7こんな感じで・・

何となく、口から出まかせに言ってみた『プリンセスかぐや』だったが、案外、いい名前だな~と我ながら感心する。そんな私に、興味深そうな目を向けてシャノンが言った。


「かぐやって、ちょっと変わった名前だけど、なんか意味があるの?」


「うん、私のいた世界の昔話に出てくるお姫様の名前なんだ」


「へぇ~それは、それは・・。リサはそのお話好きだったの?」


「正直言うと、なんというか、それほど好きってわけでもなかったんだけれど、アルベルトと一緒にこの異世界にやってきて、しみじみと意識するようになったお話なんだ。というのも、かぐやって言うのは、月の世界・・つまりは異世界のお姫様なんだよね。何だか、他人事とは思えなくて・・そのことを考えていたら、つい口に出ちゃった・・という感じかな・・」


「そうだったんだね。昔話ですでにそんなお話があったんだね。ちょっとロマンチックかも・・」


そう言いながら、シャノンはもう一度口に出してその名前を言った。


「プリンセスかぐや・・リサにピッタリだね」

「うん」

思わず私は返事をしていた。


男も、とても言いにくそうに『かぐや』と言っていたが、それでも、占いが嬉しかったようで、嬉々とした表情でスキップするように軽やかな足取りで、カーテンの外に出て行った。彼は占いが当たると信じて、今から野菜を持って、東の市場に行くのだろうか。もしかしたら、私があてにならないと思って逆の西の市場に行くだろうか・・。どちらに行っても売れるはず・・だけど、信じて結果を得るか、信じなくて結果を得るか・・結局彼が占いが当たるとするか当たらないとするかを決めるのだなと思うと、面白いものだな・・・と思った。そう思うと、結局は彼が決めたことだ・・当たらなかったとしても、1000ルピーの返金を求められないような気もした。そう願おう!初仕事、初稼ぎなのだ!!そして、願わくば、初めての占いが当たり、あの男が野菜を完売して、家族に売上金と笑顔をいっぱい持って帰ってほしいなぁ・・と心から願ったのだった。良いことを願う気持ちというのは、悪くない!一つ仕事が終わって、私はシャノンに言った。


「ねえ、シャノン・・初仕事はあんなもんでよかったかなぁ」


「いいんじゃないの?上出来だと思うよ」


「よかった~。シャノンにそう言ってもらえると、ほっとするわ。ところで、あの男の肩にいた緑の可愛いのは何なの?」

「あれは妖精だよ。緑の妖精。あの男が愛情をこめて野菜を頑張って作ったんだろうね。自然物の大地の妖精が、いろんな人にあの人の作った大地の恵みを届けようとしているって感じだった。だから、どこに行っても、あの妖精の力に引き寄せられるようにして、お客が集まるはず。だから、緑の妖精があの男の肩に座っている限りは野菜は売れるってわけ・・」


「よかった、よかった」


「でもね、安心はできない。いろいろな妖精がいるから、もしかしたら、もっと強い妖精の力で、緑の妖精がいなくなって、野菜が売れないってこともあるからね」


「そうか~。厳しいものだね」


「まあ、あの男も、占いでお金儲けだけをしようなんて思っていないと思うよ。精いっぱい作った野菜をみんなに買ってほしい、食べてほしい、笑顔になってほしいって思ったんじゃないの?そして、自分の家族も笑顔になってほしい。そのために、ちょっとでも売れやすいところがあるなら・・って藁をもつかむ思いなんじゃないの?占いなんて不確かなものだって、あの男が一番よく知ってると思うよ・・」


シャノンの言いたいことも少しは分かるような気がした。占いって人となりなのかも・・。


朝から占いに来る人ってまさかそんなにいるわけないよね・・ちょっと休憩しよう・・緊張していたから喉も乾いたし・・そう思って椅子から立ち上がって、玄関の方に行こうとした時だった。

カウベルの音がして、一人の若い女性と鉢合わせした。


「あの・・」

「はい」

「ここは、占い屋さん?」

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