第79話卒業1/3

卒業1

卒業1


実は、純の合格発表の次の日に卒業式があった。国立前期発表の次の日に卒業式ってどうなんだろう、って思うけど・・・・・・。

俺以外4人とも希望通りの大学に合格していて、うちの高校ではかなり上位の大学なので、結構皆に驚かれていた、特に武村が。

俺は1人おとなしく、自分のふがいなさを噛みしめながら純を見守る。

1年、2年の男子のそれはすごい数、案の定 工藤も来てたけど、俺を見て、苦虫をつぶしたような顔をして去って行った。

俺以外の人に対し、純の態度は、『あの村井さん』だから、前カレの須藤や工藤のような執拗にせまる奴とか危ない奴以外は、大丈夫。だから俺は遠目で純を見守る。

そういう俺も、1年の時に同じクラスで、彼女に振られてボッチだった時、何度かバクドに誘ってくれた女子2人から声をかけられた。

「高谷君、久しぶり」

「あー、佐々木さんと山本さん、久しぶり」

「卒業だね」

「うん」

「寂しいな~」

「そっかー?」

「高谷君はいいわよ、あんな美人の彼女がいるんだから」

「うん、まあね、でも佐々木さんも山本さんもかわいいから、大学に行ったらすぐに彼氏ができるんじゃない?」

「ん~、まあ、そうかもね」

「ハハハ」「フフフ」

「ところで、どうしたの?」

「うん、一応ね、告白」

「え?」

「あのね、私達、本当は高谷君の事好きだったの、でも修学旅行の前に彼女ができたでしょ、びっくりして、田代さんと中野さんに聞いてみたら、2人はもうそんなに仲がいいんだ~ って思ってね・・・・・・」

「そうなんだ」

「最初は、あの村井さんと? って思ってんだけど、田代さんと中野さんから色々聞いている内に、2人お似合いかなって思って、でもね卒業したら、ほとんど会う事もないかなって思って、私達の勝手な話だけどけじめっていうか、お話だけでもしておこうと思ったの」

「そっか、ごめんね、佐々木さんも山本さんも、1年の時、俺が振られて落ち込んでから、結構慰めてくれたから、感謝してるんだ。2人ともかわしいし、優しくていいな~って思ってたんだけどクラスが変わったからねー」

と3人で話していると、ドドドーーー純が。

「こんにちは」

「あっ、村井さん、こんにちは」

「かっちゃんと? 何の話?」 笑っているけど、目は座っている。

「うん、告白」

「やっぱり」

「知ってたの?」

「うん、田代さんと中野さんから聞いてたから」

「そっか、3人仲良いものね」

「そうね、始まりはかっちゃん繋がりだからねー」

「そうね、確かに、高谷君繋がりかー、あっ 大丈夫よ、今更どうしようとか思ってないから、卒業したらもう会わないかなって思ったら、一応『思い』だけ伝えておこうと思って、私達自身のけじめっていうか区切り、勝手なわがままなんだけどね」

「そっか」

「そう、本当はもっと早く、お話して、『あの村井さん』がデレデレなところ見てみたかったんだけど」

「ヘヘヘ 田代さん?中野さん?」

「うん、2人から」

「そっかー」

「純、あっちは大丈夫?」

「うん、いいの、挨拶だけだし、かっちゃんの事の方が大事だもん」

「何?」 何が重要?と思わず声を出すと

「だって、かっちゃんに告白してきたんだよ」

「まあ、でも、2人とも純の事知ってるし、俺は純!だから」

「ヘヘ、でも、やっぱり気になるよ~」とちょっと困った顔をして甘えるように俺の袖を掴む。

「へ~、村井さんって高谷君の前だとそういう話し方するんだ」と山本さんが納得したような口ぶりで

「えっ? なんか変?」

「ううん、いつも見る『あの村井さん』の話し方と全然違うから」

「田代さんと中野さんにも言われる」

「ほんと村井さんは高谷君の事好きなんだね」

「うん、大好き」 

そうやって話していると、田代さんと中野さんが俺達を見つけ、こっちにやって来て

「佐々木さん、山本さん、どうしたの? 」

「うん、高谷君に告白しに来たの」

「えっ?村井さんの前で?」

「ううん、告白してたら、村井さんが来たのよ」

「そう、やっぱりね」

「そう、って?」

「私達も似たような経験してるから」

「そうなんだ」

「そう、村井さんの行動力とあの雰囲気の変わりよう、びっくりしたでしょ」

「うん、すっごい勢いでこっちに来て、ニコニコてるんだけど目は座ってて、威圧感がすごかった」

「うん、そう、もう高谷君の事になると、周りが見えてないくらいすごいのよ、それに高谷君の前だと女の子になっちゃうのよね~」

「うん、それもびっくりした」

「それで告白って?」

「卒業でしょ、もう会えなくなるし、気持ちの整理のため、だから高谷君に何かしようなんて考えてないんだけど、村井さんが来てびっくりよ」

「そりゃそうよ、村井さんって『高谷君命』だものね?」

「うん」うれしそうに純がうなずく

「でもほんと、びっくり、前に田代さんと中野さんに聞いてたけど、本当なんだね」

「ほんと、私達が見て、知ってる村井さんって『あの村井さん』だもの、それが・・・・・・ねえ」

「いや~、実は俺も最初は驚いたんだ 」

「えっ? そうなの?」純が驚いた顔で俺を見る。

「いやいや、良い意味だよ、うれしいんだ」

「ほんと?」

「うん」そういうと、うるうるした目をしてほとんどくっつくくらいのところまできて、すぐにキスできるような顔を俺に向けて、両手で俺の腕を掴む。

「村井さん、皆見てるから」と中野さんが

「えっ? 何?村井さんってこんな人なの?」 山本さんが驚いて

「純、皆が見てるから」

「でも~」

皆が見ているけど、もう卒業だし、と思ってそのままハグして耳元で、

「帰りに純の部屋でね♡」

「うん♡」離れると

「うわ~、村井さんって本当に高谷君の事が好きなのね」

「そうなの、この2人、ときどきこうなるの」田代さん

「そっか、田代さんも中野さんも良く見るの?」山本さん

「うん」田代さんと中野さんがユニゾる

「こんな村井さんを見ると、この2人に対しては見守るしかないよね」

「そうね、それで村井さんと仲良くなったの」

「そうなんだ、いつも5人?だっけ、 一緒だよね」

「そうなの、でもほんと、この1年間が一番楽しかった。」

「ほんと?」と純と俺

「うん、5人でいろんなことしたじゃない、それが一番密で一番の思い出」

「そっか~」

「ほんと、高谷君には感謝してるの」田代さんがそう言うと、中野さんが続けて

「村井さんとも友達になれたしね」

「それと、武村君もね」と田代さんがそう言って俺の方を見ると、いつのまにか後ろに武村が来ており「おう、そっか」

「そうよ?」と中野さん


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