◇第47話◇秋風
確かに少し過ごしやすくなってきたようには思う。
あんなに鳴いていた蝉たちの声も、いつのまにか聞こえなくなった。
それでも何だか秋の実感が、まだ湧かない。
最近は病院に行くくらいが外出らしい外出だけど、外はやっぱり暑い。まだ夏が終わっていない気さえする。
そうはいっても、もう明日から10月。
気持ちを新たに……と思うけれども、子供たちと共に迷走中。
長男の理屈屋ぶりは、わたし譲り。
次男の不器用さや末っ子の頑固さも。
だから余計に歯車がずれるとややこしくなるんだろう。
わかっていても今のわたしは疲れすぎていて。
だけどそれでも大切。
だけどそれでも守りたい。
イトシイ、という気持ち。
確かに子供たちがいなかったら、わたしはもっと自由だったかもしれない。
もっと気軽に、もっといろいろなことで気に病んだりストレスを溜め込むこともなく……。
正直、そう思うことが無いわけじゃない。
でも、そのもしも……は、わたしにはやっぱり寂しすぎる。
ポッカリと抉られたように。
わたしは弱いニンゲンでダメなお母ちゃんだけど、だから、きっとカミサマが、わたしにこの子達との出逢いと絆をくれたんだろうと。そんな気がしてならない。
◆
ただ、うまく言葉にならないけど、これはあくまでも、わたしの場合。
それだけは蛇足承知で言っておきたい。
子供がいない人が寂しい人なわけじゃない。
わたしの人生だって、この道をきたから、子供たちと出逢ったけれども、出逢わない子供のいない人生だってあっただろうし。
だから、そのわたしが不幸なのかといえば、それは違うと思うのだ。
◆
沢山の分岐点、沢山の選択、沢山の道。
その中の一つを、わたしは今、歩いているにすぎない。
この今のわたしには子供達の存在は、どんなにぶつかり合おうとも、時に重さに根をあげそうになっても、やっぱり居てくれてありがとうなのだ、と。
ただ、そういうこと。
◆
迷走が何処まで続くのかはわからないけど、でもこの子達と一緒だから。
わたしは踏みとどまれる、諦めずにいられる。
胃の痛くなる思いを何度もさせられてる原因達が、わたしを此処に踏みとどまらせてくれてるという、何とも矛盾した状況だけれど(苦笑)
それでも確実に日々は過ぎていっている。
時の流れは、その真っ只中ににいるときには感じる余裕さえないが、実際は常に止まることはない。
◆
そんなことを考えていたら、開けた窓から涼やかな秋風。
新しい季節の始まりを告げるかのように、レースのカーテンが揺れた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
*この頃のこと*
奇しくも今日と同じ10数年前の9月30日の日記です。
沢山の色々なことがあって、そして現在のわたしが此処にいるということ。
ただ、ただ、感謝。
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