第8話 情けないやら何やら
その瞬間、私は気が付くと記憶が無くなっていた。
◆リロードside
アイネスに休日を与えた本当の理由は、それを口実にデートへ誘ってみようと思ったからである。
僕から見たアイネスは、常に努力家で、平民にしては高すぎる魔力や騎士顔負けの剣技、そしてそれらを組み合わせた魔剣師としての才能もあり、アイネスくらいの年齢であれば自分の才能に胡坐をかき、鍛錬をサボりそうなものであるのに、そんな事も無くアイネスは日々の鍛錬を怠らず、そして僕が見る限り趣味という趣味も無いように思え(むしろ趣味は鍛錬であると言われた方がすっきりする)、その姿は正に真面目が服を着ているかのような人物である。
だからこそ、僕はアイネスにそんな生き方をさせてしまっている原因の一つに『僕の護衛』があると思うと、何かしてやりたいという感情に潰れそうになっていた。
自分は国王陛下である父上の息子であり、弟が産まれていないので今のところ僕が嫡男という事になる。
ちなみに僕の下には妹が二人いるので、万が一僕に何かあった場合は妹のどちらかが皇女として王国のトップになる事となるのだが、そうなった場合は姉妹間で骨肉の争いが起こってしまう可能性もあるので、そんな事が起こらないように日々国王に相応しい人物になる為の努力は怠らない。
その為一応今のところ表面上は次期国王陛下として周囲は対応してくれている訳なのだが、そんな自分が好きな異性一人楽にさせてやる事も出来ず、むしろ僕の護衛という役職のせいで余計に彼女の重荷になってしまっている今の状況に対して『何が次期国王だ』と無力感にさいなまれてしまう。
確かに、形式上はまだ嫡男であり国王という座を引き継いだわけではないので今の自分には他の貴族の子供たち同様に何の権力も持っていないのだが、それは所詮形式上の話であり、実際には次期国王という肩書は思っている以上に権力は備わっているというのは日々実感している。
その権力に振り回されないでいるのは先王であるおじい様と、現国王であるお父様の背中が大きすぎるというのが大きい。
話は戻すとして、次期国王という肩書は、当たり前なのだが権力が確かに存在するのである。
にも拘わらず僕は好きな女性に対して週に一度の休日をあげる事が精いっぱいだと思うと情けないやら何やら……。
そんな時は決まって『おじい様やお父様ならもっといい方法でこの現状を解決してしまうのだろうな』と考えては落ち込んでしまう訳で……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます