リクエスト

 自分用の朝食を作って食べていると、先に昨日の夜に買った物の残りである肉じゃがと白飯を食べ終わった後輩が、点けられていたパソコンへと近付く。


『おはようございます先輩。今日は夕ご飯にお鍋が食べたいです。できれば辛味噌味の』

「もう、本当、好きだよ渚ちゃん……!」


 既に後輩は盗撮カメラの場所を把握していた。そして、それをまるで無線ハムのように使って、今のような夕飯のリクエストまでしてくるようになった。本当に堪らないと、高揚感に酔いしれる。

 律儀に盗聴器の前に正座をして、こてんと文鳥のように首を傾げる後輩を映す動画にたまらず床を転がる。底抜けに明るくて腹の底に化け物を飼いながら、懐いた存在にはこんなにも無防備。このギャップが堪まらないのだ。

 小柄な後輩を目の前にするだけで、口の中はカラッカラになって舌も頭も普段通り回らない。こんなにも、人を好きになって緊張をするなんて小学生だった時もあっただろうか。好きすぎて声が出なくなるなんて。まるで鼠算式のような愛情に溺れながら、一日が始まる。

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