第九節




「どうしても里咲の居場所を教えてもらえませんか?」



 最後に私は意地汚くそう聞いた。

 けれど、佑也さんは首を横に振る。


「申し訳ないけどそれだけはできない。里咲を助ける為にも、これだけは我慢してほしい」


 里咲を助ける為。

 その言葉に、私は食い下がる選択肢を捨て去るしか無くなる。

 渋々ではあるが、どこか清々しい気持ちで私は佑也さんに頷きを返した。


「救うなんて、私たちが言えることじゃないけどね」


「だとしても、俺たちが原因なんだから俺たちがやらないと」


「ま、そうだよね」


 あかねさんの自虐に、佑也さんは笑った。

 笑って、それから決意を固めた様に言った。

 自分たちが原因なのだから、そのかたは自分たちがつけないといけない、と。


 二人の言う通り、里咲が虐げられた理由は二人に在った。

 ”正確には二人にも”だ。


 決して、あかねさんと佑也さんだけが悪いわけではなかった。

 だから私は、二人を恨んだりはしない。

 よくも私の大切な人を苦しめたなと、責めるようなことはしない。


 つい先刻さっきまでは恨む感情を保持して居たが、今はもう手放している。

 私は二人を恨まないと、そう決めたのだ。


 誰が何と言おうと、それが私の決断だ。


「まぁ、里咲の場所は教えられないけれど、里咲には落ち着いたら燈ちゃんに会いに行くよう言っておくよ。だからどうか、里咲から会いに行くまでは里咲を待っていてあげてほしい」


 佑也さんの言葉を私は受け入れた。

 これも、私の決断だ。

 私の覚悟だ。


「私は里咲を待ち続けます」




 その決意にお礼の言葉を添えて、私は家への帰路に着いた。



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