16湖で

「今日は、とってもいいお天気だね。久しぶりに湖に行かない?」


シャノンからのお誘いを断る理由など微塵もない。


「行きたい!チョット待って。おばあちゃんに聞いてくるね」


私は大急ぎでおばあちゃんの部屋まで走って行った。


「ふ〜っ。はぁ〜」


部屋の前で3回深呼吸をして息を整えドアをノックした。


「おばあちゃん、リサです」


「何だい?お入り」


私はドアをできるだけそ〜っと音を立てないように開けたつもりだったが、ギィ〜と油不足なのか何だか、名探偵コ○○のアニメの効果音みたいな音がした。どうも、おばあちゃんはこういうなんというか、近寄りがたい、一歩身を引きそうになる演出というのか、占い部屋もそうなんだけど、そういう不気味というか怪しげというか、そういう雰囲気が似合いすぎて、かえって不自然さを感じないオーラみたいなのがある。う〜ん、私の語彙力ではここまでだぁ〜。とにかく、私はかなりの緊張感を持って、開けたドアの隙間に体を入れて立った。


が、意外にもおばあちゃんの部屋は、占い部屋とは対象的に、日差しの入る明るい部屋だった。椅子に座っていたおばあちゃんは私の方を見ながら言った。 


「どうしたんだい?」

 

「あ、あの・・今日の家事が終わったら、湖に行きたいなと・・」


「分かった。行っておいで」


「は、はい。ありがとうございます」


「気をつけるんだよ。余計なことには手を出すんじゃないよ」


おばあちゃんはそう言うと、私の方をじろりと見た。


「は、はい」


そう言うと、「余計なことには手を出すんじゃないよ」というおばあちゃんの言葉が少し頭にひっかかりはしたが、再びギィ〜という音をさせながらドアを閉めたのだった。


湖に向かって歩いている途中にもたくさんの妖精たちに出会ったが、妖精たちに目を奪われて我を忘れる事がないように、景色の一つとして認識していくということにも慣れてきた。この世界の人々の大部分は妖精を認識していないかもしれないが、知らず知らずのうちに妖精たちとうまく共存しているのだなと感じる。


「じゃぁ、このへんにする?」


シャノンは私の耳元でそういった。今日は人の姿も見えず、いつも以上に静かな感じだった。


「そうだね」


私は木陰にシートを敷き、気持ちよく伸びをしてからシートに座った。すかさず私の膝上にはシャノンが座った。しばらく二人で湖を眺めて和んだあと、シャノンがいった。


「早速だけど、始める?」

「何を?」


「うふふ・・部屋ではできない魔法」


「え?」


「今日は湖の上を歩いてみよう」


「うわぁ〜!!楽しそう」


「でしょう?」


「うん!」


「じゃ、始めるよ」


そう言って、シャノンはニッコリした。


「まず、私を湖の上に移動させて」


「了解!」


「そのまま、パワーを持続していてね」


私はシャノンを黄金の光に包み湖に移動させた。シャノンは光の中でスッと起き上がり、歩き始めた。シャノンは優雅に気持ちよさそうに湖の上を歩いていた。


「じゃ、戻して」


「分かった」


シャノンをそのまま、シートまで運んだ。


「あ〜。リサの光の中はホントに気持ちいいわ〜湖の上を歩くってなかなかいい感じだったわ」


シャノンは心からうっとりしたように言った。


「で、どうするの?」


「今度はリサが自分の光の中に入ったまま、自分でコントロールするってわけ」


「言ってることは分かるけど、できるかな」


「できるよ」


シャノンは簡単に言っていたが、何だか簡単そうで難しい・・イメージがなかなか掴めなかった。




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