欲しかったもの

深山雪華

第1話

愛とは何か

愛されるとは何か

どうしたら愛されている証拠なのか

僕はそれが知りたかった

だからいっぱい考えた。小さな頃からずっとずっと。


父親はいない。僕は誰の子か分からないらしい。

母親は夜な夜な男を連れ込んでは行為をし、取っかえ引っ変えしている。


僕のことは基本的に空気か何かだと思っているようでご飯も作らず、家には2、3日いないのが当たり前で、たまに1万円札が机に置いてある。

それで僕はご飯を作り、生活に必要なものを買って過ごす。


そんな母親でも、我が子を可愛いとやはり母親なら思う時があるのか、思い出したように服を一緒に買いに行き、好きなハンバーグを作ってくれ(本当は好きではないけれど母親の得意料理だから好きだと言っている)、そしてしばらくするとまた僕は空気に戻る。



僕は愛されているのだろうか。愛されたことがあるのだろうか。そもそも「愛」とは何なのだろう…

沢山考えた。何年もかけて少しずつ考えた。


僕の答えは「愛されていない」だった。


愛されたことがあるかどうかは、「赤ちゃんの頃だったらあったのだろう」という結論だった。

小さな赤子はこまめに面倒を見なくては死んでしまう。僕がここまで育ったということは、少なくとも赤ちゃんの時母が面倒を見てくれたということだ。


さて、問題は「愛」とは何かということだ。


僕は、きっと「愛」とはいつもご飯を作ってくれ、抱きしめてくれ、服を買ってくれる、普通の両親のいる家庭のように可愛がってもらう。

それが愛されている証拠だと、それが愛だと思った。



答えは出た。

でも愛を今更貰うことなんて出来ない。愛を貰えないまま育った僕は「愛され方」が分からなかった。母親もきっと正しい「愛し方」を見失ってしまったのだろう。


だから僕は死ぬことにした。誰にも必要とされず、愛されない僕はいらないと思った。


歩道橋から身を乗り出し下を覗く。

ここから降りてしまえば高さが足りなくて死ねなくても車が僕を轢いてくれるだろう。

それなら完璧に死ねる。


ふわっとした後、強い衝撃に意識が遠のく。


僕は少し期待して飛び降りた。

僕が死んで母親が悲しんだらそれは…僕が「愛されていた」証拠になるから。


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欲しかったもの 深山雪華 @miyamayuzuha

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