遠い記憶

深山雪華

第1話

あの人はとても変わった人だった。

他の人から理解して貰えないのに自分を貫き、その結果死んでしまった。


あの人を思い出そうとすると必ず、「いいかい?『正義 』と『正しさ 』は別物なんだ」と言っていたのを思い出す。


「例えば、特撮ヒーローは悪い事をする敵をやっつけるだろう?それが正義だ。でも僕は正しくはないと思うね。だって見方を変えたら弱いもの虐めになるかもしれないし、本当に敵を正そうとするなら事情を聞いて、正しいやり方を教えて、時には援助や支援をしてあげる。…それが正しいという事だと僕は信じてるよ」


あの人の言っていたことは、その当時の私は幼過ぎてあまり理解出来なかった。

そのせいで手を差し伸べて彼に寄り添ってあげることが出来なかった。

あの時私が手を差し伸べて、それこそ『 正しい』事をしてあげれば彼は死ななかったのだろうか…

あの人はもう居ない。何をしてもどう足掻いてもかえってはこない。

ただただ後悔ばかりを繰り返している。


私はどうすれば良かったのだろう…



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

遠い記憶 深山雪華 @miyamayuzuha

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る