第14話武村を呼ぶ

武村を呼ぶ


武村とのかかわりは、あの予備校の帰りにボコられているのを助けた事だけ、それだけで俺を気にったのか? 


疑問に思ったけど、それを直接聞けるほど仲が良いわけではないし、

相変わらず、あの雰囲気は・・・・・・


でも、村井さんから聞いた話だと、本当は真面目な奴なのに家庭の事情であんな風になったけど、なんだかんだ言って、バイクの事は誰にも言ってないようだし、俺にコーヒーパックをくれるって事はちゃんとお礼をする人間なんだ。


きっと悪い奴じゃない、本当、村井さんの言う通り良い奴なんだろう。


何故か俺にこうやって絡んでくるんだから、友達の少ない俺、バイクの事もあるし、俺もあいつに絡んでみるか。


そう思って、帰りのHRが終わってすぐ鞄もそのまま、武村の教室に行って、武村に話しかけた。


「武村、これから時間ある?」


「あ? ああ」


「ちょっと、バクドナルドに行かない?」


「ああ」


「鞄取ってくるから待ってて」


「ああ」


その返事を聞いて、すぐに自分の教室に戻りリュックを取って、武村の所に行き、一緒に下校した。


下駄箱で靴を履き替え、校舎を出て2人で歩いていると、引き攣った顔で俺達2人を見ながら後ずさりしている連中が多かった。


バクドナルドまで、2人とも無言、まあ男同士でペラペラ話すのもおかしいかと、それに相手はあの武村だからなおさら。


ちなみに武村は手ぶら、俺はいつでもバイクに乗れるよう学校もリュック。


途中で、武村の友達数人の集団(一応進学校にもいる数少ない危ないので有名な連中)に会った。


俺をにらんでから武村に声を掛けてきたけど、


「用事がある」って言って、武村は相手にしないで、そのまま2人でバクドナルドに入った。


ちょっとお腹がすいていたから、テリヤキセットを注文したら武村も同じものを注文して、

武村が2人分出したので、席についてから自分の分を出そうとすると

「いいよ、この前の分」


「えっ?あれは食堂の自販で返してもらったから」


「その利息」


「・・・・・・じゃあ、ごちそうさま」


そんなに執拗に割り勘のこだわるのも雰囲気が悪くなるし、武村んち、金持ちだし、って思い、お礼を言って、2人無言でバーガーを食べた。


食べ終わって、コーラを飲み、いもを食べながら話した。


「村井さんって 幼馴染なんだ」


「ああ」


「すごいよね、あんな美人が幼馴染なんて」


「ああ、でも俺の好みじゃないし、あいつも他に彼氏いるし、そんな感じだよ」


「へ~」


「そうだよ」


「村井さんから、武村の事聞いたよ」


「何が」


「家の事、両親の事、離婚の事、弟の事、武村が中学まで真面目だった事」


「あの野郎」


「いいじゃん、同じ中学の連中は知ってるんだろ」


「・・・・・・」


「いいよな~、将来は武村建設の社長だろ~、俺なんか親は普通のサラリーマンだから全部自分でやらなきゃいけないんだ、だから今から予備校行って、少しでも良い大学に行かなきゃって思ってるんだ」


沈黙の後、武村が、


「なんねーよ、あんなクソ会社の社長なんか」


「えっ、なんで?」


「そんなこと、どーでもいいだろ」


「父親の事?」


「かんけーねーだろ」


「まあ関係ないって言えば関係ないけど、あーやってボコられてるとこ見ると、助けなきゃいけないじゃん、めんどくさいけど、だからやっぱ関係あるよ」


「別に助けなくていいんだよ、おせっかいなんだよ」


「そうはいかないよ、だって、バイク、見つかったら俺がやばいから」


「・・・そうだな、バイク、チクられたら、お前アウトだもんな」


「そうだよ」


「チクんないからいいだろ、それで」


「そうはいかないよ、もし事件になったら、俺が目撃者とかになっちゃうだろ、そうしたらバイクのこともばれるから、 やっぱ関係あるよ」


「・・・・めっどくせ」 武村の顔が歪んでいた。




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