5戦闘

 私達は魔王ルシファーのドラゴンとの戦う方法に一筋の光明を見つけた。その予測が当たっているか外れているかは分からなかったけれど、占い師のダニエラおばあさんは、私にはできると言ったのだ。だから、私達の見つけた応えに従って行動を起こすことに決めた。


できるだけドラゴンに近いところで、私のムーンストーンのパワーと黄金のネックレスのパワーを干渉させることにした。


「おい!占い師の小娘・・出ろ!!」


 翌朝、フィブス公爵の兵達が乱暴に声をかけた。私は半ば引きずり出されるようにして独房から出され、拘束されたまま城の廊下を歩かされた。シャノンはいつもどおり、余裕の表情で私の肩に乗っていた。


 瓦礫の山となった城の広場には、いつの間に用意されたのか、すでに4つもの斬首台がセットされていた。しかも、多くの人々がこれから起こる残酷なシーンに胸を痛めながら、恐怖に顔をひきつらせて集まっていた。


 私は一番に斬首台に縛られた。ギシギシ音を立てながら重そうで大きい歯が私の首の上にセットされている。こんなものが落ちれば、確実に終わりだなと思った。身体が縄で芋虫のようにグルグル巻にされ、段々と身体にくいこんでくるようで痛みがましてきた。私の隣にはアルベルト皇太子殿下、クリスティーナ女王陛下、アーサー国王陛下が順に斬首台に拘束されていった。斬首台のセッティングが終わると、斬首を執行する者たちの他は離れていった。


 フィブス公爵は晴れやかな顔をしながら、椅子から立ち上がった。


「みなのもの。よく聞くがよい。たった今からセントクリストファー王国は、このフィブスが国王となる」


民衆にざわめきがおこった。


「静粛に!」


大きな声でサバスチェンコ侯爵が叫んだ。再び静かになったところで、フィブス公爵は言った。


「今から、前国王アーサーと前女王クリスティーナ、前皇太子アルベルト、占い師プリンセスかぐやの斬首を行う!


私に逆らうとどうなるか、これから諸君が、しかとその目に焼きつけておくがよい」


いかにも冷酷で、底意地の悪そうな顔だった。


再び、民衆にどよめきが起こった・・が、しかし、もはや見守るしかない状況で、斬首台から目をそむけているものがほとんどだった。


 私は焦っていた・・というのも芋虫状に縛られた縄がきつすぎて、パワーを集中させることが思った以上に難しかったのだ。


「シャノン!どうしよう・・集中ができない」


「リサ!」


 シャノンが私の名前を言ったその時、他の力が働いたとしか思えないのだが、スルスルと縄が解け、首を固定していた木の枠も外れて、私の拘束はすんなりと解き放たれたのだ。


 私は慎重に身体を起こし、手にネックレスを載せて、パワーを集中させた。あっけにとられている、フィブス公爵やサバスチェンコ侯爵の間の抜けた顔をちらりと見た後、私はネックレスからも強大な光が放たれるのを感じた。


「何をしておるのだ!早く捕まえんか!」


はっと気がついたフィブスがやっとのことで、そう叫んだが、そこにいるすべてのものは、光に目がくらむと同時に、身体が全く動かなくなってしまったようだった。私は黄金の光に包まれたままドラゴンの目の前まで進んだ。


 城壁で、悠々と赤く燃えるような目で睨んでいたドラゴンは、空に舞い上がり、火を噴きながら、私を威嚇するように向かってきた。


 ものすごい風圧で、いろいろなものが吹き飛ばされていた。ドラゴンは最初は余裕の形相で、私に火を噴きかけてきた。私は恐怖で顔をそむけそうになったのだが、シャノンが強い声で言った。


「顔をそむけて集中力が途切れたら負ける!ドラゴンを・・魔王ルシファーの魔力を奪うことに集中して!」


「分かった!」


気持ちを奮い立たせると、光のパワーはどんどん強大になっているようだった。


私は渾身の力を振り絞って、ドラゴンに対峙していた。


そのうち、ドラゴンの吹く火も魔力もその光のパワーに跳ね返されるようになった。そして、ドラゴンの魔力が徐々に奪われ、効かなくなっていることをドラゴン自身が悟ったようだった。


「ギャー!」


ドラゴンは叫ぶと、どんどん小さくなり始め、最終的には鳩くらいの大きさになってしまった。


「アルベルト皇太子殿下、もはや、魔王ルシファーによって支配されていたこの城は開放されました。魔力も戻っているはずです。早く陛下たちを助けてください」


私は叫んだ。


 はっと、我に帰ったアルベルト皇太子殿下は、すぐさま魔法を使い、斬首台から起き上がり、斬首台を消滅させ、まだ、動きの取り戻せていなかったアーサー国王陛下とクリスティーナ女王陛下を開放した。

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