクシーですか?」

男はコクリと頷いたので俺は車から降りて男を乗せた。

「目的地は?」

「水面墓地まで…」

男が言った水面墓地とは肝試しの定番と言われている心霊スポットだ。

「肝試しでもすんるですか?」

「ちょっと違います…待ち合わせをしていまして…」

俺はそれ以上は気にせず水面墓地へと向かった…。


15分後ーー。

「着きましたよ」

俺は男にそう言うと男は俺に一礼して890円を置いて行った。

いつのまにか男は消えていた…。

「ま…まいどありー。」

俺のハイブリッドカーは次なる客を探して、音もなく走る。

あの男のように…。

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