或る貴族の少年
僕は、子爵の家の次男坊に産まれた。
父様も母様も、僕のことを外に出そうとはしなかった。勉強をたくさんさせられて、本を読んで過ごした。1度、耐えきれずに
「ぱぱもままも!なんで僕のことを閉じ込めるの!?僕は、僕だって他の子みたいに、遊びたいのに……」
こう言って家から飛び出したことがあった。当時5歳の僕は、勿論生きてく術もなにも持っていなかった。それなのに身一つで飛び出した僕は本当に馬鹿だったと思う。家から少し離れた森の中で僕は泣いていた。それを見つけた少女は
「なんで泣いてるの?君、貴族街の子でしょ?なんでここにいるの?」
そう聞いてきた。
「僕は、家出してきたんだ。でも、どうすればいいのか分からなくなって」
僕はそう答えた。すると少女は
「そうなんだ…貴族街の子も大変なんだなぁ。私はステラ。ファミリーネームは分からないんだ君は?」
「僕は、リヒト・ラッセル。ラッセル家の次男坊…だよ。よろしく」
そう名乗ると、少女いや、ステラは、
「リヒトくんは、なんで家出したの?」
と聞いた。僕はそれに対しては口を噤んだ。
「言いたくないんだね。でも夜の森は危ないよ。だから私の家においで?」
そう言うとステラは僕の手を引いてくれた。そして着いたのは小さなウッドハウスだった。
「ここが私の家。私とお兄ちゃんと弟の3人で住んでるんだ。あっただいま!お兄ちゃん!」
ステラのお兄さんは僕を見るなり怪訝な顔をした。
「おう、ステラおかえり…君は貴族街の……」
「あっえっと。リヒト・ラッセルです。」
「あ…あぁ、君はまだ知らないのか。ならいいか。俺はエリオット。ステラの兄だ。子爵様の子供がこんなとこに何の用だ?」
エリオットさんは、僕に対して軽く嫌味を言い、追い返そうとした。しかし、ステラが連れてきたということもあり、仕方なくといった様子で招き入れた。視線は、ステラに手を出すなと言っているのがわかる。相当なシスコンだなこの人と思った。
「お兄ちゃん、ダメだよ。リヒトは夜の森にいたら確実に連れ去られる。魔力量が人間離れしすぎてるもん」
「嗚呼、攫い屋からしたらとてつもない上物の獲物だろうな。」
2人は何かの話をしていた。攫い屋?獲物?何が何だかもう分からない。
「さて、今日はもうベッドに行こうか。ステラ、リヒト。寝物語聞かせてやる」
そういいエリオットさんが僕をベッドに寝かせた。隣のベッドにはステラが入っていた。
「よし、リヒト。お前は5年前に起きた『女王陛下及び王女2名第2王子失踪事件』のことを知ってるか」
「えっうん」
5年前。つまり僕が産れた歳だ。しかし何かと理由をつけられて勉強させれていた。その王女や王子の無事を願って同じ名前が増えたということも。
「だからライリー、エリア、ステラ、ルイスという名前が増えたんだよな。知ってるよ」
「へぇ!私の名前もあるんだ!ルイスもあるんだなぁ……」
意外にもステラが食いついてきた。
「嗚呼。そうみたいだな。それじゃ、事件の真相を知っているか?」
事件の真相。
「いや、知らない。」
それは王室関係者しか知らないということは一言も言わなかった。
「……事件の真相は、悲劇は陛下のお母様…つまり王太妃殿下による女王陛下への嫉妬だったんだ。何かに嫉妬した王太妃殿下が第2王女の首を絞めたらしいんだ。それで女王陛下は危険だと思い、王女達や第2王子を連れて逃げた。詳しいことは知らないけれどな。俺そんとき4歳だったし。」
そこまで言ったエリオットさんは、もう寝ると言って寝付いてしまった。僕はこの時既に将来王室に仕えることは決まっていたから、きちんと勉強しないとなと思った。
次の日、家へ送り届けられた僕は、怒られながらも両親やメイド、執事や爺や達に無事を喜ばれた。
だからといって何も無いけれど。8歳になったら、午後4時まで平民街に遊びに行ってもいいという約束をしてもらった。
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