第37話学校では

学校では


学校が始まると、俺も村井さんにべったりになっていた。でもクラス内では・・・難しい。


予備校のある日は、行き帰りの村井さんと一緒にいようと思い、朝早くバイクで村井さんの家に行き、一緒に学校に行く、時々武村が駅にいるけど、あいつはたいて遅れて来るくるからギリギリになる、だから、待たないで2人で電車に乗って、でも改札を出るときに、バラバラに。


だいたい改札を出ると、うちの学校の生徒がいて、その中に村井さんのグループがいる時があるし、それに村井さんは有名人だから、誰が見てるかもわからない。


少なくともあいつときっぱり別れるまでは、2人の関係は秘密にしておく、ただ予備校の授業がある時は帰りが遅いし、あいつは3年で部活は終わっているから時間が自由、村井さんの帰り路で・・・村井さんが危ないと思い提案した。


村井さんは、最初、俺に無理しないで、と言ってきたが、やっぱり心配なので、当分の間だけという事で、そうしたけど、村井さんは、『本当はね、とってもうれしいよ 』と言ってくれ朝と帰りが一緒。


こうやって見ると、単なるバカップルみたいだけど、恋愛経験のない村井さんが初めて人を好きになって、心をコントロールするのが難しく、いつも一緒にいたい気持ちが強いらしい。


学校の教室では、村井さんが、彼と別れたいけど彼が別れるのを拒否してその仕返しが怖い。


カーストグループの中でそう言ったところ、その中に野球部の人間がいて、あいつに確かめたところ、あいつは、そんなことはない、ちゃんと付き合ってる、推薦を受けている大学の野球部と一緒に夏合宿に参加し、学校が始まってからも大学の方の練習に参加している、だから純と会ってないだけだ、と言ってきたらしく、村井さんはスマホの、あいつに送った『別れます』と拒否リストのところを見せて自分の方が正しいと説明した。


それでカーストグループの連中はなんとか納得したけど、それからが大変だった。

その次の日からカーストグループは5人程度だったのに、昼休みとかは10人くらいに膨らんでいた。


“村井さんが彼氏と別れたみたい“という話を聞いて、カーストグループの友達連中までも昼休みになると押し寄せてくる。


それだけじゃなかった。毎日のように、知らない3年や別のクラスの男子が、村井さんを呼びに来る。


その都度断っているけど、時々しつこい人もいて怖いからということで、俺からもお願いして武村に一緒についてもらっている。


俺が行けば一番良いのだけれど、まだあいつとケリがついていないから、ちょっと離れたところで見守るだけ、嫉妬が・・・・・・我慢。


面白かったことは、武村が俺を呼びにクラスの入り口に来た時、村井さんが「いっちゃん」と呼んで武村が「おお」と言った時の皆の顔、特にトップカーストの連中。

純が問い詰められたらしいけど、武村とは小学校から一緒で家も歩いて5分くらいの近所、昔からの幼馴染と言うと、納得するも、

『あいつは危険だから近づかない方がいいよ』

とアドバイス?があったそうだ(笑)。


俺は予備校の帰りに、一緒に帰る時に村井さんが今日あった事を話してくるので、「大変だね、もうちょっと我慢してね、側には必ず俺か武村がいるから大丈夫だかね」って慰める。


当初、予備校のある日だけだったのが、いつのまにか、毎日朝村井さんの家にバイクで行くようになっていた。


ただ、電車の中は、村井さんがあまりにも有名人なので、村井さんが見える位置でストーカーみたいにしている。


ちらちら俺を見てそこにいるのがわかると安心するみたい。


帰りは、電車を降りて改札を出ると、村井さんが俺にべったりくっついて、歩きにくいけど・・・うれしい、村井さんの豹変ぶりっていうかヤンデレが激しくてちょっと驚いてるけど。


いつのまにか、行きも帰りも一緒になっていた。


1人にするには危険だし、村井さんも怖いみたいだから、それに一緒にいたから。

学校では、いつものあの村井さん、2人きりの時は女の子の村井さん、2人きりの時の村井さんは誰も知らない俺だけの村井さん。


学校が始まって最初の頃、村井さんが

「武村君をいっちゃんって呼んで、いっちゃんは私の事を純って呼んでるのに、なんで恋人の高谷君は私を村井さんって呼ぶの?私も高谷君のままなの?」


と言われ「じゃあ2人きりの時は、名前で呼ぶようにしよっか」


「うん」


それから、村井さんは俺の事を「かっちゃん」 俺は村井さんの事を「純」と呼ぶようになった。


こわいのは学校にいるとき、ときどき間違えて名前で呼びそうになる。


村井さんも俺の事を「かっちゃん」と呼びそうになって、ごまかすのが大変だった。

学校では村井さんとはあまり接触しないけれど、武村がいるときは3人になることがある。


そんな時は「かっちゃん」「純」「いっちゃん」なので、武村が教室に戻った直後なんか そんまま名前で呼びそうになって、ばれそうであぶない。


あいつは、いまだ動かない。


どうしてだ?


俺から動くと、俺が人の彼女を寝取った、とか言われる可能性がある。


武村も純が軽い女に思われるから、あいつが動き出すまで我慢しろ、って。

純のためにも早くケリを付けたいけど・・・。




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