第9話 今以上に仲良くなれそうだなと
そして今日はアイネスにとって始めての休日なのだが、にも関わらず『せっかく休日を与えたにも関わらず、休日まで僕の相手をしろとか何の冗談だよって思われないだろうか?』とか『本当は嫌だけど次期国王の僕と平民のアイネスという立場上断れないという可能性もあるのでは?』などとうじうじ考えていると、デートに誘う事もできない自分にまた自己嫌悪してしまう。
アイネスに倣って始めた早朝のランニングの間中はずっとその事で思考は埋め尽くされており、気が付いたらシャワー室で汗を流している始末である。
まさに我ここにあらず、または上の空という言葉は今の僕に当てはまる言葉であろう。
そんなこんなでシャワーで汗を流して脱衣所へ出ると、そこには俺の下着を頭に被り、汗を吸っているシャツに顔を埋めているアイネスの姿がそこにあった。
一瞬脳が目の前の現状を処理できず、止まってしまうのだが、辺りをゆっくりと見渡せば、どうやら俺は間違えて女子専用のシャワー室を使ってしまっていたようである。
いくら上の空であったとしても、流石にこのミスは取り返しがつかないのではなかろうか?
これにはさすがのアイネスも僕の事を軽蔑してしまったに違いない……。
え? いや……ちょっと待って。それ以上の光景がさっき見えた気がしたんだけど……?
「あ、アイネス……」
「は、はい……」
「ここで何をしてたの?」
そして僕は思う。
これは使えるのでは? と。
◆
終わった。
そう確信して言えるくらいの失態を私は、気が付いたらしてしまっていた。
どうしてそんな事をしてしまったのか。
なんだかんだ言ってもこちらは女性用であり、男性であるリロード殿下がこちら側のシャワー室を使っていないという安心感からそんな事をしてしまったのだろうか?
しかしながら脱いだ衣服がこちらにある以上、リロード殿下が使用しているシャワー室はこちら側で間違いないという事は少し考えれば分かる事で、そんな事など今の私の姿の言い訳にもならない。
そして私は頭にリロード殿下の下着を被った状態で恐る恐る視線を上げてリロード殿下の表情を確認する。
するとそこには私が想像していたような幻滅したような表情などではなく『いいネタを手に入れたな』という、今まで見た事も無い表情をしているリロード殿下がそこにいるではないか。
「アイネスさん……」
「ひゃ、ひゃい……っ!!」
「この事をばらされたくなければ僕のお願いは聞いてくれますよね? あ、そんなに怖がらなくてもせっかく脅しのネタ……ではなくて、今以上に仲良くなれそうだなと思ったので解雇とかはするつもりはないので」
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