ギルド スノープリンセス 雪姫!奮闘する
XT
第1話 スノープリンセス参上
「ご覧ください!ライン伯爵邸では、犯人が伯爵嬢を人質に立て籠もり・・・あ!!また攻撃です。犯人が魔法による攻撃を繰り出しています」
「金だ!金と馬車を用意しろ!」
「近くに魔法が着弾しました。ここも危険です。王都放送局 エミリが現地から、命かけの中継しております」
閑静なはずの森の中の洋館。
月の無い夜の闇が、心地よい眠りにいざなうような日。
だが今夜は違う。
館の周りの森は、至る所で火が上がり、武装した憲兵たちが館を取り囲む。
「今情報が入りました。犯人は・・・極悪魔導士『ドグラ』。ドグラと、その一味、10人だという情報です。
ドグラたちは、まだ10歳のライン嬢と侍女一人を人質に、立て籠っています」
森で燃える炎の明かりが洋館を照らす。
2Fのテラスに、人質を脇に抱えた男が見える。
極悪魔導士ドグラと、ライン嬢だ。
その奥。薄暗い部屋の中には、10人の手下と、もう一人の人質の侍女がいた。
「早く金と馬車だ!憲兵を下がらせろ!早くしろ!!」
ドグラは要求を怒鳴り声で伝える。
ここ王都では、犯罪者との交渉はしない。武力で解決がルール。
だが憲兵たちは、手が出せない。人質と強力な魔法を持つドグラを前に、取り囲んでいるのが、精いっぱいだった。
「早くしないと、娘を殺す!」
ドグラは、ライン嬢を立たせると、黒く長い髪を引っ張り、首筋に剣を当てる。
ライン嬢の顔は、恐怖で歪み、大きな悲鳴声を上げた。
「ドグラがライン嬢に剣を!? 危険です!これは危険・・・」
中継をするアナウンサー、エミリの悲痛な声が響くと、手に持つマイクが奪われた。
「誰か娘を!娘を助けてくれ!!礼はいくらでも出す!だから娘を・・・」
泣きながら訴えたのは、父親、ライン伯爵だ。
「その依頼。受けたわ」
ライン伯爵の後ろから、白く長い髪の少女の声がした。少女は一言残すと、闇に消える。
「食い込むぞ。早くしないと、剣の先がこいつの首に・・」
ライン嬢の首に当てていた剣に、力を込めた刹那、森で燃えていた炎が消える。闇が周囲を覆った。
「な?なんだ?」
ドグラは暗闇に動揺する。
館の正面。暗闇の中に1点の炎が、うっすらと浮かび上がる。
炎は次第に火力を高めていく。
「なんだ?あれは?」
ドグラは目を凝らす。そして気が付く。
「馬鹿な!解散したはずだ!」
その炎を見ると、人質を引っ張りながら、2歩、3歩後ずさりする。
燃えているのは、旗。風になびくように動く旗は、炎で燃えていた。
旗は激しく燃え出す。炎の明かりが辺りを照らす。
白い髪の少女を中心とした5人が、明かりの中から現れる。
「ギルド!スノープリンセス!参上!!」
白い髪の少女が宣言した。
「懺悔なさい。少しは閻魔様も温かく迎えてくれるわ」
少女はドグラを指さし言う。
「まぁ、あなたなら地獄の底の底行は、確定ですがね」
少女の右。眼鏡をかけた、背の低い少年は、眼鏡をクィっと持ち上げた。
「・・まさか再始動していたとはな。だが俺には人質が・・」
居ない。今の今まで自分の手が掴んでいた少女は、居ない。
ドグラは慌てた様子で周囲を見渡す。
「この子の事かしら?」
部屋の奥に居た女性は、どや顔をしてライン嬢を抱きかかえていた。
「歯ごたえも手ごたえもないな。素振りと変わらねぇ」
だんだら羽織を着た男が、闇の中から現れる。
手に持つ剣には、手首が刺さっていた。
「貴様ら!仲間は?俺の仲間は?」
ドグラは、状況が飲み込めていなかった。
「仲間の心配より、あんたの手の心配でもしたら?」
ドグラは自分の手。ライン嬢をつかんでいた方の手を見る。
ない。手首から先が無い。
「お前の手な。これだ」
剣を振り下ろす。刺さっていた手が、ドグラの方に転がった。
「自分が斬られていた事にも、気が付かないなんて。あんんたはお馬鹿さんだね」
「うぁぁぁぁぁっぁ!!!」
ドグラは悲鳴を上げ、手首の切り口を抑える。
血が吹き出る。
「こりゃR-18だね。いい子は見ちゃダメ」
ライン嬢を抱えた女性は、片手でライン嬢の目を塞ぐ。
「おい。見ろ」
だんだら羽織の男が、頬を引きつらせながら言った。
「あれ?あれってマリアの?・・・撃たないわよね?」
表が明るくなっていた。
白い髪の少女の左側に居た女性。両腕を前に出し、その先に光球が形成されつつあった。
マリアと呼ばれる女性の攻撃「光子砲」だ。
「逃げろ!あいつは撃つ」
男は後ろに居た侍女を抱えると、テラスに向かって走り出す。
ライン嬢を抱えた赤毛の女性も続く。
テラスから飛び降りる瞬間、二人は放たれた光球とすれ違う。
大爆音。
館は光球により大爆発を起こし吹っ飛んだ。
だんだら男と、赤毛の女は見事な着地を決める。
「撃つかよ!」
男がマリアに怒鳴る。
「中にあたい達も居るのよ。気が付くのが遅かったら、あたし達もドカンよ!ドカン!」
女も怒る。
マリアと言う女性は、手を前で合わせ困り笑いの表情だ。
「あなた達が食らうわけないでしょ」
ケラケラ笑いながら、白い髪の少女は、ライン嬢に歩み寄った。
「もう大丈夫。よく頑張ったよ。偉い」
ライン嬢の頭をなでながら、少女は笑顔を見せた。
少女は振り返る。
「スノープリンセス!撤収!お疲れ様!」
白い髪の少女たちは、闇へと消えた。
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