第五節
家に帰るとお母さんが既にご飯を作り終えていて、私はお母さんに急かされるように席に着き、ご飯を食べた。
粉っぽい唐揚げとキノコの炊き込みごはんを食べていると、疾とうにごはんを食べ終えていたらしいお母さんが向かいの席に座り、私の顔をまじまじと見てきた。
「何? どうしたの?」
「いや、別になにもないよ」
だから安心して食べなよ。とお母さんは言ったけれど、まじまじと眺められてゆっくりとごはんを食べられるはずもなく、私はさっさと茶碗一杯分の炊き込みごはんだけ掻き込んでお風呂へと向かった。
温かい湯船に浸かり、天井に溜まった水滴がポツリポツリと落ちてくる様を眺めていると、私の頭に一つの可能性が浮かび上がってきた。
「もしかしたらあの子かも……」
私の席に座っていたあの子が間違えて持って帰ってしまったのかも。
だったら……
「またあの子に会わないとなぁ」
そのためにも月曜日は学校に行かないとダメだ。
浮かび上がったこの可能性がこじつけでしかない事は十分に分かっている。
そのために彼女に会わなければならないなんてことも、学校に行かなければならないなんてことも、全てがこじつけでしかない事は十分に分かっている。
なんて考え事をしている間にじんわりと眠気が襲ってきて、私は慌ててお風呂から出た。
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