短篇集(短)

貴音真

第1頁「寝言」

「……はい…はい……わかりました…」


(ん?隣の子、また言ってんな)


 隣の部屋に住む女の子は毎日決まって夜中の2時15分になると寝言を言う。

 俺が、趣味である夜中にネットのホラー小説を読むという行為を楽しんでいると、必ず2時15分にその子はを言い始める。


 最初は、まだ引っ越して来たばかりのその子が、うちのアパートの壁が薄いこと知らずに夜中に誰かと電話している声なのかと思ったが、そうではなかった。

 その理由は、がその子が2週間前に引っ越して来た日から続いていたからだ。

 さすがに毎日同じ時間に電話する人はいない。

 隣に引っ越して来たその子が物凄くカワイイこともあり、俺は毎日、なんとなくそのに耳を傾けていた。


「………はい……わかりました………そうします………隣の部屋を………」


(ん?隣の部屋?………俺じゃね?)


 彼女の部屋は角部屋なので隣は俺しかいなかった。


(隣をなんだって?………)


 俺はいつもはこんなことしないのだが、の内容が気になり壁に耳をつけて耳を澄ませた。


「……………………」


(………………………)


 もうは聞こえなかった。


「おいおい、隣がなんだって?気になるじゃねーか………………」


 思わずそう呟いていた。


「なら今から教えにいってやるよ………」


 壁の向こうからがした。


 ちなみに、彼女は独り暮らしで、隣の部屋に男など住んでいない。


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