第27話:ホットサンドメーカー→再会
「ドワーフの里でホットサンドメーカーを見て、これは絶対流行ると思って儲け話に乗っかっただけ」
そう冒険者には話し、彼らと分かれた。
「ネフィ。風の精霊をあの冒険者につけられるか?」
「えぇ。任せておきなさい」
ネフィは短く呪文を唱え、それからふわりと風が舞った。
俺たちは宿で精霊が戻って来るのを待つ。
夕食を終えた頃、ネフィの精霊は戻って来た。
あの冒険者を追って精霊が見聞きした内容を、ネフィが聞きだす。
「雇い主は複数人みたいね。ひとり名前がわかったわ。タブチって言うみたい」
「タブチ……田淵亮!?」
一緒にこの世界に召喚された田淵だ。
学校が始まって間もないってのもあって、あまり話したことはないけど間違いない。
「カケルと同じ世界の人ですかぁ?」
「あぁ。同じ学校に通っていたクラスメイトだ」
「カケル、良かったの」
良かったというのかな?
そりゃあ会えるならと思ってここまで来たけど。まさか本当に会えるなんて。
「とにかく明日、あの冒険者を探そう」
そして翌日。町の冒険者ギルド前で待ち構えていると、昨日の人らを発見した。
すぐに田淵に取り次いで欲しいと頼むが、さすがにすぐには信用して貰えず。
なので俺の名前とホットサンドメーカーを一つ持たせて、あとは田淵に確認してくれと頼んだ。
暫くギルド前で待ってると、さっきの冒険者が戻って来て一緒に来てくれという。
一応は警戒しながら彼らが案内する宿へと入ると、そこにはやっぱり見知った顔があった。
「鈴村!」
「田淵、園村、山田! それに月宮さん?」
男子生徒の名前はまだだいたい覚えたが、さすがに女子の名前は……。
尋ねるようにして名前を呼ぶと、彼女が頷いた。
「鈴村君、無事だったんだね。みんな心配してたんだよ」
「そっちこそ。なんか戦争に参加させられそうになってたとか?」
「そうなんだよ、っくそ」
田淵が悪態をつき、園村と山田は頷いた。
「ずっと俺たち城に閉じ込められててさ。たまに外に連れ出されたかと思えば、他国にお披露目だって」
「まるで見世物扱いだぜ」
「かと思いきや、隣の国の王様が、自分とこの勇者のほうが質がいいって言い始めてさ」
それで喧嘩になったのか。
王族同士が子供みたいなことやって、それで戦争なんて……。
巻き込まれる兵士や国民はたまったもんじゃないぞ。
「戦争の準備まで始めちゃったから、私たち逃げてきたの」
「他のクラスメイトたちは?」
「まとまって逃げると見つかるだろう? だからグループに分かれてな」
なるほど、いい考えだ。
「一応俺たち全員、召喚されたあの岩山を目指そうとは思っているんだ」
「元の世界に戻るヒントがあるかもしれないと思ってさ」
「そうか。なら案内するぜ」
「本当か鈴村!? 助かるよ。なんせ俺ら、飛行船で移動したし、船室には窓もなかったからどこをどう通ったのかも分からなくてさ」
雇った冒険者たちにお金を支払って、あの大森林へと向かう準備をした。
まずは──
「変装だな」
「髪を染めるなんてどう? あなたたち全員黒髪だし」
日本人は黒髪がデフォルトだもんな。
髪をカラフルに染め、月宮さんは化粧で別人に。男三人には同じく化粧を使って、無い傷を作ったりした。
買い出しをして町を出ようとする頃には、騎士の姿をちょいちょい見るようになった。
「田淵たちを探しているんだろうな」
「そうね。乗合馬車は止めた方がいいかも。確実に止められるでしょうし」
「だな」
「森を行くですぅ~」
隠れる場所がある森をみんなで進んだ。
モンスターが出てくるが、まぁ雑魚同然だ。
スキル無でモンスターを倒していると、田淵たちが驚く。
「す、鈴村!? スキルは無かったんじゃないのか?」
「いや、実はさ──」
無は「なし」ではなく「む」だったと説明。
田淵たちは驚きはしたが、同時に笑った。
「あのいけすかない王女が、聞いて悔しがるようなスキルを手に入れてたのか」
「あぁ、そのスキルがあればざまぁが出来るのになぁ」
「ざまぁなんて面倒くさいだけじゃないか。いいよ、別に」
そう思うものの、状況次第ではそうもいかなくなるんだろうなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます