第32話SIDE 村井 -2/4

SIDE 村井 -2/4


最初、あまり目立たない男子生徒って感じで、普通に挨拶していたくらいだったけど、古文の時間に、野球部の事を考えてたら突然先生にあてられ困っていたら、彼が教科書を自分のと差し替えてきて、それを見ると大きく答えが書いてあったので、危機を逃れた。


一応お礼を言おうと思ったけど、名前を知らなくて、反対側の女子に聞いて【高谷克己】と教えてもらった。


今まで、話したこともない、どんな人かも知らないけど、隣の女子は、見た目はおとなしく見えるけど、よく見るとちょっとかわいいし、話しやすくて、とっても良い人、とても信頼できる人、と教えてくれた。


その子は1度隣の席になった事があるらしくて、その時に色々な話をして親しくなったと言っていたけどそういうものなの?


最初は彼女の話を聞き流し、普通のお礼を言ったら、普通に返してきてちょっとびっくり、大抵の男子は私が話しかけると、恐縮してカタコトになったり、仲良くなった気でニヤニヤしながら、しつこく余計な話をしてくるのに、サラっと普通に返してきた。


それから、授業の合間の休み時間に少し話すようになって、音楽の事や、私の彼の事とか野球部のマネージャーの仕事の話とか、確かに話しやすいし、良い人っぽい、でも私は皆が言うトップカーストグループのお友達と一緒にいるし、授業が終われば野球部にいくから、彼の事は隣の女子の言う通りなんだろうな、って言う程度に思っていた。


そうしていると、ある時いっちゃんが突然クラスの入り口に来て、大きな声で高谷君を呼んだ、いっちゃんは相変わらず、あの恰好で皆から怖がられていたし、そのいっちゃんが高谷君を直に呼びに来たから、何があったんだろう、と思っていたら、高谷君はニヤニヤしながらコーヒーパックを手に持って、貸したお金を返してもらったとか。


何もなかったんだ、と思っていたら、また次の日、いっちゃんがやってきて、高谷君が呼び出され、またコーヒーパックを持って戻ってきたので直接高谷君に聞いてみたら、「昨日の100円の利子」って100円の利子に100円のコーヒーパックって・・・


高谷君が「心配してくれた?」って普通に聞いてきたので

「なわけないじゃん」って言ったけど、ちょっと気になる。


あんな風になったいっちゃん、いろんなところでトラブルをおこしている噂、他校の生徒と喧嘩したり、夜の街で補導されたりしている人とどこで知り合ったんだろう。


仲良くなったら、他のいっちゃんの友達みたいに、見た目が同じ風に変わるはずだし、授業を途中で抜け出したりするようになるけど、高谷君は変わらず今まで通り。


実は影ではすごいワルとか・・・、でもこの前の古文の時とか英語の時はちゃんと勉強しているようだし、でも成績優秀者には名前はなかったと思うから、私の方が頭は良いわよね・・・・。


それから、何度もいっちゃんが高谷君を呼びに来て、その度にコーヒーパックをもらって来て、いっちゃんが昔のままだったら、高谷君の事を気にいったんだと思う。


いっちゃんの家はお金持ちで、昔から仲良くなって気に入った友達によくおごっていた。


 そうなると、彼のことがどんどん気になってきた。


それと、幼馴染のいっちゃんの事、私もずーっと気になってたから、他の女子の評判や、私が話すようになって感じた高谷君だったら言っても大丈夫と思って、移動教室の時に呼び止めて、いっちゃんの事情を話した。


そうしたら、彼は終わりのHRが終わると、すぐに飛び出していっちゃんのところに行ったみたいで、いっちゃんと2人で帰って行った。


次の日、また2人一緒に帰って行った。


その時はまだ興味本位なんだけど、高谷君が何者なのか、気になっていた。


実はこのころ、友達とよく恋バナをしていて気になりだした事があった。


友達の彼氏彼女に対して思う気持ちと私の気持ちが違う。


一緒にいたいっていう気持ち、私はマネージャーだから、あの人の彼女だから一緒にいるのが当たり前と思っていたら、皆は違っていた。


一緒にいたいっていう気持ちがあるということがわかった。


相手を想う気持ち、私は野球部の主将の彼女だから、その立場で何が良いかって行動していたし、最近は特に、どちらかと言うと、彼が一方的に、ああするから、こうするからって言われて、それに従ってそうしていたけど、全然違っていると思うようになって、でも私は野球部の主将の彼と相思相愛、と思われてるから、誰にも相談できない、いっちゃんはあんな風だし、私も高谷君が気になってるし、信頼できる人って言ってたから相談してみようと思って、色々考えて、浮気や二股はイヤ、だから彼に


「ちょっと気になる人がいるから、ちょっと会うのを控えたい」って言ってみたら、急に怒り出して


「ダメだ、お前は俺のものだ・・・・そいつを呼んで来い・・・ボコボコに・・・」


そう言って、私を無理やり用具置き場に連れて行かれ、鍵をかけて・・・無理やり・・・、そして泣いている私に向って・・・・とてもみじめだった、最悪だった。


怖くて・・・もう彼には会いたくない、『分かれます』と入れて、RINEも電話も拒否した。


もう野球部には行けない。そう思って、次の日、顧問の先生のところに退部届をだした。


野球部のマネージャーを辞めたので、時間ができたから、彼と話す機会ができたけど、席替えがあって離れたのであまり話はしない、以前より頻繁にいっちゃんと一緒に帰るようになって、ますます気になってきて、どうしても話てみたいって思って・・・・・・、


だから、朝いっちゃんを駅で待ち伏せして、いっちゃんに聞いてみた。


最初は相変わらず、何にも話さないけど、

「高谷君ってどんな人?」って聞いたら、


ボソっと

「いいやつだよ」って、いっちゃんまで、彼に接した人は皆彼を良い人って言うの?


次の日もその次の日も朝、いっちゃんと同じ電車に乗って、話してみると、一緒に予備校の夏季講習に行くことになっているって、あのいっちゃんが、ちゃんと大学受験をするって、見た目と話し方は相変わらずだけど、いっちゃんが昔のまじめでちゃんとしていた頃に戻ってきている、いっちゃんを変えた彼ってどんな人物なんだろうっと思うとますます気になって、私も来年から受験勉強のつもりだったけど、彼はもう今から準備に入っているのを聞いて、だったら私も夏季講習を受けようと思って、予備校名と校舎名を聞いた。


目指す大学が同じとは限らないから、さすがに同じコースとはいかないけど、同じ時期のコースを申し込んだ。


いっちゃんに「夏休みでも彼に会って話ができる・・・」って言ったら


「お前が男の事でそんな事言ったの初めてだな、それって、好き、ってことじゃないか?」って、そうなのかな~ 





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